あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「モーターラッド」(2017)の巻

モーターラッド [DVD]

S原:今回はオートバイの映画!しかもブラジル映画

Y木:へえ。これ、好きな人にはたまらんジャケットやろな。

(あらすじ) 

イカーのヒューゴは、忍び込んだガレージからバイクの部品を盗もうとするも家主に見つかってしまう。あと少しで撃たれそうになるところをショートカットの美女・パウラに助けられた彼は、兄や仲間たちと出かけたツーリングにパウラを誘い、共にバイクを走らせることに。楽しい時間を過ごしていたが、道中はぐれた仲間を探しに行ったヒューゴが見たのは、黒ずくめの集団が仲間の首を斬り落とす所だった。逃げても逃げても姿を現す謎のバイカー軍団に次々と追い詰められていく仲間たちは、生き延びるために報復を決意する。狂気の旅はいつまで続くのか!?そして、生き残るのは誰だ!?

 

S原:これはなー、なんとも感想が言いにくいなー。

Y木:B級アクションやろ?

S原:うーん。まず画面は結構ええ感じやねん。ほとんどモノクロームみたいな色調で、カット割りも凝っている。昔ぼくが観たらハマってたやろうな、と思う。

Y木:へえ。かっこいい感じ?

S原:そうそう。関西弁でいう「イキッてる」「いちびっている」感じ(笑)でも、肝心の話がものすごくわかりにくい。もう、痒い所に手が届かない感が満載やねん。

Y木:へえ。ストーリーは単純そうやけど?

S原:めちゃくちゃ単純。なのに、わかりにくい。思わせぶりな場面や、裏がありそうな設定がたくさんあるけど、全然説明をしない。しかも伏線もすべて回収せずに、投げっぱなしジャーマンやねんで!

Y木:わかったわかった。もうちょっと具体的に言ってくれ。

S原:主人公(ヒューゴ)は、バイク乗りやねん。主人公はガレージに忍び込んで部品を盗もうとするが、家主に見つかる。あやうく射撃されそうになるが、ショートカットの女性(パウラ)に助けられる。このパウラ役の女性がかなり良いです。ハッキリ言って、ぼくのストライクですよ、あなた。

Y木:おまえの好みなんか、どうでもええわ、

S原:で、主人公はバイクの部品を扱っているときに、手のひらにヤケドをしてしまう。ヤケドの跡は、思わせぶりに何度か出てくる(他の人にも同じヤケドがある)けど、最後まで説明はありません。ちなみに、ここまでほとんどセリフなしです。いろいろあって、主人公は、バイク好きの兄や仲間たちとツーリングに行きます。あの女性も誘います。ルンルンで楽しみます。大きな湖があって、崖から飛び込んで遊びます。ビビって飛び降り出来ない男子がいて、からかわれるのが嫌なので別の場所に行きます。

Y木:中学生か。

S原:主人公は、いなくなった男子を探しに行きます。そこで、黒ずくめの集団(バイク乗りの集団)が仲間の首を斬り落とすところを目撃します。首チョンパです。スパーンと気持ちよく首が転がります。

Y木:おお。

S原:黒ずくめの集団がちょっとかっこいいデザインでな。あの名作「バトルトラック」(1982)の主人公(ハンター)を想起させます。

Y木:名作ちゃうわ。で、どうなるの?

S原:主人公は驚いて逃げます。黒ずくめのオートバイ軍団は、追ってきます!逃げる主人公!ああ、なんということでしょう、主人公のバイクのエンジンがなかなかかかりません!

Y木:えらい古い演出やな。

S原:やっとバイクに乗れた主人公は、仲間とともに必死で逃げます。黒ずくめ軍団は執拗に追いかけてきて……こういうストーリーです。

Y木:まあ普通ちゃうの。

S原:普通のはずなんやけどな。やたらと凝った撮り方をしたせいで、なんかゴタゴタして全然盛り上がらない…崖の上に黒ずくめのバイク野郎たちが、戦隊ものみたいにジャーンと立っています。怖くなって逃げようとした主人公が、もう一度振り返るとバイク野郎たちはいません。こういうカットが4回くらいあります(笑)そもそも、こういう映画の魅力って「正体不明で、理由もわからないまま、主人公たちが追いかけられる恐怖」と「それらから逃げ切る、もしくは逆襲するカタルシス」やろ?

Y木:そやな。

S原:たぶん。監督はそんなものに興味がなくて、画面のかっちょよさや雰囲気を重視したんやろな。自分の撮りたいように撮っている個性派監督と言えなくもないけど、一応お客さんにみせるもんやから、もっとストレートにサスペンスで盛り上げて欲しかった。いくら綺麗なデザインのマッチでも、擦ったら火が出ないと困るってことよ。

Y木:よくわからん例えやな。

S原:「未来世紀ブラジル」(1985)とか「アメリ」(2001)とか「シザーハンズ」(1990)とか、監督がこだわってて独特の映像美もスゴイけど、あの世界や登場人物をちゃんと表現してるから、より感動するわけやん。

Y木:まあな。

S原:いくら映像に凝っても、ちょっとなー。なんかお金のかかっていない「天国の門」(1980)みたいやった。

Y木:そのたとえはちょっと…(笑)で、追いかけられてどうなるの?

S原:ひたすら逃げてた。しかも、しょっちゅうバイクのエンジンがかからなくなる。これも4回くらいあったんとちゃうかな。そのあと、バイク仲間がバイクごと湖に沈められたり、丸焼けにされたりします。ほかに主人公が意味深な井戸(?)をのぞき込んで、なにかを感じる(?)変な場面があります。まるで村上春樹の世界です。

Y木:全然ちゃうやろ。で、最後はどうなるの?

S原:主人公と女性が、黒ずくめ軍団に逆襲しておしまい。

Y木:逆襲って?

S原:首チョンパです。

Y木:好きやなー、首チョンパ……

S原:最後は、意味深に小屋の奥(暗闇)に行く女性をジッと見る主人公のショットでおしまい。

Y木:なんか思わせぶりやけど、意味はないんやろうな。

S原:ありません。とにかく変な映画やったわ。

Y木:寓話性というか暗示とか比喩の表現ちゃうの?

S原:さあ。でも、黒ずくめのバイク軍団が襲ってくる映画を観るヤツねんて、中学男子マインドを持ってるヤツやん。そういう奴らの期待を裏切ってはいけませんよ。というわけで、ワゴンコーナーでみつけたらジャケットに惹かれる人もいると思いますが、踏ん張って購入はやめて下さいませ~!