あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

(たぶん)一部の人しか知らない日本映画を12本観てみる!「ブラブラバンバン」(2007年)の巻

ブラブラバンバン [DVD]

S原:今回はこれです。

Y木:吹奏楽の映画か。

(あらすじ)

高校に入学したばかりの白波瀬歩(しらはせ・あゆむ)は、放課後、音楽室でひとりホルンを吹く芹生百合子と出会う。彼女に合わせてトランペットを吹くと、芹生は突然歩を押し倒し制服を脱がし始めるのだった。慌てて逃げ出した歩は、翌日、彼女が音楽で気持ちよくなると無意識に発情してしまう特異体質だと知る。そこで歩は、ちょっとした下心を忍ばせつつ、芹生のためにつぶれかけた吹奏楽部の再建に乗り出し、急ごしらえのメンバーでコンクール出場を目指すのだったが…。

 

S原:これは、漫画が原作みたい。

Y木:青春もの?

S原:そうなんやけど、ちょっと変わっている。主役は内気な男子高校生やねんけど、あるとき音楽室でホルンで「ボレロ」を吹く女子を見かける。音色に惹かれた主人公はトランペットが吹けるから、一緒にユニゾンする。いい感じで合奏してると、急に女子が豹変するねん。

Y木:豹変?

S原:エッチになるねん。

Y木:は?

S原:ほんまやねんで。ヒロインの設定がユニークでな。音楽に昂揚すると我を忘れてエッチな気分になってしまうねん。

Y木:脱いだりするの?

S原:いや、自分が脱ぐんじゃなくて、近くにいた男子の服を脱がすねん。

Y木:なんやそれ。酔っ払いか。

S原:ヒロイン役は、安良城紅というミュージシャンらしい。このあと改名してBENIになったらしい。それなりに有名らしいけど、ぼくは知らんかった。高校生にはみえないくらい大人びててるなあ、と思ってあとで調べたら22歳の大人やった(笑)

Y木:設定は面白いとおもうけど、どんな話なん?

S原:結局、つぶれかけた吹奏楽部に経験者も初心者もあつまってきて、コンクールを目指す。エッチになる女子高生ももちろん吹奏楽部に入ります。

Y木:でも、そんな特異体質やったら練習にならへんのとちゃうの?

S原:それが、みんなの演奏が下手すぎて、練習では興奮しないねん。

Y木:なんやねん。

S原:まあ、いろいろあってコンクールを目指して練習するねんけど、ずっと違和感があってな。

Y木:違和感?

S原:一番、違和感があるのはエッチになるヒロインのキャラクター設定やねん。

Y木:「エッチになるキャラ」やろ?

S原:それ以外、どんな人間が全然わからんねん。いつもブスッと黙っているし、周りから話しかけられても無反応やからどんな性格かわからない。変な性癖に悩んでいるのか、人間関係を築くのが苦手なのか? どうも、本当は音楽に対して熱い思いがあるのに上手く表現できない(隠している?)みたいなんやけど、とにかくわからん。

Y木:いわゆるツンデレ

S原:いやー、性格が悪く見えるだけやったけどな……あんな撮り方したら、安良城紅もかわいそうやで。ハッキリ言って、この人の魅力を引き出せていません。ハーフらしくてプロポーションが良くて、立ち姿なんかは良いと思えるショットもあるし、顔の向きによって雰囲気が変わるタイプやねん。けど、キャラクターにまったく感情移入できなかった。せっかくのユニークな性格設定(音楽で興奮する)なのに、それを生かせていません。

Y木:演技が下手なんとちゃうの?

S原:なんかそういう問題じゃないような気がする。

Y木:肝心の音楽で恍惚状態になるシーンはどうなん?

S原:ここがこの映画の魅力になるはずなんやけど……うーん大したことないな。セクシーショットも少しあるけど露骨じゃなくて、そこは逆に好感がもてた。だけどなー、みんな指摘すると思うけど、漫画的な設定を実写に置き換えるときは、かなり上手にやらないとな。漫画原作の失敗映画化っていままで死屍累々やん。いままでの歴史を繰り返してしまった。

Y木:漫画の良さを生かしてないってこと?

S原:原作を読んでないからわからんけど……。おかしな性癖の女子高生でひっぱるのか、吹奏楽コメディとして笑ってほしいのか。青春ものとして俳優たちを魅力的にみせたいのか、コンクールにむけた成功を目指す物語として楽しんでほしいのか、結局はどっちつかずで中途半端やねん。

Y木:こういう映画で、そのへんがブレてると厳しい感じがするなー。でも、全部を目指したんじゃないの?

S原:いやーこういう映画にそんな「野心」は要らんって。そんなことよりも登場人物達がかっこよく・かわいくみえるショットを1カットでも多く撮ってくれって。あと、主人公の男子高校生(福本有希)もよくわからんねん。あんまり喋らへんし。どうも、ヒロインに押し倒されて以降、恋心があるのか、勢いでブラバンに巻き込まれただけなのか、ブラバンが好きで本当は音楽に燃えているのか?なんか内気なヤツでイライラするねん。

Y木:主人公の設定もあかんのかい。

S原:モテモテの男子高校生(岡田将生)もおるんねんけどな、主役と同じ無口なタイプで、おまけに主役とおなじ髪型。なんで同じようなキャラを出すんや。おっさんは混乱するって。

Y木:メリハリがないなあ……

S原:まだ端役のほうがわかりやすい。ブラバンで全国目指そうぜ!と単純な盛り上げ役の坊主頭の同級生とか、ヒロインに嫉妬している他の女生徒とかのほうが、よほど物語の推進役になってる。でも、とにかく主演の2人がぼんやりしてて、のめり込めない。これじゃ、青春は弾けません。

Y木:そうかもな。音楽の面はどうやった?

S原:そっちは、まあまあ楽しかった。演奏される曲(ダッタン人とかボレロとか)もわりと好きな曲が多かったしな。でも、ブラスバンド経験者からみたら不満みたい。他の人のレビューをみたらみんなボロクソ書いてたわ。この映画では、楽器初心者の高校生がすぐに上手くなる。これに対する説明はない。これが余計に腹が立つんやろうな。

Y木:たしかにな。

S原:途中で、学校の屋上で、横一列にならんでボレロを演奏する場面があって、ここはきれいに撮れるなあ、とちょっと見直してたら。そこに主人公のモノローグが重なる。「これだ…!この感じなんだ!」…て、そんなモノローグ要りません。観てたらわかるっちゅーねん!

Y木:ザ・邦画って感じやな。

S原:いろいろあって、みんなでコンクールを目指すんやけど、コンクールのまえに、人間関係がギスギスして登場人物が悩む場面があるねん。定番やけど、なぜか挿入歌は中途半端に明るいJ-POP(笑)

Y木:大人の事情やろな。それでクライマックスは、どうなるの?見どころみたいな場面はあるんやろ?

S原:大したことなかった。結局、音楽が盛り上がるとエッチになるという設定だけの映画やった。なかなかこういう映画は難しいよねと思う反面、おいおいもうちょっと撮り方があるやろっと突っ込んでしまう映画やったなー。ということで、みなさん。ブラバン映画ならなんでもOKな人、安良城紅のファンは楽しめるでしょう。それ以外の人は、やっぱり厳しいです……