あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ぶっ飛んでる映画特集!「アセンション 終焉の黙示録」(2003)の巻

アセンション 終焉の黙示録 [DVD]

 

S原:今回のぶっとんだ映画はこちらです。

Y木:このジャケットはださすぎる……レンタル店でみつけても「ちょっと観てみようかな」と思わんやろ。

 (あらすじ)

奇抜なストーリーと斬新なビジュアル、そして衝撃のラストが見る者を引き込むSFサスペンス。大地は荒廃し、人々は殺し合いに明け暮れる近未来。そんな中、選ばれし3人の女性は、時代を救う“絶対的な何か”が存在するという巨大建造物に入っていく。

 

S原:いやー参った参った。これほど変な映画も珍しい。

Y木:これ、「ぶっとんだ映画」というか単に出来が悪いだけちゃうの?

S原:否定できないです(苦笑)でも、ぶっとんでるねんって。だって女性3人が延々と階段を上るだけの映画やで?どう考えたってまともじゃないやろ。

Y木:たしかに。

S原:眉村卓の「通りすぎた奴」という短編小説があるんやけどな。中学生のときに読んで、いまだに印象に残っている。超高層マンションみたいな世界の階段を登り続ける男と出会う話なんやけど、あの小説によく似てると思ったわ。この映画は、あのシンプルな小説よりもかなり落ちる。ハッキリ言うと退屈です。

Y木:シュールなSF世界観なんやろ。タルコフスキーの「ストーカー」(1980)なんかも、よくわからんまま歩いていくだけの話やったやん。

S原:あーあれも変な映画やった。でも、なんというか「ストーカー」って、映像とか雰囲気が奥深い感じがするやろ?もっと言うと「この映画はたぶん凄いんだろう。理解できない自分の頭が悪いにちがいない」と自己暗示しながら、苦痛に耐えて観るタイプの映画やん。「地球に落ちてきた男」(1976)とか「去年マリエンバートで」(1961)とかも同じ。「なんだか訳が分からないけど、なんとなく良い映画なんだろうなあ」「友達の前では、理解できたふりをしておこう」みたいな(笑)

Y木:それは映画が議論のテーマになってた頃の話やろうな。いまはそういう奴は、さすがに少ないやろ。

S原:この映画のことを言うと、全然そういう「深み」や「意味合い」なんかはなくて、ただもう女性が階段を登るのをみせられるだけやった。

Y木:階段を登る理由は?

S原:よくわからん。一応、屋上(?)に神様なのか創造主なのか、そういう存在がいるらしい。それに会いに行くのが目的みたい。はじめに、ナレーションがあるねんけど、これもよくわからん。「ある日、何者かが出現した。それによって、人類は「奇跡」を起こすことが出来るようになった。それが原因で、かえって世界は悪夢となった。(地球が荒廃した?)その悪夢を消さなければならない…」

Y木:意味わからん。

S原:誰もわからんって。好意的に解釈すると、悪夢を消すために(人類を救うために)、3人の女性が「創造主」に会いに行くという設定なんやろうな。

Y木:なんか……あんまり面白そうでないなあ。

S原:うん。普通こういう映画って、階段を登っていく場面がメインになるやろ。凝った階段やったり、奇妙な現象が起きたり、そういうところが面白くなるわけやん。監督の映像センスの見せどころやん。

Y木:まあな。

S原:ところが、この映画では普通に汚い階段、従業員用の階段みたいなところを延々と上るだけ。しかも、ちょっと歩いただけで「足が痛いのよ」って愚痴るしな。

Y木:知らんがな。

S原:「眼が痛いわ」とも言ってたで。

Y木:なんで愚痴を聞かされなあかんねん。

S原:あと階段を登りながら、3人の女性が会話するねんけど、まったく意味が分からんねん。哲学的のような皮肉のような会話を目指したんやろうけど、全然心に響かなくて、ほんまに苦痛なだけ(苦笑)

Y木:それはそうとして、創造主がいるくらやから、むちゃくちゃ高い建物なんやな。いつまで登っても辿り着かないような。

S原:いや、普通の汚い建物やったで。10階建てくらい。

Y木:すぐに登れるやん。

S原:足が痛いから、なかなか登られへんねん。

Y木:なんやねん。

S原:あと、上に登っていくにつれて、年を取ったり白髪になったりする。

Y木:あーいかにもやな。理由は創造主に近づいたから?

S原:ぼくにはわかりませぬ……眼から血が出たり、口から血が出たり、鼻から鼻水がでたり。階段も這いつくばって登っていく。これがまたゆっくりでな。退屈やねん。あー、そうそう、なぜか妊娠して赤ちゃんも生まれる。その赤ちゃんは亡くなるねん。やけど、いくらシュールなSFの設定でも赤ちゃんが亡くなるなんて可哀そうやん。暗示かメタファーか知らんけど、ここは嫌悪感があるわ。

Y木:それで、どうなるの?創造主には会えるの?

S原:会えます。中学生くらいの子供やった。「ベニスに死す」(1971)の男子みたいな感じの男子。

Y木:ふーん、それで会ってどうするの?

S原:とくに何もしない。会うだけ。ここで、映画はおしまい。

Y木:……ヒドイな。

S原:うん。これ、観た人は何人くらいおるんやろか。何人かレビューを書いてる人もおるけど、これをわざわざ観るセンスって、嫌味でなくスゴイと思うわ。

Y木:みんなつっこんでるで。『お前が言うな』って。

S原:さーみなさん。意味不明な映画ですが、とにかく階段はたっぷりと観れます。階段マニアにはもうたまらない映像の連続でしょう。SFファンにも、シュールな映画のファンにも無視される運命の映画ですが、それはもう仕方ありません。10年後には、もうこの世にDVDは2本くらいしか残っていないでしょうし、だからと言って価値がでるわけではないんでしょうね。なんとも退屈な珍作です。ワゴンセールコーナーで見つけても、スルー、プリーズ!