あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「トランザム7000」(1977年)の巻

トランザム7000 [DVD]

 

S原:今回はこちらです。懐かしいやろ?

Y木:おー!「トランザム7000」!

 

 (あらすじ)

カーアクションの神様”と呼ばれたハル・ニーダム監督が、バート・レイノルズを主演に迎えて贈るアクションコメディ。トラック野郎のバンディットが大金持ちと8万ドルを賭けたカーチェイスを繰り広げる。

 

S原:1977年製作。いやー、このDVDのジャケットが時代を感じて良いよなあ。「トランザム7000」は、何十年ぶりに再見したけど、今の時代のカーアクション映画とはかなり違うなあ。

Y木:当時は確かカーチェイスものが流行ってたんやな。

S原:そうそう。やたらと車を壊すシーンを売り物にしたりな。「バニシング・ポイント」(1971)とか「ダーティ・メリー クレイジー・ラリー」(1974)とか数え上げたらきりがない。当時の車好きの少年たちは、勢い余って「コンボイ」(1978)まで観て「え?なんか違う…」と違和感を感じたりしてな(笑)

Y木:あれは、ペキンパー監督やから(笑)いや、おれは昔からこういうカークラッシュ映画にはピンとこないねんけどな。
S原:実は、ぼくもやねん。車に興味がないからかもしれんけど、カーチェイスとかにカタルシスは感じないねんな。

Y木:でも、どうなんやろ、カーアクションって、いまでも生き残っているジャンルなんやろ?

S原:着実に生き残ってるで。「ワイルドスピード」とか「トランスポーター」は人気シリーズやし。「なんとかレーサー」とか「なんとかスピード」とか、それこそ安売りワゴンコーナーには、必ず1本くらいある。邦画も結構あるねん。「超高速なんとか」とか「ドリフトなんとか」、誰が観るんやろ?と思ったりするけど(笑)やっぱり好きな人は、一定数でおるんやろうな。ところで、この映画は観た?

Y木:昔、何回も観たよ、テレビで何回もやったから(笑)でも、当時は派手に宣伝されてた割に、そんなにすごいカーチェイスでもなかったやろ。

S原:おっしゃる通り。たくさんの車(とくにパトカー)はクラッシュするけど、大したことないねん。とくに、いまのヤングたちには全然物足りないと思う。映画のテンポ自体がスローやし、結構クルマから降りて、散歩したりレストランに入ったりしてる。制限時間あるはずやのにな(笑)。逆にそんなところが良いよ。あと、なんといっても主人公はテンガロンハット+ヒゲ+赤シャツやし(笑)

Y木:バート・レイノルズなー。当時のセクシー俳優No.1やな。そのあとがリチャード・ギアかな。

S原:バート・レイノルズは、当時のアクションスターみたいな感じやけど、一方で全編ピンと糸が張り詰めてるような雰囲気の「脱出」(1972)にも出演してるし、なかなか雰囲気のある人やと思う。でも、当時のアメリカでは超トップスターだったわりに、日本ではまあまあの人気やったような印象があるな。

Y木:やっぱりいかにも「アメリカン」やから(笑)

S原:たしかに。赤シャツのボタンもはだけて胸毛が見えてるしな。アメリカンな胸毛は日本のヤングな女性には受けへんから(笑)

Y木:胸毛を剃ればええのにな…それとも胸毛がアメリカ人のアイデンティティなのか…いや胸毛の話はええねんって。ところで、この映画ではビールを運ぶ話やったやろ。

S原:うん。当時、クアーズビールを越境して(ミシシッピー州の東を越えて)は、ダメという法律があって、ビールを密輸するために、主人公たちが雇われるねん。『28時間以内に、テクサーカナまでトラックを飛ばし、ビールをアトランタに持ち帰れれば、報酬は8万ドル』という賭けをするねん。

Y木:わかりやすいな。その設定があれば、あとはカーチェイスをみせればええもんな(笑)

S原:とにかく、このころのカーアクション映画は、かっちょいい車が爆走して、ド迫力のカーチェイスを繰り広げるというパターン。ありがちともいえるし、わかりやすいとも言える。スーパーカーブームもあったしな。

Y木:でっかいトレーラーでビールを運ぶねんな。

S原:そうそう。トランザムは、囮というか警察の眼を反らすために走りまくるねん。ちょっと無理がある設定やけどな(笑)この映画自体は、変形の珍道中ものなんやけど、牧歌的という表現がピッタリ。途中で花嫁姿の女性も仲間に加わったり、追いかけてくる保安官もテキサス出身で小太りで、わかりやすい(笑)

Y木:保安官が、頭の悪い息子と一緒に追いかけてきたたやろ。

S原:うん。花嫁姿の女性の結婚相手やねん。でも、なんで結婚式から逃げてきたのかわからん(笑)

Y木:結婚相手が嫌やったんやろ?

S原:それやったら、結婚式しなかったらええやん。

Y木:まあそれを言ったらおしまいじゃないの?(笑)

S原:パトカーがしつこく追いかけてくるのも、当時の定番やな。いろいろな場面に時代を感じて楽しいで。主人公に追いつけない保安官が「おれをコケにしやがってー」と悔しがったり、トランザムがやたらと後輪を滑らして走るとか、人を見つけてギュギュギュとドリフトして横付けして停めるとか、トランザムが川を飛び越えたあと、パトカーは川を飛び越えられず落ちるとか。もういまのB級映画でも見られないベタな場面のオンパレード(笑)でも、不思議と楽しめる。なんなんやろ、この感覚は?

Y木:まあ、この映画のリズムにのったってことでしょ?

S原:そうかもな。そう考えると古い映画も全然ありやな。

Y木:こういう映画は宣伝もしやすいし、迫力ありそうやから映画館で観てみようか、という気になるんやろうな。そう考えると、ほんまに時代を感じるなあ。

S原:いま「迫力ありそうやから映画館に観に行こか」というヤングがどのくらいいるのか…というか、いまのヤングたちは、そもそも「デートで映画に行く」っていうのもあるんやろか?

Y木:どうなんかなー。あるんやろか。

S原:あ。いま思い出した。そういえば、むかし「ウォーターワールド」をデートで観にいって、その日にフラれた友達がおったなー。あの映画を観ても、とくに会話は弾まんからなあ…選択ミスやな(笑)

Y木:おれの友達は初期の「ワハハ本舗」、作り物のうんこが客席に飛んでくる舞台を初デートに選んだやつがおったで。もちろんすぐ別れた。

S原:選択ミスやな(笑)そういえば、この映画と同じ頃に、邦画では「トラック野郎」シリーズがあったやろ。菅原文太のやつ。

Y木:監督は鈴木則文。一部で再評価されてたり、なかったり、やな。

S原:鈴木則文は、ぼくにとっては「パンツの穴」の監督やけどな。あれはものすごい破壊力やった…(笑)それで「トラック野郎」シリーズも時間内に荷物を届けるという同じ設定がたまにあるねんけど、やっぱり、こういうのはアメリカ映画のほうが上手やなあ。あっちは、メインのほかに小さなエピソードが多すぎて迷走気味でな。それもつまらないエピソードばかり。再評価の動きもあるんやな、知らんかった。というか再評価ってほんまか?(苦笑)

Y木:まあ、ああいうは、のんびりと観る映画とちゃうの?それで、この映画のラストは、たしか制限時間ギリギリに間に合うねんな。

S原:そうそう。でも、今度はボストンまで運ぶという賭けをもちかけられる。うまくいけば倍。だめならゼロ。もちろん、アメリカンな主人公たちは、賭けにのるのさ!で、おしまい。

Y木:うわー、ラストも時代を感じるなあ。

S原:さあ、みなさん。70年代のカーアクション映画をのんびりとビール片手に楽しんでください。この映画をみたら、ユニクロで赤シャツを探したくなるのは違いありません。かっちょいいトランザムのエンジン音をBGMにウトウトするのも一興ですよ。マストバイです!