あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ぶっ飛んでる映画特集!「モロヘイヤWAR」(2003)の巻

モロヘイヤWAR [DVD]

S原:今回はなんと8mm映画です。

Y木:8mm!

(あらすじ)

クローン技術がもたらした戦争の悲劇を、過激な暴力&性描写を用いて描くカルト・ムービー。ブラックな笑いと斬新な映像で反戦を表現し、ラストに喪失感と絶望感を与える。

いつも仲間たちにバカにされているダメ軍人のブリッツ。ある日、ブガロ大佐にタバコが欲しいと言われた彼は、街へと繰り出す。そこで自分の母親とそっくりな娼婦に出会い、肉体関係を持った彼は、恋をしてしまう。

 

S原:懐かしいやろ?もう観ている間、既視感ありまくりで学生時代のアホなエピソードを思い出して、映画に集中できへんかったわ(苦笑)

Y木:しかし8mmかー。それをDVDにして販売するんかー。なんかすごい世の中になったな。

S原:どこかの劇場では上映したみたい。それもすごいよなあ。観た人はどう思ったんやろ。

Y木:それで映画はどうやった?

S原:うーん、やっぱり8mm映画を観るのはちょっとしんどいな。

Y木:そうやろな。

S原:映像がザラザラなのは、まあ慣れてるんやけど(笑)…なんと言えばええのか、ストーリー自体もシュールやねん。舞台はどこかの戦場。プラトーンを雑にして緩くした感じかな。登場人物がみんな同性愛者でところかまわず性交したり、銃弾が飛び交う中で自慰行為をしたり、というメチャクチャな戦場なんやけど、主人公(ブリッツ)はどんくさくて、軍人仲間からバカにされたり虐められている。あるとき、上官からタバコを買いに行かされた主人公は、自分の母親そっくりの謎の娼婦と会う。そのまま汚い小屋でチョメチョメする。

Y木:ふーん、それで?

S原:主人公は、その娼婦に夢中になってしまう……というストーリーやと思うんやけど、どうもわかりにくいねんなー。

Y木:白昼夢というかシュールな映画なんやろ。

S原:そうなんやけどな。戦場の場面にキレイなピアノ曲がかぶさったり、太陽光で撮影したり、やりたいことは分かるしそれなりの効果はでてると思う。でも、なんちゅうんかな…設定がそもそもかなり奇妙やねん。敵といっても、ベトナム人のような変な奴らやし、そもそも山中での動きがないから、なにをしているか分かりにくい。わざと、「いかにも戦争映画」という緊迫感を消している演出なのは理解できるんやけど、そのぶんメリハリがなくなったように思う。あと、これも演出なんやけど、全部手持ちカメラで撮影してるねん。ドキュメントタッチを狙ったんかもしれんけど、8mmやからなー。ほの暗い画面がグラグラゆれるのを1時間観るのはちょっとな。

Y木:なるほどな。

S原:でも、これを完成させたパワーは認めるし、この独特の雰囲気を最後まで崩さずに押し切ったのは、えらいと思う。そこは褒めたい。でも、ひとりの観客としては、うーん…という感じかな。

Y木:結局は、あかんかったのね。

S原:一番あかんのは、「キャラクター」やと思う。主人公もほかの登場人物もなにをしたいのかわからない。娼婦に恋心を抱くとか、戦場での狂気とか、敵が襲来する恐怖感とか、どれでもええねんけどもっと輪郭をハッキリとさせないと伝わらんと思う。せめて主人公がどんな人間なのか分からないと、物語の「軸足」みたいなもんが、伝わらへんねん。とくに主人公が、娼婦に恋してしまうエピソードが迷走気味なのが残念。せっかくの野心的な試みが、それだけで終わってしまった。

Y木:クローン技術による戦争…って解説には書いてるけど?

S原:そのへんも曖昧やった。一応、最後は、主人公がクローンの兵士かも?という、軽いどんでん返しで終わる。さっきも言ったけど、作り手のパワーは感じるから、惜しいで。人によっては「下手な映画」「素人が撮った映画」と切り捨てるかもしれんけど、単純に葬ってしまうのは惜しい。とにかく変なセンスは爆発してて個性的なのは間違いないから。観終わった後もすごく印象に残るしな。

Y木:じゃあ「自主映画」としては成功ちゃうの?

S原:かもな。監督(蔭山周)が満足ならそれでいいと思う。でも、ぼくみたいな単純な観客からすると、やっぱり残念やわ。なんかの弾みで面白くなったはずやのになあ。

Y木:自分たちが楽しんでたらそれでええんとちゃうの?

S原:たしかに他人がどうこう言う映画でもないかもしれん。実際、ネットでもほとんどレビューがないしな(苦笑)

Y木:それにしても、よくこんな映画をみつけるわ。

S原:ほんまにワゴンコーナーに置いてあったのよ。いやー、ワゴンコーナーはちょっとした「小さな宇宙」やで。まさにミクロコスモス!

Y木:おまえ、そのうちブラックホールに吸い込まれるんとちゃう?(笑)

S原:結構居心地が良かったりして(笑)さあ、みなさん。カルト中のカルト作品と言ってもいいでしょう。一体、この映画をこの広い世の中で何人が観たのでしょうか?たぶん出会ったときにゲットしておかないと、二度と観れないと思いますよ。いやはや世の中には、奇妙な映画がありますなあ。この変な世界を一度体験してくださーい。