あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「女性」「性」がテーマの映画を観てみる!「フォーゴットン・ドリームス」(2011)の巻

フォーゴットン・ドリームス

S原:「女性映画」特集。今回はこちら。

Y木:ほう。映像がきれいな感じやな。

(あらすじ)

女性の視点で恋とSEXを描く“ポルノチック”レーベル第2弾。不動産屋に勤める衿と、ホテルで夜勤の仕事をしている裕介はすれ違いの生活を続けていた。しかし、裕介の失業を機に、ふたりの関係がぎくしゃくし始めて…

 

S原:最初に言っておくと、これは「性、官能を売りにした映画」ではありません。

Y木:そうなんや。「ポルノチック」という、いかにもなシリーズ名をつけてるのに。

S原:ぼくも、それに釣られて買ってしまった(笑)でも、「性」がすごく大事なキーワードになっているから、この特集で取り上げたのよ。

Y木:ポルノチックレーベルというのは?

S原:男性向けよりも、おそらく女性も観れるような作品を作りたかったんとちゃうかな。心の動きが絡んだ官能とかきれいなエッチさとか。ほかには「夕闇ダリア」(2011)、「惑星のかけら」(2011)があって、DVDには予告編も収録されています。この2本、すごく面白そうやねん。だから企画自体はええと思う。

Y木:この映画では、激しいベッドシーンがあるの?

S原:短い時間やし、大したことないよ。というか、この映画に関しては、「ポルノチック」を売り文句にするのはどうかな。最近の映画なら、もっと激しい映画もあると思うし。

Y木:そうなんや。じゃあ、それを期待した人にはガッカリやな。

S原:うん。そっちはええねんけどな…これはなあ…映画自体はちょっとなー…(ため息)

Y木:なんやねん。

S原:監督(日向朝子)のやりたいことはわかるねん。若い恋人たち(夫婦?)の淡々としたありふれた日常をスパッと切り取ったような描き方でな。こういうのが好きなんやと思う。あまり日本映画ではないタイプの映画やし、その意欲は買いたいけど…

Y木:フランス映画とかそういう感じ?

S原:そんな感じでもない…かなあ。『何も起こらない映画』ってあるやろ。日々の生活のなかで起こる微妙な感情のさざ波みたいなのを撮りたかったんやと思う。

Y木:それはそれでええやん。何も起こらないって言うけど、あらすじを読むと途中で男が失業するとかいうエピソードがあるやん。そこから変化が起きるんやろ?起承転結の「転」というか。

S原:うん。男は職を失って、いままでわりと上手くいってた2人の生活がギクシャクする。ちょっとしたことで、女性がムッとしたりな。もちろん「性」の部分でも、微妙にすれ違う。男がそっと女性の体を触っても、スーッと女性は避ける。とてもそんな気持ちになれないわけやな。この場面の主演2人の表情はなかなか良いねん。そのへんはすごく丁寧に描いている。自然の光とか、生活音、街のちいさなノイズを中心にして、いわゆるBGMはなかったんとちゃうかな。

Y木:あー、昔の俺ならストライクや(笑)

S原:こういうところは、悪くないねんけどな…主人公が寝ているときに、風がゆるやかにふく場面とかは確かに綺麗やし。こういうのが好きなひとには、確かにストライクやと思う。ほかにも、夜の街を自転車でゆっくりと走る姿をワンショットで撮るとか。さっきも言ったけど、撮りたい意図はわかるねん。わかるねんけどなー…

Y木:なんや、イマイチ気に入らんみたいやな。

S原:あまりに日常生活の描写が続くと、なんかもう『家の隣に住んでいるカップルの部屋』を写しているだけみたいやろ…あなた、そんなん興味ある?どうでもええやろ?

Y木:となりのカップルの生活か…どうでもええな(笑)

S原:まあ、そういう市井のどこにでもいるカップルを優しくみつめた映画ともいえるし、わざわざ観なくてもいい映画ともいえる。

Y木:だからこその「ポルノチック」と銘打って、引っ掛かりと言うか注目してもらおうという魂胆でしょ。

S原:たぶんな。あとは女優(中村麻美)のヌードが売りなんやろうな。

Y木:パッケージもそのまんまやん。

S原:ぼくは中村麻美は評価してるねんで。かなり前に「電話の恋人」(2004)というライブドア製作の珍作映画を紹介したけど、そのなかで1人だけ存在感があったのが中村麻美。今回の主演でヌードにもなってるけど、わざわざそれを「売り」にするのはやっぱり疑問があるな。

Y木:要するに、「ポルノチック」「官能」という売りと、映画本編が釣り合っていないと?

S原:うん。「個性のある映画」やと思う。でも、正直に言うと、あまり普通の人の普通の生活を見せられても、ちょっとなあ…(苦笑)

Y木:もうゾンビとか宇宙人がでていないと楽しめない体になったんとちゃうの?(笑)

S原:さあみなさん。一般には(たぶん)知られていない映画ですが、鑑賞後に静かに余韻がのこるか、すぐに忘れてしまうかどっちでかでしょう。これは、男女で感想が別れるような気がしますが…うーん、どうなんでしょうか。ある意味、日本映画っぽくない作品ですが、興味ある方はぜひ観てくださいませ。