
S原:今回は異色作品です。
Y木:動物の惑星?
(あらすじ)
動物が人間を支配する世界を、人間独自のコミュニケーションである「言語」を一切排して描いたフランス発の異色スリラー。人間と動物の立場が完全に逆転した世界。森の中で鎖につながれていた男は、犬の頭部を持つ者に保護され、車に乗せられてどこかへ連れて行かれる。一方、森で狩られた複数の男女はトラックで運ばれ、畜舎に放たれる。やがて1人の男が畜舎から脱走しようとするが……。監督・脚本は本作が長編デビュー作となるバティスト・ルーブル。
S原:これはフランス映画。まったくセリフがなくて、動物が人間を支配しているという世界を描いています。
Y木:逆転の世界でセリフなしか。たしかに野心作やな。
S原:その野心は買います。でも、正直に言ってぼくにはあかんかったなー……
Y木:そうなんか。どういうところが?
S原:結局は、「動物が人間を支配しているという世界」というワンアイデアだけやねん。
Y木:そういう映画でしょ。

S原:そうなんやけど……これ、64分しかないねん。でも、長く感じる。好みなんやろうけど、まず人間や動物が汚らしい。
Y木:リアルさを狙ったんやろうな。
S原:たぶんな。人間が家畜(?)として扱われている描写が長い。製作の意図としては「人間も同じことをしてるやろ」ということなんやろうけどな。
Y木:「おまえだって、焼き肉食べてるやろ」みたいな?
S原:そう言われると「はい、そうです」としか言いようがないねんけど(苦笑) ただ申し訳ないけど、これを観たからと言ってぼくは動物愛護の気持ちは強くならんです。


Y木:そのへんは分かった。いわゆる「映画」としてはどうなん?
S原:そんなに上手く出来ていないんちゃうかな。説明を極力排した演出やから仕方がないかもしれんけど、ほとんど意味が分からない。たとえば、動物(人間みたいに二足歩行している)が、5~6人の人間をおそらく家畜として飼っている場面があるねん。動物人間はひとりやで? 人間がそれだけおれば、抵抗できそうやろ? でも抵抗しない。ビクビクしているだけ。
Y木:「人間の知能が動物並みになっているという設定」なんやろ。
S原:そうなんかなー。でも、こっそりと柵から抜けだしたりする人間もいる。それも、こっそりと動物の目を盗んで抜け出す。こういう知性はあるみたいやねんけどな。よくわからん。


Y木:監督の主義主張か? 動物愛護とか肉食反対とか、そういう主義?
S原:わからん。ネットで検索してもでてこない。知っている人がいたら教えて下さい。一応、映画としては、露骨に主張してるわけではないんやけどな。ただ自然をきれいに写すカットがよく挿入されるから、それもメッセージなんやと思う。今回は映画としての面白さを感じるまえに、いろいろな余計なことを考えてしまった。そこが個性ともいえるんやけどな。うーん、でもなあ。
Y木:ま、個人の好き嫌いでええんちゃうの?
S原:そういうことにしておきます。ということで、みなさん。よほど興味がない限り、わざわざ観なくてもよい映画かも……です。アイデアがユニークでも、なかなか映画を上手く作るのは難しいと感じました~!