S原:今回は久しぶりにこういう映画です。
Y木:Vシネマ系やな。
(「抗争 暴力団vsギャング 」のあらすじ)
六本木でプールバーを経営する弘明寺龍一は、4人の仲間と共に裏では金貸しを営んでいた。そんな彼らに、六本木を麻薬で支配する暴力団の影が忍び寄る。
(「溝鼠VS.毒蟲」のあらすじ)
お金のためならどんな仕事でも引き受ける復讐代行業を営む“溝鼠”こと鷹場。彼は少年時代に経験したトラウマにより非道な人間になっていた。そんな彼に恋人を汚された大黒は…。
S原:ぼくらは2人ともヤクザ映画とかVシネマは詳しくないやん?
Y木:そうやな。好きな人には申し訳ないけど、苦手やわ。
S原:ぼくも積極的には観ないねんけど、この手の映画を観て思うのは『やっぱり俳優(とくに男優)をカッコよくみせるためだけの映画やなあ』と。
Y木:それでええやん。
S原:ただ、ヤクザとか闇金とか「闇の世界に生きる漢」を描くことが大半やけど、個人的にはそっちの世界に憧れが全くないからなあ。どうも入り込めない。
Y木:じゃあ、観なかったらええやん。
S原:そう言われたら、話は終わるねんけどな(苦笑) まあ、Vシネマ系のDVDを観るたび思うねんけどな。なんか………
Y木:なに?
S原:……どういえばええんかな。
Y木:はよ言え。
S原:……薄味やねん。
Y木:それが結論かい。
S原:うーん、どうも物足りない。作り手は、やっぱり面白い作品を作ろうとおもってるわけやろ? それにしては、あまりに直球勝負やねんなあ。べつに凝った作品が上とか言わへんけど……
Y木:今回も薄味やと?
S原:そうねえ。まず「抗争 暴力団vsギャング 」は、主演の白竜をかっこよくみせる映画なんやと思うけど、意外にかっこよい場面が少ない。
Y木:ふーん。
S原:それに主演俳優の魅力だけ90分近くひっぱるのは相当な技量がないと厳しいで。もっと他に、観客が引っかかるポイントを作った方がええと思うねん。キャラクターなのか、抗争の駆け引きなのか、銃を使ったアクションなのか、裏社会の怖さなのか。
Y木:そういう全部の雰囲気を味わう映画ちゃうの?
S原:雰囲気重視なら、もっと「絵」にこだわってほしい。「ブラックレイン」(1989)とか話は大したことなくても、あの雰囲気で一気に見せるやん。
Y木:まあ、製作費が違うからな。
S原:たしかに製作費の問題はあるけど、どうにも歯痒いわ。この作品では、白竜率いるグループと暴力団とももめごとを描いています。白竜は、プールバーを経営してるんやけど、裏では高利貸しをしている。暴力団も同じ裏家業をしているから、当然ぶつかります。やがて、大きな抗争になって……と、話はこれだけやねん。
Y木:普通の話やん。
S原:残念なのは、白竜側がしていることが暴力団と変わらないことやな。メンバーもチンピラそのものやし、暴力団同士の抗争という設定にしても同じやと思う。
Y木:あー、ギャング対暴力団になってないってこと?
S原:そうそう。要するに、観ていて「暴力団」と「ギャング」の違いが良くわからんのよな。一応、「暴力団vsギャング」というタイトルなんやから、それぞれの立場とポリシーの違いをはっきりさせて欲しかった。そうしたら、意外に面白くなったかも。
Y木:どうやろ。そこまで考えてないんちゃうの?
S原:そこやねん。そこがもったいないねんなー。
Y木:「溝鼠VS.毒蟲」もそんな感じ?
S原:あ、こっちはまた感じが違うねん。もっと話が複雑で人間の内面重視やった。
Y木:へえ、じゃあ普通のVシネマ系とはちゃうんかな。
S原:一味違います。新堂冬樹の同名小説が原作みたい。この原作が強烈みたいやから、この映画でもなかなかです。姉をレイプされるというトラウマから、冷徹になってしまった男が主人公で、この役をボクサーの竹原慎二が演じてます。俳優ではないからセリフは上手くないけど、黙っている場面とかは静かな迫力があった。同じ畑山隆則も出演しているけど、こっちはほとんど出番がなかった。次の作品(完結編)で、2人がぶつかるんとちゃうかな。
Y木:じゃあ、結構面白いの?
S原:うーん……(困った顔)
Y木:また、それかい。
S原:人間のどす黒い内面を描いてるはずなんやけど、やっぱりいつものVシネマ系っぽくなってしまうねんなー。なんで、こういう風になるんやろ。女優がでてきてSMチックに凌辱されるとか、普段の生活では言わない台詞で人間関係を説明するとか、いかにもな格好のヤクザがでてきてお決まりの演技で怒るとか、自分の思ってることを全部相手に喋るとか。実生活でも、そんなに自分の気持ちを赤の他人にペラペラ話さへんやろ?
Y木:まあな。
S原:さっきも言ったけど原作は評価が高くて面白いらしい。なので「根っこ」はユニークなのに「枝葉」がワンパターンすぎて、いつものVシネマになってる。でてくるキャラクターは癖のある奴ばっかりやねん。なので単純に、もっと「省略」したほうが、面白さ・怖さが出ると思うねんけどなー。
Y木:「そういうジャンル」なんやって。そういう「枝葉」が好きな奴(だけ)が観るねんって。
S原:そうなんかなあ。良い場面も多いからもったいない、というのも大きなお世話なんかもな……(苦笑) さあみなさん、「VS」と名がつくVシネマ系の作品を2本観ましたが、相変わらずの世界観でした。製作費が少ないなか頑張ってるので応援したいですが、たまには変化球もみてみたいです。というわけで、この手のジャンルが好きな人のみどうぞ~!