あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「メッセンジャー」(2017)の巻

メッセンジャー [DVD]

S原:今回は久しぶりにこんな感じのSF!

Y木:驚愕の結末かー。

(あらすじ)

近未来のアメリカ。NASA土星の衛星タイタンから発せられた電波を受信した。さらに類似の2種類の電波が海王星周辺からも発信されていることを確認。3つの電波の周波数を組み合わせると和音となることを発見し、何者かが意図的に作り出したものであると考え、国防省はロジャー・ネルソン大尉に調査を命じる。タイタンさらに海王星の衛星トリトン準惑星エリスをめぐり発信源を回収して帰還する10年にも及ぶ極秘任務に妻アビゲイルは反対するが、人類史上最初の地球外生命体との接触の可能性もあるこのミッションをロジャーは受け入れる。地球を発って542日目、ついに最初の目的地タイタンへ接近するが、そこで待ち受けていたのは人類の想像を絶する光景だった…

 

S原:これはなあ……

Y木:静かなSFやろ。アクションとか派手なVFXがない感じの。

S原:そうやねん。静謐というのか雰囲気を重視した映画なんはわかるねんけど、なんというか展開がスローでなあ……

Y木:眠くなるやつな。惑星ソラリス」(1972)とかあんな感じ?

S原:あれとか「2001年宇宙の旅」(1968)とかを意識したんかもしれんけど、あんまり上手くいっていないです。なんていえばええんかな、こういう映画って「説得力」が要るやん?

Y木:まあな。

S原:観客が当然に感じる「なぜ?」に対して、応えないとあかんやん。この映画は、それにすべて失敗しています。

Y木:ああ、それこそキューブリックみたいに明確に回答を示さず、観客の解釈に委ねるみたいに作りたかったんちゃうの?

S原:それにはあまりにセンスと才能と製作費が無さ過ぎます。まず、なぜ主人公は1人で重要な任務に行くのか?がわからない。極秘任務といっても、「人類史上最初の地球外生命体との接触」があるかもしれへんねんで?複数人のプロジェクトで行きなさいって。トラブルだってあるんやから。

Y木:それはまあ、1人でも大丈夫なくらい優秀で勇敢な宇宙飛行士やったんやろ。

S原:いーえ、主人公はバカです。勉強もできません(たぶん)。だって、途中でタイタンで「球体」を見つけるねんけどな。すごい大事なもんやん?人類にとってすごい発見やん?それをですねえ、素手で触りまくります。

Y木:いやそれは、素手で確認する必要があったんやろうな。

S原:いーえ、単に自分が触りたかったからです(本当)。もちろん素手で触って地球の基地から怒られます。しかも、「やめとけって」と注意されてるのに、何回も触ります。

Y木:それはそのー…研究のために必要と判断したんやろ。

S原:致命的なのは、宇宙船のセットがチープすぎること。こういうSFって細部をきちんと作って、説得力を出さなあかんやん。小さな部屋がひとつあるだけで、宇宙船のAIと会話するだけ。なんとなく汚れてるし、場末の商社のスタッフ休憩室かよ!

Y木:たぶんそうやなあ……あーそうそう。リアルさを追求したんやろ。「エイリアン」(1979)でも宇宙船の内部が汚れてて、労働する場所って感じやったやん。

S原:そうなんかなあ。この主人公は奥さんがおるねん(子供はいない)。宇宙に行くときも、その奥さんの気持ちを確かめずに「まあ行ってくるわ」「ちょっと待っとって」という感じで宇宙に行くねんで。片道5年やで?

Y木:往復10年……ギリギリ待てる。長期出張やと思えばギリOK。

S原:すごいのはラスト。宇宙船のコンピューターで計算したら、ここから38年かかってたどり着く場所に、メッセージの発信源があると分かる。主人公は、勝手にそこへ向かいます。地球の基地はもちろん許可しません。でも自分の勝手で行きます。もちろん、奥さんを捨てて。「きみは、ぼくを忘れておくれ」「はじめから君と結婚するんじゃなかったわ」「メンゴメンゴ」って。

Y木:それは奥さんのためを考えて、やろな。戻ってこれない夫を待つわけにいかんやん……って、ダ――――――――!

S原:なんやねん。

Y木:なんで、おれがこんな映画にフォローせなあかんねん!

S原:誰も頼んでないがな。まあ、退屈で凡庸な映画やったよ。

Y木:見どころというか、肝心の宇宙の場面はどうなん?

S原:そこはちょっと良かった。基本的には綺麗なんやけど、ところどころ80年代風やしな。でも、いまさら宇宙の特撮がかっちょいいねん!とかは売りにならんやろ?

Y木:まあな。

S原:さあみなさん。ほとんど何も起こらない、というか何かが起きても全然観客の心は動かない不思議な映画ですが、よく考えれば実際の宇宙旅行もこんな感じなんでしょうね。退屈しのぎに大量のB級映画(DVD)を詰め込んで、さあ無限に広がる大宇宙へレッツラ・ゴー!