S原:今回は、ミュージシャン2人主演の映画!
Y木:なにこれ?まったく知らんわ。
(あらすじ)
日本経済が崩壊し、多くの日本人が移民として海外へ流れていった近未来、ヴァンパイアに血を吸われて永遠の命を得てしまったケイ(HYDE)は、アジアの小さな街マレッパでショウ(Gackt)と知り合い、友情を育んでいくが、やがてショウのグループと街を仕切る地元ヤクザたちとの抗争が始まり…。
S原:これは、ミュージシャンのGackt(ガクト)とHYDE(ハイド)がW主演で、2人のために撮られたような映画です。もうかなり前の映画やから忘れられてるやろうな。
Y木:ファン向けってことか。一種のアイドル映画やな。
S原:そうやな。これ、アマゾンのレビューみたら、すごい高評価で驚いた。それだけ熱心なファンがおるってことなんやろうな。ファンには悪いけど、ぼくはとても高評価をつける気にはなれへんかった…
Y木:そうなんや。
S原:知人の女性にラルク・アン・シエルの大ファンがいてな。公開初日にこの映画を観たというから感想を聞いたら、「こんなんするんやったら、バンドに専念してほしいわ。もう2度と俳優はせんでええわー」と苦笑いしてた。
Y木:ファンやのにそんな低評価なんや。どこがダメなん?
S原:やっぱり演技がな……(苦笑)
Y木:そりゃそうやろ。ミュージシャンなんやから。
S原:でも、フォローするわけじゃないけど、この2人の存在感はすごいと思ったで。セリフがない場面のほうが断然印象に残る。
Y木:ほう。
S原:全然タイプは違うけど、あの「どついたるねん」(1989)の赤井英和みたいな存在感やと思う。
Y木:たしかに「どついたるねん」の赤井はすごかった。演技も何も超越してたからなー(笑)
S原:でも、それがすごい映画の推進力になってたやろ。「MOON CHILD」ではGacktとHYDEの唯一無二の存在感を生かす物語になってない。これが一番ダメなところやと思う。
Y木:ほう。じゃあ、「どついたるねん」とは、どういう点が違うと言いたいの?
S原:とにかく話がわかりにくいし、スカッとしない。もっと単純なストーリーのほうがこの2人の魅力がでたと思う。さっきも言ったけど、どうせ演技には誰も期待してないんやから(笑)
Y木:(youtubeで予告編をみながら)んー…これは、話としてはSFなん?
S原:変則なヴァンパイアものといえばええんかな。舞台は2025年。アジアの架空の街・マレッパ。HYDEはヴァンパイアで、Gackはストリートギャング。仲間との絆を大切にしながら、地元のマフィアとやりあったり、恋をしたり…そんな感じのお話。
Y木:なんか…面白くなさそう。
S原:ハッキリ言うんじゃないわよ、あなた。架空のアジア風の街並みはなかなか面白いし、そこに佇むGacktとHYDEはかっこいい。でも残念ながらそれだけやったなあ。
Y木:ファンにとっては、それでええんでしょ。
S原:そうなんやけど、こっちはやっぱり「映画」を観たいと思ってるわけやから…結局は、中途半端なんやろうな。
Y木:でた!このブログで日本映画を語るときにでてくるキーワード、「中途半端」!(笑)
S原:いやー毎回同じことを言って申し訳ない…(苦笑)映画製作は難しいのはよく分かるから、悪く言ってスタッフ&キャストには申し訳ないと思う。でも、少なくてもこの映画では、一番おいしいところを取りこぼしてると思うねん。観客はそのおいしいところを観たいはず。
Y木:おいしいところって?
S原:ストーリーや設定が2人の魅力が生かしていない。これに尽きる。何度も言うけど、2人は俳優ではないから演技は出来ないという前提をちゃんと意識してつくればいいのに、と思うわ。
Y木:なるほどな。
S原:HYDEの雰囲気はヴァンパイアというのは良く似合っている。でも、周りの仲間は年を取っていくけど、自分は永遠の同じという哀しみまでは表現できていない。これはHYDE本人ではなく監督はじめスタッフのせいやと思う。誤解を恐れずに言えば「演技なんかどうでもいい映画」ってあるやん。そういうのを意識すれば、これは「大化け」したかもしれんと思う。
Y木:えー、そこまで言うか?
S原:もしかしたら「挑戦」したけど、上手くいかなかったのかもしれんけどな。
Y木:いやあ、予告編を見る限りとても大化けするとは思えん(笑)あ、予告編では銃撃戦があったけど?
S原:銃撃戦もイマイチやった。マトリックス風に弾をよけたりするねんで。
Y木:……なんでマトリックスになるんや?(失笑)
S原:さあな。かっこいいと思ってるやろうな。一応、ヴァンパイアの力で銃弾を避けることができるという設定らしい。でも、マフィアとの抗争も緊張感がないから、途中で眠くなる。そもそも相手のマフィアが全く迫力がない(笑)
Y木:ラブストーリーの要素は?ファンはそこに胸キュンなんとちゃうの?
S原:あるけど、これも上手くなかった。えーと…あーほとんど思い出せない(笑)三角関係のようなそうでもないような…まあ、大したことないよ。
Y木:結局は、ダメ映画なんや。
S原:そういわざるを得ないなー。GacktとHYDEというダイヤの原石をうまくカットできなかったようなもどかしさだけが残ったわ。
Y木:ダイアの原石…おれみたいにラルクやGacktの音楽に興味がない人間にとっては、とても宝石には思えんなあ…(苦笑)
S原:さあ、みなさん。HYDEとGacktのための映画ですが、よほどのファンでないと楽しめないでしょう。異質な雰囲気はありますが、やっぱり単純に面白くないです。というわけで、ワゴンで見つけたらスルー、プリーズ!