あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

1960年代の邦画を観てみる!「女経」(1960)の巻

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S原:今回はオムニバス映画!

Y木:ちょっと変わった映画っぽいな。

(あらすじ)

増村保造市川崑吉村公三郎という、大映が誇る三大監督によるオムニバス映画。主演の三大女優(若尾文子山本富士子京マチ子)による競演も話題になった。

 

S原:これは、3つ話があるねん。ひとつずつ話すわ。最初は「耳を噛みたがる女」(増村保造監督)。これは、銀座のキャバレーでホステスをしている若尾文子が主役です。

Y木:ホステスか。男に騙される悲しさとか描いているの?

S原:いや逆です。若尾文子は、店の客から口八丁手八丁で金を巻き上げてます。それを株に投資をしている。本人曰く「老後のため」らしい。で、社長の息子のボンボン(川口浩)がおるんやけどな。そいつが、若尾文子をモノにできるか友達と賭けをするのよ。

Y木:それで?

S原:川口浩はスポーツカーでデートに誘う。スポーツカーでのドライブして良い感じになるけど、若尾文子を心の底では信じていない。自分のことを遊びだと思っているだろう、と割り切っているつもりなんやけど、若尾文子は本気でボンボンのことが好きだと言うのよ。ホテルで夜を過ごしたあと、川口浩は一人で先に帰る。じつはその日は、自分の結婚式やねん。

Y木:おいおい、結婚式前夜に他の女と一夜を共にしたらあかんやろ。まあ男も遊びってことか。

S原:そのつもりやったんやけど、段々と若尾のことが忘れられなくなる。結婚式当日なのに「このまま親の言う通りに結婚をしてよいのか」「本当に愛してくれるのは、親が進めた結婚相手ではなくて若尾文子ではないのか」と悩んで、ついに若尾のところに会いに行ってしまい……という話。

Y木:おもしろそうやん。

S原:面白いよ。当時のバー(キャバレー)とかダンスホール、パチンコとか今観ると新鮮やしな。

Y木:若尾文子は、本気で川口浩のことを好きなんか?

S原:イエスのようなノーのような、このへんの曖昧さが上手い。心の底では川口を結婚しても良いと思ってる(らしい)。だけど、今日結婚する相手(花嫁)はどうなる?ええ面の皮やん?

Y木:たしかに。

S原:で、わざと(?)あっさりと川口浩を振ってしまう。川口は憮然としてでていく。そのあと、「さあ、お金を稼がなくちゃ!」とさっそうと銀座にいく若尾文子の後ろ姿が映っておしまい。

Y木:ふーん、なかなか味のある話やな。

S原:第2話は、「物を高く売りつける女」(市川崑監督)。最初に新聞記事が出て、流行作家の船越英二が失踪していることがわかる。そのあと、湘南の海岸で船越は目が覚める。その人気のない海岸で、不思議な白い肌の女と出会う。これが山本富士子。もう妖艶と言うか、冷たい美しさと言うか。一瞬幽霊の役かと思ったくらい(笑)翌日に、船越がその海岸に行くとその女が紙の束を燃やしている。女は死んだ主人の手紙を焼いていると言う。さらに翌日、一軒家のまえで山本と再会した船越は、家に誘われてそのままお風呂にはいります。そうすると、スーッと女が風呂場に現われて……

Y木:おおー。

S原:出だしからこのへんまでの雰囲気はゾクゾクするで。いろいろあって、船越英二山本富士子の一軒家を、彼女ごと買い取ることにする。ここまでが前半やけど、後半になると全く雰囲気が変わるねん。

Y木:どんでん返しってこと?

S原:うん。映画の雰囲気自体がガラリと変わるねん。実は、山本富士子は不動産を売りつけるために、妖しい演技をしていた、という展開になるのよ。船越英二をダマしたんやな。ところが、船越が山本を見つけ出して会いにやってくる。そして…

Y木:結局、どうなるの?

S原:これは観てほしいから内緒です。それにしても、この映画での山本富士子船越英二は絶品やと思うなあ。ひさしぶりに俳優に酔ったわ。2人とも、さぞかし演じ甲斐があったんちゃうかな。

Y木:俳優の演技に酔うか。それは見応えあるやろうな。

S原:最後は、「恋を忘れていた女」(吉村公三郎監督)。京都の修学旅行専門の宿屋の主人(京マチ子)がいます。彼女は、昔はちょっとした売れっこの妓でした。結婚した後、旦那が先に亡くなり、木屋町に酒場、先斗町お茶屋を経営する働き者です。ある日、死んだ主人の妹が、その恋人と結婚するため金を借りにきます。ところが、京マチ子は、自分の家の財産を狙ってきたものと思い、いい返事をしないのよ。

Y木:ほう。

S原:で、この宿屋に名古屋の小学校の団体が宿泊してくる。ところが、生徒の一人がオートバイにはねられて重傷になってしまう。そこへ、昔の恋人(芸妓時代の恋人)から電話がくるが、お三津は居留守を使う。そんなエピソードが続いて、京マチ子は疲れてしまう。で、結局昔の恋人に慰めてほしい気持ちもあり、会いに行ってしまう。ところが、その元恋人は、金を貸してくれというのよ。京マチ子は、自分にまだ気があると思って会いに行ったんやけど、もうガッカリしてしまう。しかもすぐに刑事がやってきて、元恋人を捕まえる。詐欺で指名手配されてのよ。

Y木:ふんだりけったりやな。

S原:そんな感じで、気持ちがスカッとしない出来事が続くんやけど、そこへ修学旅行の生徒が重態になったという電話がある。病床に駆けつけた京マチ子は、子供の苦しそうな姿に思わず輸血を申し出る…こういう話です。

Y木:うーん、前の2つに比べるとちょっと地味と言うか。

S原:そうやな。つんけんしてた女性の心模様を描いた小編なんやけど、これも京マチ子は良いよ。確かに話はあんまり面白くないかも。

Y木:最後はどうなるの?

S原:京マチ子が心を入れ替えておしまい。刑務所に言った元恋人を待つというところで、話は終わります。

Y木:なんか心変わりが唐突やな。

S原:うん。結構あっさりと心が変わってしまう。でも、こういう内容やからな。これはこれでええと思うで。

Y木:今回は面白かったんやな。

S原:うん。普通オムニバス映画って、ひとつ面白くてあとは普通の出来というのが多いねんけど、今回は3つともイケます。ぼくは、とくに「物を高く売りつける女」が一番好きですね。あと、エンドクレジットがアニメで、ここもユニークです。というわけで、今回の映画は、おススメ!中古店でみかけたら、ゲットしてくださいませ~!