あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

(たぶん)一部の人しか知らない日本映画を12本観てみる!「 Q 」(2007)の巻

Q

S原:今回は、シチュエーションスリラーですよ。

Y木:へえ。

(あらすじ)

謎の部屋にいる、死体と7人の男女たち。彼らは全員椅子に縛られている。ここはどこだ?なぜこんな場所にいるのだ?そこに聞こえてくる声。

「私は、クエスチョンマスターです。これから皆さんに質問をします。ルールを守れなかった場合、死という裁きが下されます」

そしてデスゲームが開始された。最後まで生き残れるのは誰だ…⁉

 

S原:「やおい」って言葉あるやん。

Y木:あーBLとか同人誌とか、そういうサブカル用語やろ。

S原:最初は「山なし・オチなし・意味なし」という意味やったんやけどな。この映画はまさに本来の意味の「やおい」です。

Y木:訳が分からんと?

S原:うん。いきなりきつい言い方をして申し訳ないけど、出来としては「最低ランク」と言っていいと思う。ぼくらは学生時代に自主映画を撮っていて、さんざん「映画っぽい何かの映像」を見せられたやろ?

Y木:そうやな(苦笑)

S原:だから映画作りがいかに難しいか、まともな映画(監督の意図を観客が理解できる映画)を作るのがどれほど困難かは分かってるつもりなんやけどな。この映画はレンタル店で並んでるし一応プロ作品として評価すると、残念ながら商品として売り出すレベルではないです。

Y木:えらいキツイなあ。

S原:製作に携わった人たち、気を悪くしたらすいません……でも、ちょっと褒めようがないのよな。「下手な映画」はOKやねん。ぼくも好き好んでワゴンコーナーにありそうな映画を選んで観てるから、覚悟はしてるねん。でも、作り手はやりたいことがあるやん。例えば、このブログで紹介した「ゾンビ自衛隊」(2005)も「ペットおやじ」(2005)も「ヤンキーポリス」(2012)も「ゴーストリベンジャーJK」(2010)も、決して褒められる出来ではないけど、「あーお金がなかったんやろうけど、こういうのがしたかったんやろうなー」と理解できるし、そういう部分を楽しんだりするやん。(※ 下にリンクを貼っています) でも、この監督(江面貴亮)は、そういうやりたいことが明確になかったんとちゃうかな?

Y木:そんなことないやろ。閉じ込められた男女のシチュエーションスリラーを撮りたかったやろって。

S原:それはそうなんやけど、こういうのは、観客は「変化球」を楽しみたいわけやろ? この映画では直球というかそのまんまやねん。

Y木:そのままか。

S原:観客は「これってこういう裏があるんちゃうか?」「犯人は誰やろ?」「1人死んでるけど、じつは殺されてないのでは?」とか、推測するやん。

Y木:そりゃ、それがこういうスリラーの醍醐味やからな。

S原:でも、そういう観客の気持ちや推理は完全に無視しています。淡々とこの状況の説明をするだけ。例えば、A~Fまで名前を割り当てられているんやけどな。Qマスターが、ひとりずつ質問します(声のみ)。それはええねんけど、Aから順番に同じ質問で全員にするのを丁寧に撮ってるねんで。しかも、名前、性別、年齢、生年月日、職業を全員が答える。10分くらいあったかな。ここは上手く省略せなあかんやろ。「男、女」まで丁寧に答えるねんで。そんな質問、要るか?(苦笑) おいおい、隣の居酒屋で始まった合コンの自己紹介コーナーでも、男女は省略するって!

Y木:それがあとで伏線になるんやろ?

S原:なりません。もちろん、ボクサーが八百長試合をしたとか、銀行員がお金を盗んだとか、あとで「嘘」だとバレて殺される小ネタは入っているけど、そういうのは会話の中ややりとりのなかで、自然に気付かせていくもんやん? 

Y木:まあな。

S原:あとは少しずつお互いの椅子が近くなっていく(中心に近づく)という装置(?)があるのよ。

Y木:ふーん、真ん中に行ったら殺されるとか?

S原:いや、椅子が近づいただけやった。

Y木:なんやねん、それは。

S原:ほんまやねんって! あと致命的なのは、声が聞き取りにくい。Qマスターの声にエフェクト(エコー)がかかっていて、まず聞き取りにくい。あとは、それぞれの俳優の声量が違うねんけど、調整していないから、小さな声と大きな声にの人がいる。音量のバランスをとっていないから、しょっちゅうボリュームを上下せなあかんという(笑)

Y木:下手なんやろ、要するに。

S原:下手といえばそうなんやけど、たぶんこの監督(江面貴亮)は映画ファンとちゃうんちゃうかなあ。

Y木:ん?

S原:映画好きなら、こういう映画を作るときに同じタイプの映画をたくさん観て参考にするはずやねん。それで「じゃあ自分が作るときはさらに裏をかこう」とか考えるわけやん。他のジャンルの映画をみて、こういうシチュエーションスリラーに生かす要素もたくさん気付くやろうしな。なによりも、最初に言ったけど、この映画を観ながら「観客はどういう点を疑問をもつか?」「どこを不自然に感じるか?」「どういう演出をすれば自然に見えて退屈しないか?」という想像力と工夫がなさすぎる。

Y木:なるほどな。で、ラストは?

S原:あーラスト? なにも解決も説明もしないまま終わります。

Y木:えー……

S原:だから、やっぱり「観客が何を観たいのか?」を外してしまってるねんって。「それが狙いだ」というかもしれないけど、そういう逆張りというか凝った作品を作る前に、まずは「普通に面白い映画」を作ってからにしてほしい。面白い映画を作ること自体が難しいんやから、こういうスリラー映画ではまずはそっちを目指してほしかった。

Y木:今回はちょっと残念というか、聞いててちょっと悲しいわ。

S原:さあ、みなさん。これはレンタルでもちょっと……です。唯一観てほしいのは、映画監督や俳優を目指している人達ですね。演出次第で、本当に(観客の心が)あさっての方向へ行ってしまうのがよく理解できるはずです。というわけで、この映画は観つけてもスルー、プリーズ!

 

 

  ※ 記事の中で触れた映画はこちら! どれもやりたいことは伝わってきます。

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