あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ぶっ飛んでる映画特集!「復讐の歌が聞こえる」(1968)の巻

あの頃映画 「復讐の歌が聞える」 [DVD]

S原:今回は昔の日本映画です。

Y木:へえー。

(あらすじ)

原田芳雄のスクリーン・デビュー作となったサスペンス・ミステリー。城所一族によって会社と恋人を奪われ、家族を死に追いやられた竹中。それから13年後、城所の周囲で次々と謎の殺人事件が起こり始めて……。

 

Y木:1968年の映画、しかも原田芳雄のデビュー作か。これが、ぶっとんでいる映画?

S原:地味ながらぶっ飛んでいます。というかこれは、かなり変な映画、イビツな映画やったわ。

Y木:イビツか。

S原:ぼく、原田芳雄の声が好きやねん。演技はどれも似ているけど、あの雰囲気はなかなかのもんやと思う。とくに脇役での存在感はピカイチ。私生活では鉄道マニアというところも好感が持てるよな(笑)

Y木:へー鉄ちゃんやったんや。それで、イビツで変な映画って言うのは?どこが変?

S原:この映画は復讐ものやねん。原田芳雄が復讐する相手は、なんと24人もおるねん。それを一人一人殺していく。

Y木:24人か。確かに多いな。

S原:しかも、殺した後にトランプを置くねん。

Y木:「地獄の黙示録」(1979)みたいでかっこええやん。

S原:キルゴア大佐やろ。あの映画よりも前やから、センスは良いしスタイリッシュでええねんけど、さっきも言ったけど標的は24人やろ。映画は90分しかないから、ものすごいスピードで殺していく。あれよあれよという間やった。工場のライン作業みたい(笑)そういう部分が面白いと思えるかどうかで、評価は変わると思う。

Y木:映画としては要するにピカレスクロマンとかハードボイルドタッチなんやろ。

S原:そうそう。白黒ノワールというか。画面もかっこええねんけどな。何度も言うけど、どこか変な感じがするのよ。「コク」や「タメ」みたいなのが無いというのか…

Y木:復讐の目的は?

S原:主人公の父は大企業の社長やったけど、腹心たちに騙されて企業犯罪の責任を取らされる。父親は失脚したあとに殺される。専務だった兄は事件の責任を取らされ自殺に追い込まれた。恋人にも逃げられて、主人公は刑務所にいれられる。出所した主人公は、復讐を開始する…という感じ。

Y木:シンプルなストーリーやな。

S原:うん。復讐ものは単純でええと思うねんけどな。

Y木:殺すって、どういう方法?

S原:復讐し始めたときはわりと凝ってるねん。ビルの工事現場でクレーンに吊るしてネチネチといじめるとか、そのあと躊躇なく真っ逆さまに落とすとか、港のブロックに手錠で繋いで海で溺死させるとか、熱湯風呂に閉じ込めて殺すとか、コショウに毒を入れてラーメンを食べるときに殺すとか。

Y木:コショウのネタ、おもろいやん。

S原:うん。こういう場面がもっとあればええねんけど、途中からはすごく適当になっていく(笑)「ウッ」という声をだしたら、すでに死んでいるとか、「うわー」と驚いた次のカットでは死体になってるとか。24通りの殺しの手段を思いつかんかったんやろうな。ちなみに原作脚本は石原慎太郎ね。

Y木:ほー石原慎太郎なんや。それはええねんけど、標的が多いんやから、一網打尽で殺すとかないの?そのほうが効率的やん。

S原:ない。あくまで丁寧に、ちゃんと1人ずつ始末します。根がマジメなんやろうな。

Y木:そういう問題か。最後は?

S原:悪玉の親分と戦います。この場面はうってかわって異様に長い。しかもフェンシングで闘うねん(笑)

Y木:マジなんかコメディなんかどっちやねん。

S原:しかもこの場面では、戦っている最中に金魚鉢が割れて、床に落ちた金魚がバタバタします。この金魚を写すカットがまた長い。ワンカットで1分以上あったと思う。

Y木:相米信二かよ。それに、嫌やなあ…金魚がバタバタする長まわしショットなんて。

S原:いやまあ、そういう変な点もユニークで面白いねんけどな。始めに言ったけど、映画としては、全体的にピントがずれてる感じで、やっぱりイビツなのも事実やねん。でも、こういうのが好きな人はおると思う。

Y木:おまえとしては、これはアリ?

S原:アリです。単純に観てて面白いし、テンポが良いからあっという間に終わる。当時の日本映画独特の空気も漂っていて、楽しいで。映画製作とか興味のある人は、かなり参考になると思う。

Y木:映画製作?なんで?

S原:いろいろと凝ったことをしようとトライして、結果としては失敗してるから。でも、トライする気持ちは評価したいけどなあ。

Y木:うーん、なるほど。

S原:さーみなさま。独特の世界観を持つ映画ですが、平凡でどこにでもある映画を観るよりこういう映画を観たほうが良い…ような気がします…たぶん…(笑)原田芳雄ファンならお見逃しなく。意外と中古店でみかけるかも、です。見つけたらゲットを検討して下さいませ~!