S原:今回は、リムジンの中のお話です。
Y木:へえ。
(あらすじ)
エレガントなイブニングドレスに身を包んだ美しき女優・アマンダ。彼女は、女優としてのキャリアに捧げられる“特別賞"授賞式の会場に向かうため、邸宅の前に乗り付けられた巨大な豪華リムジンに乗り込む。しかし、突如、全ての窓とドアは完全に閉ざされ何をしようと開ける事は出来ず、携帯電話すら通じない。ボイスチェンジャーから発せられる怪しげな声は、彼女に無駄な抵抗を止め、置かれた状況に身を委ねるよう促すのであった。そして、命を繋ぐためには、こらから命じるすべての事を受け入れろと・・・。
S原:これは、出だしはまあまあ良い雰囲気です。主人公は映画の授賞式にでるために、ドレスを着てリムジンに乗ります。リムジンにはなんでも揃ってます。お酒やドラッグまであります。
Y木:なんでドラッグまであるねん。
S原:リムジンの中は広くテレビモニターもあります。そこに、突然映像が流れ始めます。それは主人公が若い頃(20年前)の主演映画(出世作)の場面です。主人公は(スピーチの練習をしたいので)映像を止めてくれと言いますが、なかなか映像は止まりません。やっと映像が消えますが、すでに受賞会場に到着しているはずの時刻は過ぎています。だんだんと不穏な空気を感じる主人公…
Y木:それで?
S原:まだ車は走り続けています。突然リムジンの中に、不気味な男性の声のアナウンスが響き渡ります。「携帯電話は通じない。ドアも窓も、厳重にカギをかけてある。窓は強化ガラスで、破ることは出来ない。お前は、このリムジンの中に閉じ込められたのだ!」主人公は、はじめはジョークと思い相手にしませんが、だんだんと不安に思います。車から降りようとしてもドアはビクともしません。主人公は「目的はお金なの?」と聞きますが、「声」は「これから、私の出す命令に従え」「従った方が賢明だぞ」と脅します。
Y木:ほう。どんな命令?
S原:「モニターに向って、服を脱げ」
Y木:なんかB級ポルノみたいな展開やなー…
S原:主人公は拒否します。すると、突然ドアが開いて覆面をした男が入ってきます。男は棍棒を取り出すと、主人公をボコボコにします。「これで、私が本気だとわかったか?さあ、言われた通りに、服を脱げ」主人公は服を脱ぎます。「お前も興奮してきたのか?」「濡れてきたんだろ?」
Y木:やっぱりポルノやん(苦笑)
S原:まあそんな感じで話は進みます。ヒールのかかとを、男のペニスだと思ってくわえろ、とかモルヒネを打て、とか主人公をいたぶり続ける。ついには、リムジンの中でレイプまでされてしまう。主人公は会話の中から「自分に恨みを持っている」「役柄と関係している恨みらしい」「同じ俳優らしい」「相手は女性らしい」と推測します。
Y木:なるほど、ひそかに犯人に逆襲をするチャンスをうかがう、と。
S原:うん。ここがミソやな。少ないヒントから、必死に犯人を推測して抵抗していくところが、この映画の面白さになるんやけど、ちょっと雑やったかな。あまり伏線も上手くなくてちょっと残念。
Y木:それで、犯人は?
S原:もうネタバレになるけど、「声」の主は女優で、実は主人公の出世作に主演するはずだったのよ。主人公に役を取られたばっかりに、自分の人生が転落してしまった、という恨みが動機やな。
Y木:えーそれって逆恨みやん。
S原:そうなんやけど、実は主人公もよくないねん。製作側のミスで、主役の交代となってしまうんやけど、主人公も降板させられた女優のことは無視してしまうからな。もう少し配慮があれば、犯人もここまで恨まなかったかも。
Y木:分かるけど…やっぱり逆恨みやで。
S原:犯人の女優はそのあとレイプされて映像を撮られたり、もう人生はボロボロ。おまけに顔面も醜く変わっていて、どうしようもない。そんななか、主人公が女優として輝く授賞式に日に、人生を終わらせようとするというわけ。
Y木:最後は?
S原:犯人は、主人公と自分をリムジンにくくりつけて、湖(沼?)に一緒に心中しようとしますが、もちろん主人公はなんとか助かります。犯人は死にます。で、おしまい。
Y木:ふーん、最後は普通やな。
S原:終わらせ方としては、ベタやけどこれしかないんとちゃうかな。まあまあ面白いけど、閉鎖された空間からどうやって逃げるか?という面白さはあんまりなかった。せっかくのリムジンなんやから、もっとリムジン内部にある備品を使えばユニークな面白さがでたと思うけど、残念ながらしばらくしたら印象が薄くなっていくタイプの作品やわ。
Y木:なるほど。
S原:さあ、みなさま。いつか成金になってリムジンに乗りたいという人もいるでしょうね。でも、リムジンに乗ってどこにいくのですか?鹿鳴館のようなダンスパーティー?新宿にある高級寿司屋?銀座の会員制クラブ?いーえ、あなたはそんなところに行きません。あなたは、中古DVDが売ってる店に行くのですよ。ぼくにはそれが分かるのです。さあリムジンに飛び乗って、ワゴンコーナーへレッツラゴー!