Y木:おまえ、飽きずによくこんなん観るなあ。
S原:いやー今回の映画は……
(あらすじ)
ひょんなことから地球に不時着した2匹のエイリアンが、星ひとつを壊滅に追いやるほどの強靭な破壊力を持つ兵器を巡り、壮絶な戦いを繰り広げる。
Y木:しかし、他の映画もそうやけど、こういう映画っていつまでも作られ続けられるよな。
S原:やっぱ作り手側も好きなんやろな。もしくは一攫千金を狙ってるか(笑) こういう映画って、全体がショボいけど、エイリアンの造形だけはかっちょええ!とか宇宙船のデザインだけイケる!とか、そういう楽しみ方があるやん。
Y木:まあな。
S原:もうネタバレなんやけど、これはエイリアンが出てこないねん。
Y木:あーそう。散々、おまえにB級映画の話をきかされたからもう驚かんけどな。
S原:一応、エイリアンと称するオッサンは2人でてきます。1人は、メタボの中年男。もう1人はスキンヘッドの変な男。その2人がコスプレをしています。
Y木:コスプレかー、きついな。
S原:そのコスプレヤー2人が地球にやってくるねん。メタボは地球を滅亡させようとするけど、スキンヘッドが止めようとします。それだけの映画やった。こういう映画は単純でええねんけどな。そこを補完するデティールで面白くしないといけないのに、かなりスベッてたわ。
Y木:デザインとか特撮がしょぼいというわけやな。
S原:イエス。まず、最初に空飛ぶ円盤がやってきます。そのあとハロウィンの渋谷の夜みたいに男が地球をウロウロします。ヘルメットをかぶって、黒ずくめやねん。「処刑ライダー」(1986)って覚えてる?
Y木:あったあった!しょーもなかったなー!チャーリー・シーンがでてるやつやろ?
S原:そうそう。たしか、オリバー・ストーンが「くだらない映画にでるなよ!」という電話をかけたというエピソードがあるねん。「チャーリー、自分のキャリアをもっと大切にするんだ!」
Y木:まあ、怒られてもしゃーないやろ。でも、オリバー・ストーンも一応、気遣いをしてるんやな。
S原:その後、「お前が売れなくなっても構わんけどな。おまえがしょーもない映画に出たら、おれの「プラトーン」(1986)まで、しょぼくみえるがな!」って激怒したらしいで。
Y木:……器の小さい男やな。
S原:まあ、ぼくは「プラトーン」よりも、同じベトナム戦争が舞台なら「地獄の謝肉祭」(1980)のほうが好きやけどな。
Y木:あれ、たしか人肉のB級ホラーやろ。おまえも、オリバー・ストーンに怒られるわ。
S原:まあ、この映画に話を戻すと、B級感まるだしの衣装やった。一応、エイリアンは強い設定でな。軍隊が銃を撃っても跳ね返します。そのコスプレ野郎が主人公に出会います。
S原:ここの会話がすごいねん。
Y木:すごいって?
S原:コスプレ野郎が、主人公に地球の危機が迫ってると言う場面やねんけどな。コスプレ男は、主人公の車の前に仁王立ちします。「車から降りろ」「銃を下ろせ」。主人公は言います「なんだおまえは」
Y木:そりゃそうやろな。
S原:コスプレ男は、ぷしゅー!っとシュートヘルメットを外します。普通の地球人です。マイク・タイソンみたいなタトゥーシールが顔に貼ってます。
Y木:それで?
S原:コスプレ男「助けが欲しい」主人公「言葉が分かるのか?」コスプレ男「さまざまな言語の訓練を受けたんだ」主人公「ひどいケガしてるぞ」コスプレ男「そんなことより重大な任務がある」主人公「おれに?」コスプレ男「きみも困っているようだからだ。助けあおう」
Y木:助け合おうって…いきなり宇宙人に言われも困るわな。
S原:コスプレ男「オメガソートを探す。オベリスク型だ。わかるだろ?」
Y木:わからへんわ。
S原:主人公「オメガシート? なんのために探すんだ?」コスプレ男は、「明日の日没までに解除しないと地球人が滅亡する。これで止めるんだ」を言って、かっこよく金の延べ棒を出します。ピカー! と光る延べ棒。
Y木:なんか意味わからんけど。
S原:コスプレ男「協力してくれ」主人公「オーケー!わかった。仲間を増やそう」
Y木:オーケーじゃねえ!なんでその会話で信じるねん。
S原:まあそういう映画やったよ。
Y木:結局、どこから来たの?
S原:「遠くの星から来たんだ」
Y木:子供か。
S原:ほんまにそういうセリフがあるねんって!
Y木:もうええわ。話を省略してくれ。
S原:全体的には、まあまあの出来なんやけどな。いや、面白くないで?面白くないんやけどな。いかにもB級というポイントは許せる感じねん。この映画観て「なんで、もっとちゃんと作らへんねん!」って怒るヤツはおらんやろ?
Y木:まあ、そういうもんかな。
S原:だから、はじめからハードルを低くして楽しむ映画なんやけどな。この映画は、もうひとつブービー・トラップがあったのよ。
Y木:トラップ?
S原:鼻の下。
Y木:は?
S原:鼻の下!
Y木:だから、鼻の下がなんやねん!
S原:鼻の下が、長いの!でてくる俳優たちの鼻の下がやたらと長い。もしくは、長くないヤツは鼻の形がおかしい。もしくは、形がおかしくないヤツは鼻の穴がでかい。
Y木:どうでもええわ!
S原:ちゃうねんって。ほんまに鼻が気になって仕方がないのよ。絶対、監督は鼻フェチやと思う。これはもう観て確認してもらうしかないねんけどな。
Y木:いや確認したくないで、鼻の下なんか。
S原:とにかく映画に集中できない。新しい登場人物がでてくるたびに「今度はどんな鼻の下なんだろう?」と気になって仕方がない。禅智内供(ぜんちないぐ)かよ!
Y木:……え?
S原:芥川の「鼻」やろ!ちゃんと突っ込んでよ~!
Y木:知らんわ。
S原:で、鼻の下が気になっている間に、映画はいよいよクライマックスです。田舎の家のしたになぜか人類を絶滅させる装置があって、主人公たちは、金の延べ棒を持って止めます。そのあいだに、コスプレ男同士が戦って相打ちで死にます。
Y木:はあ……(ため息)
S原:ラストは、地球を救ったビッグイベントのあとなのに、風呂上りみたいな軽い感じで歩く主人公と女性。2人が接吻してハッピーエンドなんやけどな。ちょっとここは不満があるねん、
Y木:不満? ただのキスシーンやろ。
S原:いままで、さんざん「鼻の下」ネタで引っ張て来たんやで?最後に、男女が「ねえ、キスしたいけど……どうすればいいの? 鼻の下が邪魔にならないかしら?」って言いながらキスせなあかんやろ!
Y木:……え?
S原:「誰がために鐘は鳴る」(1940)やろ!ちゃんと突っ込んでよ~!
Y木:知らんわ! というか、鼻の下が長くてもキス出来るやろ!