あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

1960年代の邦画を観てみる!「セックス・チェック 第二の性」(1968)の巻

セックス・チェック 第二の性 [DVD]

S原:今回はこれ!レンタル店で女性は借りにくいタイトルの映画です。

Y木:変なタイトルやな。ポルノか?

(あらすじ)

南雲ひろ子は日本記録まであと一歩というところまで迫るスプリンター。しかし、セックス・チェックの結果、男女両方の生殖器を持つ「半陰陽」と診断され、オリンピック出場資格を剥奪される。ひろ子を鍛えてきたコーチの宮路は諦め切れず、雲隠れしたひろ子を見つけ出し、彼女の女性的部分を発達させようとする・・・

 

Y木:うわ、すごいストーリーやな。

S原:ぶっとんでるやろ。これは、ポルノじゃないねん。しいていうなら、「性」をテーマにしたブラックコメディかな。

Y木:半陰陽(はんいんよう)って何?

S原:両性具有なんやけど、医学的にはいろいろとあるみたい。これが原因で「女性選手」としてはオリンピックに出場できなくなるわけ。安田道代(大楠道代)が陸上選手を演じています。せっかく手塩にかけて育てたコーチはあきらめきれない。この役が緒形拳ね。

Y木:あー緒形拳。変な映画にでてるんやなあ。

S原:嬉々として演じたで。安田道代もすごいけど、この緒形拳が出色の出来でな。思い込みが激しいというか、もう頭がプッツンしているというか。

Y木:どんな話なん?

S原:はじめから話すと、緒形拳自身も陸上選手やったんやけど、戦争でオリンピックに出場できなかったというところから、始まります。あるとき陸上部のコーチを頼まれて、偶然に安田道代と出会う。負けん気の強いところも気に入ると同時に、陸上の才能を見出すねん。早速陸上部で鍛えることになる。それはええねんけど、コーチの仕方がすごい。

Y木:スパルタ?

S原:いや。女子選手が早くなるためには、自身内部の「男性」の部分を引き出さないといけない。なので「勝つためには男になれ!」と命じるのよ。

Y木:男になれって、どういう訓練?

S原:「毎日ヒゲを剃れ。その内ヒゲが生えてくる!」

Y木:…おいおい。

S原:あとは「男言葉を使え!」とか。でも、記録が伸びるねんで(笑)あと、2人は社宅の一室で生活も共にすることになるねんけど、今では考えられへんよな。このへんは時代やろうな。で、大会前のセックスチェック(性別確認)で、安田は半陰陽と診断されてしまう。「男女両方の性器がありいずれも未発達」「半陰陽と診断」。これではオリンピックに出場できない。よく聞くと、彼女は生理が一度も来たことがないらしい。本人自身も自分は何者かずっと悩んでいたことがわかる。

Y木:なるほど。それでどうなるの?

S原:安田道代はショックで伯母の家にひきこもってしまう。しかし緒形拳は諦め切れず、ひろ子を迎えに行く。砂浜で二人は口論になるが、今度は緒形拳が言う。「おまえを女にしてやる!」「そうすれば、おまえは女性選手となりオリンピックに出場できる!」

Y木:……おいおい。

S原:そこからがスゴイよ。昼は陸上の練習。夜は女になるための練習。緒形拳とのチョメチョメに励みます。昼も特訓、夜も特訓♡

Y木:言い方がいやらしいな。

S原:そしてやがて生理がきます。無事に「女」になりました。やったぞ、と喜ぶ緒形拳。その喜びの勢いのまま、またチョメチョメします。

Y木:……おいおい。

S原:ま、そういう映画ですから。こんな感じのトンデモ映画なんやけど、なんともいえん魅力があります。

Y木:最後はどうなるの?

S原:あー最後はおもろいよ。結局、女性認定をされて陸上の大会に出場できるようになります。でも、緒形拳の期待とは裏腹に平凡な記録しか出ないのよ。で、緒形拳がつぶやきます。「女にしすぎたんだ…!」

Y木:あははは!落語みたいなオチやなあ。

S原:最後は、2人でトボトボ歩いているところでおしまい。ここは、なかなか味があったわ。

Y木:世の中、変な映画があるんやなあ。

S原:さあみなさん。とても変な映画ですが、わかりきったハリウッド製にはないユニークさが楽しめますよ。日本映画界に勢いがまだあった時代なので、こういう実験的と言うか大胆な映画まで作れたんでしょうね。いまの電通やフジテレビが、この企画を通すとは思えません。でも、この映画はおススメです。マストバイとまでは言いにくいですが、どこか機会があればぜひ観てください~!