あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

あなたはどっち?賛否両論映画特集!「板尾創路の大脱走」(2009)の巻

板尾創路の脱獄王[DVD]

S原:今回はこちら!

Y木:へえ、板尾創路が映画作ったんや。

(あらすじ)

その囚人は、何度捕まってもその驚異的な身体能力と、奇想天外な手腕を持って脱獄を成功させる。もはや彼にはいかなる錠や枷も存在しないに等しい。男の名は鈴木雅之。人々は彼をむしろ英雄として「脱獄王」と呼び称えた。しかし…。それほどまでにしてなぜ彼は脱獄を繰り返すのか?そしてなぜ捕まるのか?脱獄王の真の目的とは…?

 

S原:もう10年以上前の映画やけどな。これはちょっと惜しい。

Y木:ほー、そうなんや。

S原:面白いか?と言われると、大きな声でYES!とは言いにくいけど、最後までちゃんと観れた。いまから観ようと思う人は、ここでブログを読むのをやめてほしい。予備知識なしに白紙で観たほうが楽しめるタイプの映画やから。

Y木:ふーん。脱走もの?

S原:そうやねんけど、「大脱走」(1963)みたいに、どうやって脱走するか?には主軸を置いていない。一応、血液で牢屋の鉄格子を錆びさせるとか肩関節を外して狭い空間をすり抜ける場面とかがあるけど、実在の脱獄(白鳥由栄とか)のエピソードを上手く使ってると思う。

Y木:サスペンスというか、脱獄囚と脱獄囚と看守のせめぎあいの映画?

S原:うーん、そうでもないねん。たしかに、ひたすら脱獄を繰り返して看守の國村隼たちが、それに振り回されるというのがメインストーリーやけど。なんと言えばええんかな…このあたりがちょっと弱いねん。

Y木:弱い?

S原:はじめに言った「惜しい」につながるねんけど、全体的に一本調子やねん。脱獄⇒追跡⇒捕獲⇒刑務所へ逆戻りの繰り返しが続くから。ここが一番残念やった。

Y木:要するに単調なんやな。場面転換というか、変化球みたいなのはないの?

S原:一応、あるねん。回想シーンやったり、突然、中村雅俊の唄を歌ったり。

Y木:なんやそれ(苦笑)あー、板尾独特のシュールなお笑いってこと?

S原:途中で少しそういう場面がある。そこをコメディリリーフととらえるかどうか……でも、そういうところもあまり映画本編とうまくかみ合ってなくてリズム感が良くない、というのがぼくの感想。ここも残念やったな。

Y木:いわゆる「映画」としては完成度が低いんか?

S原:いや完成度が云々というタイプの映画でもないような気がする(笑)でも、そうやなあ、個人的にはやっぱり「映画」が好きやから、例えばどこかで上手く伏線があったりすれば、もっと良かったと思ったりする。一応、ラストにも関係のある伏線もあるねんけど、もうちょっと上手いと全体の印象が変わったと思う。

Y木:でも、「惜しい」というからには、長所もあるんやろ?

S原:うん。昭和初期の設定で、衣装とか刑務所の中のセットとかはなかなか良い味が出てる。最後に連れていかれる監獄島も良い雰囲気。撮影・編集もわりと上手いと思う。出演者たちも、薄汚れてて昭和の顔ばっかりやし(笑)國村隼とかすごくちゃんと演技するやろ。最近、いろんな映画に出演しすぎて飽きたとか言われるけど、やっぱり安心して観れるしな。意外とぼんちおさむとか宮迫とかも雰囲気がええよ。

Y木:お笑い芸人が監督して、同じお笑い芸人を俳優として使うっていうのもなあ。なんかありがちとちゃう?

S原:内輪受けというか、仲良しクラブってことか。たしかにそう思える部分もある。でもさっき言った通り、芸人が意外に「おお!」と思うような演技をする瞬間もあるから一長一短ちゃうかな。

Y木:それで結論としてはどうなん?

S原:これ、言いにくいなあ……ラストのオチのために、延々とネタフリをしてるような映画やから。

Y木:なんとなくそれでわかった。長いコントってことやな。

S原:そこまで言い切れないけど、まあそうやな。やっぱり完全に板尾創路の世界やった。

Y木:こういう映画はそれでええやん。

S原:うん。「板尾監督作品」にはなっていると思う。だから、嫌いな人には駄作、好きな人には傑作かも。でも、このへんは人によって、この映画に対して期待している部分も違うやろうしな。「上手くできた映画」を作るんなら、べつに板尾創路じゃなくてもええわけやし、かといって映画自体の面白さも期待してしまうし……求めすぎやろか?

Y木:要するにおまえは、1本の「映画」として期待してるってことやろ?

S原:そうやねん。そのへんで世間の評価も分かれてる気がする。これは他の有名人の監督作品にも言えるかもしれんけど。

Y木:ラストは? 

S原:一応伏せます。でも、ネットで調べればすぐに出てくるけどな(笑)

Y木:なんか今回は話にくそうやな。

S原:うん。観た人にはわかると思う。さあ、みなさん、ちょっと変わった映画として観れば十分に楽しめます。途中が少し間延びしますが、賛否のある映画だと理解は出来ます。一度観てみるのもアリですよ。ワゴンコーナーで見つけたら、一度手に取ってくださいませ!