Y木:はいどうも~。
S原:ワゴンイッチマンです。よろしくお願いいたします。
Y木:まあね、世の中にいろいろと興奮することあると思うんだけどね。
S原:うん。
Y木:レンタルビデオ屋さんに行くのが、いちばん興奮することだと思うんだよね。
S原:間違いないね。
Y木:あら。昨日の夜まで何もなかったのに、急にレンタルビデオ屋さんが出来てるな。興奮してきたな。ちょっと入ってみようか。ウィーン。
S原:いらっしゃいませ。
Y木:あーどうも。ここレンタル屋さん、出来たんだ?
S原:はい。お客さんは、ここは初めてですか?
Y木:うん、そう。
S原:ははははは。
Y木:なに?
S原:いや、可笑しくって。
Y木:なにが?
S原:だって、この店は今日オープンで、お客さんが初めて入ってきた人ですよ。初めてなのは、当たり前じゃないですか~。
Y木:うるせえよ!じゃあ、「初めてですか?」とか聞くなよ!え?そうなの?おれがはじめての客なの?
S原:はい。なんか、みんな敬遠するんですよね。やっぱり、入り口にで大きなアダルトビデオのポスターを貼ってるからですかね?
Y木:やめろよ、そういうのは!
S原:でも、あれ白石ひとみなんですけどね。
Y木:おまえ好きだな、白石ひとみが。どうせなら、流行っている娘のポスターにしろよ。同じ白石でも、白石麻衣とか流行ってるだろ。そういうポスターを貼れよ。
S原:お客さん、まだ白石麻衣はAVに出てませんよ。
Y木:分かってるよ!例えばの話だろうがよ。というか、「まだ」とか言うなよ。秋元康に怒られるぞ。
S原:まあどっちにせよ、アダルトなポスターは止めたほうがいいですかね?
Y木:やめたほうがいいよ。信長書店と勘違いされるぞ、おまえ。
S原:お客さん。
Y木:は?
S原:信長書店は、アダルトグッズも扱ってますが、この店ではそういうエッチなものは扱ってません!
Y木:どうでもいいわ!おまえがアダルトのポスターの話をするから、こうなっちゃうんだろ!まあいいよ。ここはアダルト専門の店じゃないのね?
S原:はい。普通の映画も扱ってます。
Y木:あーよかった。さっき言ってたけど、この店は今日オープンなの?いや、偶然入ったんだけどね。そうかーオープンの初日に来たんだ、おれ。
S原:オープン記念キャンペーンとして、これ、みなさんに差し上げてます。
Y木:あ、なにかくれるの?ありがとう。なにこれ?
S原:すこし前に、南海キャンディーズの山ちゃんと結婚された方のDVDなんですけどね。
Y木:あー蒼井優ちゃんでしょ、知ってるよ。あの娘、かわいいよなー。おれ、結構好きなんだよ。
Y木:AV女優じゃねえかよ!というか、双子じゃねえよ。ボケ方が中学生みたいだな!
S原:お客さん、おもしろいですねえ。「中学生みたいだな」だって、はははは。
Y木:え、おもしろかった?
S原:はい。はははは!
Y木:あーそう。ま、べつに笑わそうとしてないんだけどな。
S原:ちょっと何言ってるかわからない。
Y木:うるせえよ!おまえが蒼井そらって言うからだろ。おまえ、山ちゃんに怒られるぞ。たしかに、蒼井優と結婚って聞いたときは、日本中の男性の70%が「え?蒼井そら、じゃなくて?」って突っ込んだんだけどな。いきなり、客にAV女優のDVDを渡すなよ。
S原:お客さん。
Y木:え?
S原:いまは、AV女優じゃなくてセクシー女優って呼んでもらわないと。
Y木:どうでもいいわ!AVはAVだろ!
S原:あー間違えました。蒼井そらじゃなくて、蒼井優のほうです。こっちのDVDです。映画です。
Y木:間違うなよ、いろんな意味で失礼だろ、もう。結局は、蒼井優ちゃんの映画をくれるのね?なにこれ?
S原:「鉄人28号 -実写版-」(2005)です。
Y木:やめろ!本人も消したい記憶だろ、こんな映画!というか、みんな忘れかけてるのに、わざわざ掘り起こすんじゃねえ。いろんな方面の人たちが傷つくだろ!
S原:そうなんですかね。
Y木:そうだよ。
S原:ぼくの感想としては、「マジで面白くなかった」ですけどね。
Y木:だからだよ!面白くないから、みんな忘れたいんだよ。もういいよ。なにか面白い映画ない?おススメの映画とか。
S原:どんな映画がお好みですか?
Y木:そうだなー。ほら、「隠れた名作」ってあるじゃない?みんな観てないけど、意外にイケる、みたいな。
S原:じゃあ、これですかね。
Y木:なにこれ?「ゼイリブ」(1988)?
S原:面白いですよ、それ。実は地球には宇宙人たちが来ていて、地球人のふりして住んでいるっていう映画なんすよ。途中でyoutubeみたいなケンカシーンもありますよ。
Y木:へえ、じゃあ、これを借りよっかな。
S原:えーと、ベータで大丈夫っすよね?
Y木:ベータなんか観れるわけねえだろ!DVDは置いてないのかよ!
S原:「ゼイリブ」は、ちょっとベータだけしか置いてないっすね。
Y木:おまえ、よくレンタル屋をやってるな。というか、なんでベータを置いてるんだよ。じゃあさ、ワクワクというかテンションがあがる感じの映画ない?あ、DVDで置いてあるやつね。
S原:DVDで、テンションが上がる映画……。じゃあ、これですかね。
Y木:「トレインスポッティング」(1996)か。あータイトルだけ知ってるけど、観てないんだよね。これ、どんな話?
S原:登場人物たちがドラッグをして、テンションがあがる映画です。
Y木:そういう意味じゃねえ!そういうテンションのあげかたじゃなくて!なんていうか、もっとこうワクワクドキドキ、というかさ。
S原:ワクワクドキドキですか。じゃあ、これはどうです?
Y木:なにこれ?「クリスチーネ・F」(1981)?
S原:はい。もう主人公がドラッグでボロボロになる話です。
Y木:えー……
S原:いや、主人公が可哀そうすぎてワクワクドキドキ❤みたいな。
Y木:言葉の使い方、間違ってるだろ。もういいよ。なんというか、ドラッグとかじゃくて、純粋というか無垢な感じの映画ってある?
S原:無垢な感じですか。じゃあ子供が主人公とか。
Y木:いいねえ。そういうのでおススメある?
S原:これなんか、どうですかね。
Y木:「マイキー」(1992)?知らないな。
S原:主人公がマイキーという子どもなんですけどね。純粋無垢というか素直なんですよ。
Y木:へえ。どんなストーリー?
S原:マイキーが大人を殺しまくるストーリーです。
Y木:気分悪いな、おい!やめろよ。そんな映画。
S原:いや、子どもなりに自分の欲望に「素直」と言えなくもないですよ。
Y木:そうだけど!そうだけど、やめてくれよ。そういうのじゃなくて、他にあるでしょ。そうだな、反対に人間の内面を描くとかあるでしょ?ちょっと暗めの映画ってあるじゃない?
S原:暗めですか……じゃあ、これですかね。
Y木:「ムーン44」(1990)?SF映画か。
S原:これ、「インディペンデンス・デイ」(1996)を撮ったローランド・エメリッヒ監督なんですよ。ちょうどハリウッドで成功する前の映画ですね。
Y木:マジで?すごいじゃん。え、この映画は暗いの?
S原:はい。それ低予算なんで、ずっと、画面が暗いままですよ。
Y木:その暗さじゃねえよ!
S原:暗すぎて、宇宙船とか飛んでる場面がよく見えないんすよね。変な煙も邪魔してるし……
Y木:もういいよ。疲れたわ。今日は、もうレンタルするの止めるわ。悪いけど、また来るわ。
S原:あのー、すいません。
Y木:え?
S原:この店、今日で閉店なんですよ。
Y木:いいかげんにしろ!