あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

1960年代の邦画を観てみる!「弾痕」(1969)の巻

弾痕 [DVD]

S原:今回は加山雄三

Y木:おお、和製フィルムノワールやな。

(あらすじ)

アメリカ諜報局極東派遣員・滝村憲(加山雄三)。彼に流れているのは日本人の血。しかし、彼は生まれ育ったアメリカのために働いている。彼の仕事は、生きた標的を撃ち抜くこと。困難な任務を遂行することが、彼のプライドだった。しかし、米軍基地を襲撃したテロリストの死を目の当たりにした事から、苦悩が深まってゆく。「何故、アメリカのために日本人の自分が血を流さねばならないのか…」。滝村が銃を捨てる事を決意したその時、国際的な武器商人の魔手が迫っていた…!

 

S原:これ、期待して観たんやけどな。

Y木:どうやった?

S原:これはなー、うーん。どうもなあ。

Y木:いきなり歯切れが悪いな。

S原:まず内容がわかりにくいねん。こういう映画って、スタイリッシュで雰囲気が大事やん。映像もそうやし、編集や音楽もそう。でも、そういうのを楽しむには前提があるんねん。

Y木:前提?

S原:どういう話なのか?どういうキャラクターなのか?をハッキリとさせないといけない。ゴルゴ13も、大藪春彦もそうやん。ライフル銃を撃つ場面をかっこよく撮りやかったんやと思う。でもその前に、「なぜ拳銃を撃つのか」「どういう目的で誰を狙っているのか」を観客にわからせないとな。

Y木:おまえの理解不足なんちゃうの?

S原:そうかもな。でも、2回観る気になれんなー。あらすじは上の通り。加山雄三は寡黙なスナイパーやから、脇役がセリフで「説明」する。序盤に出会った大地喜和子も、いろいろと「説明」する。でも、説明すればするほど、どんどん映画の面白さがなくなっていく……

Y木:そうなんか。単純なストーリーちゃうの?

S原:そのはず……なんやけど(苦笑)どうも、製作側に「いまの日本はこのままで良いのか」という気持ちがあるみたい。バックボーンとしてそれを暗示するのはええねんけど、こういう映画に観客が何を求めるのか?を全く分かっていない。

Y木:今回は厳しいな。

S原:なんとなくスタイリッシュに撮っておけばええんやろ、という軽い気持ちがアリアリやねんなー。

Y木:監督(森谷四郎)のセンスがないだけちゃうの?

S原:そうなんかな。加山雄三も全然魅力的じゃないし。とにかく暗い変な映画やった。

Y木:カッコよいアクションとか狙撃のシーンはあるんやろ?

S原:少しだけある。でもどうもスカッとしない。これは外したら一大事というのもないし、難しい標的を狙撃を工夫するとかもない。もちろん報酬をスイス銀行に入金されることもない。

Y木:それはゴルゴやろ。

S原:あと、多くの人が突っ込んでるけど、シュールな場面やセリフが時々でてくるねん。「お味噌汁が好きですか?」と延々と街頭インタビューを受けたり、主人公にむかってヒロインが「石は話すのよ」と説明したり。

Y木:わけわからんけど。

S原:こっちのセリフやって。そのくせ、アメリカ人が加山雄三に向かって「この黄色いブタめ!」って罵るし、加山雄三が心を入れ替えるシーンは、心の中をすべて言葉で説明するねん。間接的な表現と直接的なセリフのバランスが悪いから、まったく映画に集中できなかった。

Y木:最後は?

S原:ヒロインと南米に行く約束をして、その埠頭に行ったら、アメリカ人(米軍?CIA?)が待ち伏せしていて、ヒロインの目の前でハチの巣にされて、おしまい。

Y木:まあ、この手の映画のラストはそういうもんやろ。

S原:良い映画やと、悲壮感とか哀しみを混じるねんけど、ただ単に唐突に撃たれただけやった……

Y木:言いたいことは分かった。でも好みの問題のような気もするけどな。

S原:さあ、みなさま。加山雄三が暗い演技をしていて、そこはレアかもしれませんが、いわゆる「犯罪映画」「狙撃映画」としては、うーんやっぱり僕にはおススメできません。カラッと漫画チックに出来ない時代だったのでしょうか。一度観ようかな、と思っている人はまずはレンタルしてくださいませ~!

 
 
 

*1:ここに脚注を書きます