あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ぶっ飛んでる映画特集!「スペース・インパクト」(2006)の巻

スペース・インパクト [DVD]

S原:さあ、これはメガトン級ですよ~!

Y木:いやー、もうタイトルとジャケットで終わってるやん…

 (あらすじ)

惑星破壊兵器を開発した巨大コロニーが地球を破壊したことにより起こった大規模な宇宙戦争を描くスペースアクション。銀河系全域に進出した人類。資源獲得のために建設された巨大コロニー「K3」と「プレアデス」の二大勢力は、紛争を繰り返しながらも銀河系のパワーバランスを保っていた。ところが、惑星破壊兵器の開発を成功させた「K3」が、自らの故郷である地球を破壊したことで、紛争は大規模な宇宙戦争に発展してしまう・・・

 

S原:昔、「サルまん」(サルでもわかるまんが教室)ってギャグ漫画があったやろ。あのなかで、相原コージと漫画の新しいアイデアを相談しているうちに、竹熊健太郎が延々と壮大なスケールで複雑な設定のSFストーリーを語りだして収拾がつかなくなる…っていうネタがあったやろ?

Y木:あーあったな。

S原:あれをしたのが、この映画やねん。しかもネタじゃなくて、マジで作ってます。

Y木:うわー…

S原:この映画は、お酒のみながら観たんやけど、はじまって10分くらいでトリップしそうになったわ(笑)すぐに観るのを止めて体調を整えて後日に再鑑賞したのよ。

Y木:どういうこと?

S原:要するに、設定に凝りに凝ってるねん。それが全く理解できない。80分くらいの映画なんやけど、3時間くらいに感じる(笑)とにかく、上手くストーリーの中で(観客に)理解させる手法じゃなくて、全部セリフやナレーションで解説する。よくわからんままに映画が始まって、よくわからんままに話が終わる…めちゃくちゃ斬新な手法やで。

Y木:下手なだけやろ。

S原:映画の開巻から飛ばしてます。映画が始まるといきなり「歴史は繰り返される…」という意味ありげなナレーションのあとに、モノローグが流れます。「私の名はアイヴァ・シュライク。プレアデス第5コロニー出身。地球暦2135年生まれ。人類遺伝子レベル9のヒト階級に属し、銀河標準暦で932歳になります。わたしに残された記憶は、2820年の『人類大追放』以降、消滅を免れた唯一の記録です」

Y木:……いきなりの先制パンチやな(苦笑)

S原:ほんまに、何の予備知識もないまま観たから、頭を鈍器でガツンと殴られたような衝撃やった(笑)つづいて、「人類は、地球と呼ばれる星に生まれ、記憶力と知性を発達させました。21世紀、地球は際限なく寿命を延ばし、人口爆発の危機にありました。周辺の恒星系に資源コロニーを建設。遺伝子操作で尊大な性質が強まり、紛争が頻発していました。2137年地球を離れプレアデス星団第5コロニーに移住。わたしたちは運が良かった…」このあと、地球がちゅどーんと爆発します。

Y木:……意味が分からんけど、まあええわ。

S原:続いて「私達の星は壊滅。勢力争いが激化する中、謎の生命体“ウォッチャー”が出現。戦乱を収束させました。ウォッチャーは超空間移動ゲート技術を提供。人類は時空の壁を越え、銀河系全域に進出したのです。間もなくウォッチャーは姿を消しました」

Y木:……えーと、ウォッチャーが敵なんかな。

S原:「宇宙では戦争が再発。私は命からがら逃げ延び、愛する母は戦い続けていました。最後まで残ったのは私の故郷“プレアデス5”と、鉱工業用コロニー“K3”。これは私の母であるマーラ・シュライク大佐の勇気ある戦いの記録です」

Y木:……えーと、母親の話?

S原:ここからお待たせの宇宙での戦闘機のバトルシーンです。当然、Xウイングはでてきませんが、一応、戦闘しているみたいです。5分くらいです。

Y木:短っ!

S原:たくさんの戦闘機がドッグファイトしてるはずねんやけど、1人の操縦士が映っていて、あとは無線で声が聞こえるだけ。宇宙の画面に声だけ被る省エネ演出です。「多数の生命体を確認」「攻撃態勢に入れ」「いやな感じです」「助けてください、副艦!」「やられた!」「うわー」「スミギンがやられました」

Y木:だれやねん、スミギンって。

S原:そのあいだもナレーション付きです。「母から学んだのは感情を押さえて生きること…戦隊の全滅が母の心を閉ざしました。罪の意識が戦いの原動力でした。私の母マーラが背負った耐え難い孤独…親しい友を失ったのです…」

Y木:…ごめん、ついていけへんねんけど。

S原:誰もついていけません。結局、最初のよくわからない戦闘で、主人公の母親は、多くの部下を失ってしまったようです。さらに続きます。「提督と母は仲が悪くなり、その原因が12年前にあることを私は後で知りました。母は因縁の記憶を消しています…」そして哀愁たっぷりと「ああ、母に会いたい…マミー…」

Y木:そんなこと言われても、知らんがな。

S原:つぎは、宇宙船群が、超空間移動に失敗する場面になります。観ている人はさっきの戦闘シーンの続きなのか、べつのエピソードなのかよくわかりません。そのあいだにも観客の神経を逆なでするように「逆戻りだ」「やられた」「ばらばらに逃げろ」「従属ビームを解除せよ」と声が宇宙の画面に重なります(人は映らない)

Y木:なんやねん、従属ビームって。

S原:ナレーション「母が信頼していたのは、伍長のウーソルでした。戦時の人員不足で技術兵に任官。戦闘には不慣れでしたが、危険を避ける能力に長けていました。彼は母が信じていた少ない友人です。彼には…予知能力があるのかもしれない」そして、2人が脱出する場面になります。

Y木:やっと、話がすすみだしたな。

S原:そのあと、主人公の母とウーソル伍長は脱出ポッドで宇宙空間をただよいます。そこにまたナレーション「コンストラクト人の惑星破壊技術は恐れられていました。不可能とされていた反物質弾頭で、地球を破壊したのです。それが戦乱を引き起こしました。惑星破壊に成功したのは、この一度だけでした。しかし戦乱の間もコンストラクト人は研究を続けました。そして究極の破壊兵器を完成させたのです。もう平和は戻りません…」

Y木:えーと、要するにすごい兵器があるってこと?

S原:やがて本部より、ある惑星に行けという指令がきます。「42時間後に惑星破壊ミサイルが発射されるので、それを阻止せよ!ちなみに(一緒にいる)ウーソル伍長は、二重スパイであるから始末せよ!」それを聞いた主人公・母は、ウーソル伍長の頭に思いっきり鈍器でゴツン!と殴ります。

Y木:え、殺してしまうんか。

S原:でも、伍長は死なずに失神するだけ。ナレーション「伍長の頭蓋骨は、とても丈夫でした」

Y木:ギャグかい。

S原:さて、その惑星に辿り着いて、主人公・母のひとり旅が始まります。ここまでが約18分。

Y木:うわ、だるー…

S原:ここからも延々とナレーションは続くけど、もう面倒やから省略します(笑)主人公・母は、砂漠のような惑星をゆったりと歩く主人公の母。ここからしばらく崖に腰かけたり、夕陽をバックに歩いたりする旅番組というか旅サラダそっくりになります。突然、空から隕石(?)が落ちてくる場面がありますが、隕石の説明はありません。

Y木:ナレーションだらけやのに、そこを説明しろよ。

S原:そこで、突然体がぴかっと光っているオジサンが出てきて、主人公・母の耳たぶに接吻します。

Y木:耳たぶに接吻…?…というか、そのオジサンは誰?

S原:説明ありません。

Y木:だから、そこを説明しろって!

S原:また砂漠を歩く場面が続きます。旅サラダです。突然、裏切り者だった伍長が襲ってきます。とっさに「戦闘モード」に変形する主人公の母親。ピキーン!かっちょいい効果音が鳴ります。

Y木:へえ、すごいパワーが出るとか?

S原:いや、すごい「低速」になるねん。だから大の大人男女が、ゆっくりとパンチをだすだけ。信じないかもしれないけど、これ、ほんまです。

Y木:なんやねんそれ。そんなアクションシーンは見たことないで。

S原:これでまだ30分しかたっていません。だれも興味がないやろうから、かなり話を飛ばすと、主人公は弾道ミサイルの発射を阻止しようとします。それをおじさん(伍長)が邪魔します。それがなんとなく続きます。主人公の母が来ているボディスーツのバッテリーが4%になったりしますが、とくに影響はありません。

Y木:食べ物は?

S原:砂漠に生えているナスビを食べます。

Y木:ナスビ…

S原:これ、ほんまです。また、旅サラダのロケが続きます。主人公・母が湖でリフレッシュしているときに、溺れかけたりします。じつは、カナヅチなのです。

Y木:知らんがな。あのー、悪いけど、もっと省略してくれる?今回は、かなり長いねんけど。

S原:ついに、秘密基地をみつけます。基地の周辺には、かっちょいいい人造人間が警備しています。あの「バトルトラック」(1982)の主人公(ハンター)のような恰好をしています。なかなかデザインはナイスです。

Y木:お前、好きやなあ…「バトルトラック」(苦笑)

S原:この人造人間はパワーはすごいんやけど、なぜか視力がすごく悪い(笑)なので、崖から石をぶつけて、やっつけます。それで、勝手に人造人間の武器を自分の手に付けて、敵地で少しだけ暴れます。そうこうしているうちに、弾道ミサイルは発射されてしまいます。あわてて主人公・母は宇宙船に乗って、追いかけます。

Y木:追いつかへんやろ。

S原:追いつきます。

Y木:…(ため息)

S原:いろいろあって、惑星がちゅどーんと爆発します。そのあと、過去のエピソードがあります。

Y木:え?ここで、過去の話?

S原:たぶん意味はありませんが過去の話を聞かされます。母親が恋に落ちる話(相手はぴかっと光ってたおじさん)とか、結婚して2人で旅行する話とか、結婚後に旦那が浮気してショックを受ける話とかがあります。渡辺淳一のメロドラマみたいです。

Y木:浮気の話…

S原:ちゃんと、旦那がべつの女性とチョメチョメしている場面もあります。

Y木:いや、そこは省略しろよ。

S原:そのあと、やっと主人公が登場。宇宙船で男と話します。記憶装置の故障(?)で6900年も、時空をさまよっていたと言い訳します。

Y木:えーと、誰と話してるの?

S原:わかりません。相手の男は「わたしは遺伝子改良したから、強いんだぞ!」と威張ります。

Y木:なんで、そうなる…?

S原:威張った男は、主人公にキックされます。そのあと、宇宙船のシステムの故障(?)で、主人公がひとりになります。

Y木:ほんまに訳が分からん…これで終わり?

S原:まだ続きます。ここからがスゴイ。ナレーションをしていた主人公(アイヴァ)は、人類最後の生き残りとなってしまいます。そこに「霊」がでてきて、会話が始まります。じつは「霊」は、物質を捨てて精神体となったウォッチャーでした。そして、アイヴァとウォッチャーとの哲学のような会話が続きます。「宇宙の物質的世界はとうに終わっています…」「私は生きている」「でも…あなたも物質にとらわれています。物質は、その根源に返るとき…崩壊し再生するのです。宇宙は消え去り…よみがえります」意味はわかりませんが、なんか崇高な感じがします。あの埴谷雄高の「死霊」のような会話の応酬です。

Y木:うそつけ。

S原:主人公は「わたしには1000年以上の人類の記憶があるのよ。もっと生きれば、役に立つわ。だからもっと生きたい!」と主張しますが、霊の返事は「物質から放散された宇宙の種…物質は死にますが、宇宙は…ふたたび生まれるんです…」

Y木:…答えになってないやん。

S原:かみあわないまま会話は続きます。「希望があります。あなたにも…」「いやよ」「アイヴァ、信じるのです。信じて…!」

Y木:えーと…何を信じるの?

S原:突然、主人公はなにかを悟ります。「ちょっと待って!私も行くわ!」と覚悟を決めて、宇宙船で飛び立ちます。

Y木:えーと…どこへ行くの?

S原:そして、宇宙(?)が爆発します。最後の主人公のナレーション「覚えておいてください。私たちが、この世界をどのように生きたのかを…」おしまい。

Y木:…いやー、覚えておきたくないなあ…(苦笑)それにしても、ちょっと今回の映画はひどすぎやろ。

S原:うん。なかなかぶっとんだ映画やった(笑)難解なくせに底が浅い。ナレーションだらけやのに、全然わからない。登場人物がなにをしようとしているのかわからない。

Y木:はー(ため息)…こんな映画もあるんやなあ。

S原:ほんまに、まだまだ世の中は広いで。出来が悪いとかじゃなくて、こんな複雑な設定を考えて、わけのわからん映画を作るヤツがおるんやからなあ。

Y木:それを観ているおまえも、同じレベルやけどな。

S原:さあ、そういうわけでみなさん。できるだけ、わかりやすく解説したつもりですが、僕にはこれ以上は無理です。なかなか出会えないレベルで破綻した映画ですよ。気になった人は、ぜひトライをしてくださーい!