S原:今回は、一部に信者を持つ押井守作品です!
Y木:好きな人にはたまらんジャケットやろな。
(あらすじ)
熱核戦争後の荒涼とした砂漠を模した、仮想空間<アヴァロン(f)>。どう猛な巨大モンスター<スナクジラ>の群れがうごめく無法地帯<デザート22>にやってきた、命知らずのプレイヤーたち。グレイ、ルシファ、カーネル、そしてイェーガー。飽くことなく「狩り」という名のプレイを続ける彼らの前に、伝説の終端標的(ラスボス)=<マダラスナクジラ>が姿を現した。圧倒的な強さの超大物を前に彼女たちは、やむを得ずパーティを組むことになる。連射される弾丸、乱れ飛ぶビームとミサイル、空を焼き尽くすファイヤーボール・・・かつてない激しい戦いの果てに待っていた、意外な結末とは!?
S原:押井守は、さすがに名前くらいは知ってるやろ?
Y木:うん。観たことないけど、一部の人たちが盛り上がっているのは知ってるで。
S原:そうそう。アニメファンはじめ一部に熱狂的なファンがいる人。映像センスがすごく独特でかっこいいカットが多い。アニメ監督としては優秀やと思うけど、実写ではちょっとな…(苦笑)そのせいか、SNS上でも評価が真っ二つ。こんなに賛否が分かれるのも面白い現象やと思う。
Y木:おまえとしてはどうやったの?
S原:うーん、やっぱりドラマ部分がなあ……
Y木:あかんかったんや。
S原:あかんというか、なんというか……マニア云々関係なく、あいかわらず映像美はスゴイと思う。衣装やロケも凝っているし、VFXもまあまあとちゃうかな。黒木メイサ、菊地凛子、佐伯日菜子の3人が出てくるねんけど、3人ともすごくカッコよく撮られている。3人ともアニメのキャラそのものやん、とつっこむ人もいると思うけど、こんなに女優を上手く撮るだけでも、スゴイとは思う。
Y木:へえ、やっぱり映像はスゴイんや。
S原:でもなあ…やっぱりドラマというか物語というか演出が凡庸すぎる。そのくせ、分かりにくい部分があるから余計にイライラする。簡単に言ってしまうと、映画でなく、かっこいいMV(ミュージックビデオ)とかイメージ映像集に近いかな。
Y木:あーその例えで分かった。
S原:この人の実写映画を観てるとすごく歯痒い。「あー、かっこええショットやのになあ…なんか燃えへんなあ…」って(苦笑)少し前に、マイナーな日本映画20連発ってしたやろ?
Y木:あー全然反響を呼ばなかった企画ね(笑)
S原:みんな、あそこまで興味がないとは思わんかったけどな(苦笑)まあ、それはええとして、あそこでも語ったけど、やっぱりキャラクターが良いと、映画は面白くなるねん。この映画ではそれと反対。
Y木:ん?さっき、女優は良いって言ったやん。
S原:残念ながらかっこよく撮られてるけど、魅力的なキャラクターじゃない。
Y木:なるほど。
S原:何度も言うけど女優3人は本当に良いねん。でも、それを生かし切れていない。
Y木:もうちょっと具体的に教えて。ダメなところはどういうとこ?
S原:まず、この世界の設定がすごく凝っている。なんせ、70分の映画やのにはじめの10分はナレーション(説明)やから。
Y木:なんやねんそれ。
S原:しかも、よく理解できなかった(苦笑)まあ、映画が始まれば、ゲームの仮想空間での戦いというのはすぐにわかるけど。
Y木:登場人物たちはゲームのプレーヤーってことか。戦う目的は?お金?
S原:目的はよくわからん。ただ戦うだけ。
Y木:えーそんな話?ほんまにただ単にゲームの世界を描いてるだけなんや。
S原:そのとおり。とにかく黒木メイサがライフル銃を構えるショットとか、佐伯日菜子が風で髪が揺れるショットとか、菊地凛子が荒廃した大地で踊るショットとか、そういうのに力を入れている。
Y木:好きな人はストライクやな。
S原:でもやっぱりこっちの気持ちは盛り上がらない…これはゲームのキャラやからええねん、と言ってしまえばそうやけど。もうすこし登場人物に感情移入できないと、それこそ「他人がしているゲーム画面を横から見ている」みたいになってしまう。うーん、でも、ぼくのセンスが古くてついていけていないかも…(苦笑)
Y木:そうはいっても、一応ストーリーはあるんやろ?
S原:途中で、みんなで協力して強敵を倒すという話はあるけど、すぐにみんなで強敵を倒しておしまい。ほんとどストーリーらしいストーリはないねん。
Y木:ふーん、なんかSFとかに興味ない人は辛いよな。
S原:あー、言い忘れてたけど、この人は、SF以外にも「え?」というものを入れてくるねん。変化球と言うか。
Y木:変化球?
S原:この映画では、二宮金次郎の像がでてきます。
Y木:二宮金次郎?昔の小学校にあったやつ?
S原:そうそう。あれが、広大な砂漠の土地にポツンとたっている。そこにカタツムリがのんびりと這っている。
Y木:……それはどういう意味?何かの隠喩?
S原:わからん。それこそ熱狂的なファンは理解できるんかもしれん。ぼくには全然わからんかった。たぶん、シュールな絵の面白さを狙ったと思うんやけど…
Y木:ほー…いや観てないから何とも言えんな。ちょっと変わった映画というのは分かった。
S原:さあ、みなさん、ワン・アンド・オンリーな美術感覚は面白いですが、普通に映画を楽しみたい人はスルーしたほうが無難でしょう。でも変わった映画が好きな人、凝った映像が好きな人、出演女優のファンはゲットしても良いと思いますよ。
Y木:一応、おススメするんや。
S原:うーん、鑑賞後にはなんともいえん不思議な感覚が残るのは間違いないです。観る機会があればぜひチャレンジを!