あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

1960年代の邦画を観てみる!「御金蔵破り」(1964)の巻

ソース画像を表示

S原:今回は、乾いたタッチの時代劇サスペンス!

Y木:へえ、昔の邦画では珍しいな。

(あらすじ)

取られる首は一つだが、盗る小判は三萬両!天命知らずの悪党が、江戸城狙って大ばくち! 貧しいがゆえに、権力に媚びねばならぬ侍稼業を棄てた、旗本くずれの緋牡丹の半次。長年、江戸城内の御金蔵破りを夢見ていた、老盗の煙りの富蔵。“権力を笠にきる人々の度胆を抜いてやろう”という共通の思いを持つ二人がコンビを組み、将軍お手つきの中臈の手引きで、江戸城御金蔵を襲撃する。奇想天外な方法で成功するにはしたが、さてその後が・・・!?

 

S原:「地下室のメロディー」(1963)ってあったやろ?

Y木:あージャン・ギャバンアラン・ドロンの映画。

S原:あれを日本の江戸時代に翻案しています。結論から言うと、この映画はなかなか面白い。

Y木:そうなんや。

S原:今回は、ネタバレで話しますので、観るつもりがある人はここで読むのを止めてください。主演は、片岡千恵蔵大川橋蔵。そのままジャン・ギャバンアラン・ドロンの立ち位置です。この2人が組んで、江戸城から御金蔵(ごきんぞう)を盗むという大胆な計画をたてます。東映映画やねんけど、いわゆる東映ヤクザものの雰囲気とは違うのよ。

Y木:大金を盗むんか。どうやって盗むか?という部分と、果たして成功するのか?という部分が面白さになるわけやろ。ルパンみたいに。

S原:そうです。でもルパンみたいなスマートさはないねん。フランスの現代映画を江戸時代劇に翻案するから、多少の違和感はあります。その辺を気にしたら観れないかもな。それでも、かなり工夫していて今観ても十分に楽しめると思うんやけどな。

Y木:結局は泥棒するんやろ。どうやって盗むの?

S原:江戸城(千代田城)の奥深くの金庫にあるので、堀もあるし厳重な警戒で普通では近づけない。盗ったとしても、どうやった運び出すのか?片岡千恵蔵大川橋蔵はいろいろと頭を捻る。そして大川橋蔵は、花火屋の娘(朝丘雪路)に目を付けます。朝丘雪路は、御中﨟(おちゅうろう)に出世したところやねん。

Y木:おちゅうろう、って何?

S原:映画では「ごちゅうろう」と呼んでいた気がするけど、詳しくはわからん。簡単にいうと大奥の偉い人らしい。将軍に気に入られてるから、かなり江戸城になかに精通している。大川橋蔵は、熱烈に迫ったり逆にすかしたりして、だんだんと朝丘雪路の心をつかんでいく。ある日、「城の中にいるおまえに会いに行きたい」「なので、見張りがどれくらいいるのか教えてくれ」と話を振る。朝丘雪路は、城内のことを話す。それを、ふすま一枚隔てた隣の部屋で、片岡千恵蔵が平面図とともに書き込んでいく。この場面はクールで、すごく良いよ。

Y木:そのへんは、確かにフランス映画っぽいな。要するに、女を利用して計画を練ると。

S原:そうそう。ほかにも、同時並行で、盗んだ千両箱を船で運び出すための準備をする。で、いよいよ決行の日がやってくる。

Y木:ほう。

S原:上手いのは、ある程度、事前に半分くらい計画を観客に説明してるねん。でも半分は、映画が進んでいくなかで、観客が気付くような仕組みになっているのよ。「へえ、そういうことか!」と思うわけ。例えば、決行日は8月1日。この日は江戸の花火大会(江戸開府の祝のため)があるねん。片岡千恵蔵が、花火の打ち上げ音とともに、金庫のカギを火薬で吹っ飛ばすのよ。ここはカッコよかった。

Y木:花火大会の日か。考えたなあ。

S原:無事に大量の千両箱を隠す場所が意外なところやねん。江戸時代で便所(厠)の汚物を回収してた時代やろ。千両箱をその汚物回収の樽にそっと隠す。そうしたら、本人たちが持ち運びしなくても、係の人間が運んでくれるやん?

Y木:なるほど。

S原:まあ、他にもいろいろとあるけど、こんな感じでは話はすすみます。

Y木:最後はどうなるの?「地下室のメロディー」と同じか?

S原:「地下室のメロディー」では、せっかく盗んだお金を自分たちのものには出来ないやん。ラストでは、プールに沈めたカバンから大量の紙幣がぶわ~と出てきてしまうやろ。

Y木:騒いだら自分たちが犯人だとバレるから、なすすべもなく、それを(気付かない顔で)見るしかないという感じがよかったよな。あんなラスト?

S原:似てるけどちょっと変えてます。大量の千両箱を船で運ぶ。海岸でそれを心待ちにしている片岡千恵蔵大川橋蔵。もう見えるところまで船がきています。あと少しで大金が自分たちのものになる。ところが、船底に穴が開いていて徐々に船は沈んでしまう。それをみているしかない2人。船がちょうど海に沈んだあとに、幕府の役人が近づいてくる。「昨晩の御金蔵窃盗犯はおまえらだろう」と凄む役人に、「ただ海を眺めていただけだ」とクールに答える。おそらく、だれも海底に沈んだ大金を引き上げることは出来ない。そんな場面でおしまいです。

Y木:へえ。日本映画っぽくなくて良いやん。

S原:良いよ。ただ「地下室のメロディー」のほうが、乾いた感じがするし、ラストの衝撃は上やと思う。だけど、これも十分に面白いです。

Y木:今回はおすすめやな。

S原:はい。おススメです。さあ、みなさん。音楽の使い方も変わっていて異色の時代劇ですが、御用金を盗み出す後半は、わかっていてもドキドキします。東映ならではの集団殺陣も堪能できます。昔の邦画なんか観る気がしない、という人もいると思いますが、これはイケます。サスペンス好き、時代劇好きならマストバイですよ~!