あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

あなたはどっち?賛否両論映画特集!「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」(2011)の巻

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら(通常版) [DVD]

S原:今回は、ちょっとだけ話題になったコレ!

Y木:もしドラ、やな。

(あらすじ)

万年、予選一回戦負けの高校野球部に、マネージャーとして入部した川島みなみ。「野球部を甲子園に連れて行く」と宣言してしまったみなみは、勘違いから手にした経営学の父・ドラッガーの名著『マネジメント』の教えを実践していき…。

 

S原:これは、惜しい。いやあ、もったいない!

Y木:なんやねん、いきなり。

S原:ほんまに惜しいねんって。もういたるところに面白くなる要素があるねんけどな。全部、取りこぼしてるねんなあ。

Y木:……あかんやん。

S原:うん、あかんねんけどな(苦笑)この映画は、前田敦子が可愛いと高評価される一方で、映画の出来としては低評価になってるねん。

Y木:どうせネットで叩かれてるやろ?どういうところがあかんの?

S原:ネットの評判をうのみには出来へんけど、目につく意見を抽出すると、

①野球とドラッガーの本がうまく融合されていない(よくわからない)

②でもドラッガーの本の言葉ですぐに解決してしまう(ようにみえる) 

③肝心の野球の試合では、ドラッガーは役に立たない(というか、ドラッガーは関係なく、普通に試合をしてるだけ) 

前田敦子の友人の不治の病ネタが古くさい(そして決勝戦の前日に死ぬ) 

⑤肝心の野球の試合で前田敦子は何もしていない(ベンチに座っているだけで、言葉も発さない)

……きりないけど、こんな感じかな。

Y木:ひどいなあ。それで、実際に観た感想は?

S原:そうやな。反論は出来へんな…(笑)

Y木:あかんやん。

S原:原作はなかなか面白いらしいけど読んでない。だから映画単独としての感想になるけど、結局、『観客が観たいところを外してしまっている』、これに尽きると思う。

Y木:ほー。

S原:この映画を観る人っておもに3つの期待があると思うねん。ネットでのレビューとも一部重複するけど、①「ドラッガーの経営哲学ってどんなんやろ?」「それが野球部のマネージャーとして、どう活用されるんやろ?」という部分と、②「マネージャーとしての主人公の活躍がみたい」「野球チームが(ドラッガーによって)成長するところがみたい」という部分と、③「かわいい前田敦子がみたい」「できればシャワーシーンがみたい」という部分。

Y木:最後のシャワーシーンは、おまえの好みやろ。きもいわ。

S原:結局、シャワーシーンはなかった…(ため息)①②ともに、ちゃんと描いていないから、観客は消化不良をおこしてしまう。これは、やっぱり日本映画特有の『中途半端病』が原因なんやと思う。

Y木:中途半端病?なんやそれ?

S原:まあ、ぼくの造語なんやけどな。まず、この映画の面白さって、さっきも言ったけど『ドラッガーの教えがどうやって野球チームに反映されていくか?』やろ?

Y木:そやな、というかそれしかないやん。

S原:映画の初めはええ感じやねん。ドラッガーを読みながら、練習をこうしてとか、やる気を起こすにはどうすればいいかとか、を考える。ちょっと字幕で説明したり、わかりやすい。このへんはテンポも良いし面白いよ。当然、野球部員からは反発されるねん。野球をしらない女子が何を言ってるんだってバカにされる。

Y木:普通の展開やん。

S原:このへんまではええねん。でも、中途半端なキャラや展開や設定が押し寄せてくる。

Y木:中途半端?

S原:まず、前田敦子は元野球少女という設定やねん。女子だからってことで、野球チームにいられなくなる。野球に対する忸怩たる思いがある。野球を分かっているからこそ、ドラッガーを野球チームの育成とか戦術とかに応用できるかと思ったら、とくにその経験は役に立たない。ただ単に昔、野球やってたというだけ。

Y木:えー…

S原:あと、観た人みんながつっこむ(主人公の)友人(川口春奈)の存在。一応、この友人の代わりに野球チームのマネージャーになるという設定やけど、不治の病に冒されていて面会のたびに「遊びに行きたい」とか「ここで死ぬのよ」とか愚痴る。前田敦子は、一緒に野球を観に行こうと励ます。このベタな展開が、野球チームとドラッガーにどう関係するのかと期待したけど、最後まで関係なかった。これも中途半端やな。

Y木:えー…

S原:選手たちは決勝で、亡くなった川口春奈の麦わら帽子をさわって、バッターボックスに向かう。いまどきこんな演出する?昭和初期の難病映画かと思ったで(苦笑)このエピソードもバッサリ切ったほうがよかったと思う。

Y木:なるほどなあ。

S原:あとは、もう1人女子マネージャーがおるけど、どんな立ち位置なのかよくわからないまま話が進むから、前田敦子がなにもしてない(ようにみえる)。ほかには、野球チームにはイケメン(瀬戸康史池松壮亮など)が多くおるねんけどな。それがストーリーに生かされることはない。まだあるで。レギュラーでない選手がキャプテンに(しかも大事な試合の直前に)任命される。これも別に意味はない。映画の中盤で、試合で負けて、チームは落ち込む。暗い雰囲気のチームを、前田敦子ドラッガー理論で鼓舞したり次の作戦をたてるのかと思ったら、監督(大泉洋)が謝って、みんなを一丸にしてチームが活気づく。

Y木:ドラッガーに関係ないエピソードばかりか。

S原:一番不自然やったのは、前田敦子の恋愛ネタが一切ないねん。

Y木:それはべつにええやん。というか、そんな恋愛ネタを描いたら、またおまえに「こんな恋愛なんか不要やった」ってつっこまれるやん(笑)

S原:いやいや、でも考えてみてよ?あんなかわいい女子が、いきなりマネージャーになるねんで。思春期の男子がなにも思わないわけない。どう考えても不自然やん。「男子の中の一人が前田敦子に恋心を抱く」→「前田敦子ドラッガーと野球チームの立て直しに夢中で、男子の恋心にも気付かない」→「あっさりと失恋」という展開がないとあかんやろ?

Y木:おまえのセンスもちょっとなあ…(苦笑)

S原:要するに、すべて中途半端になんとなくエピソードをならべるから、こうなるねん。もっとポイントをギュッと絞って作ったら、絶対面白くなったはずやのに。残念やわー。

 Y木:「大人の事情」なんとちゃうの?知らんけど。

S原:たぶんそうやろな。監督の意向じゃなくて、製作者とかスポンサーの意向で、どんどん映画がピント外れになってしまう。これこそが「中途半端病」の原因なり。とはいうものの、大人になれば、いろんな(製作側の)事情が絡むのもわかるんやけどな(苦笑)

Y木:たしかに監督が好きなように撮れるわけじゃないからな。そのくせ駄作なら監督の責任になるという(苦笑)

S原:そして結局は「中途半端病」に冒される。恋愛映画でもなく、野球映画でもなく、コメディでもなく、お涙頂戴でもなく、もちろんドラッガー理論を利用した映画でもなく…はい、日本映画特有の「中途半端映画」の出来上がり。

Y木:まあ、こういう映画はこれでええんとちゃう?おまえは「もっとこうすればええのに」とか言うけど、大きなお世話ちゃうの?

S原:そうなんかな。でもなー…やっぱりこの映画は惜しいで。前田敦子はなかなか可愛く撮れてるし、ほかにも大泉洋瀬戸康史,、峯岸みなみ,、池松壮亮,、川口春奈、みんな良いのになあ。肝心の物語がなあ…(ため息)

Y木:今回はため息ばっかりやな。

S原:さあ、みなさん。みなさんが思っているような面白さは外していますが、ヤングな俳優たちは、なかなかイケますよ。町山智浩さんも、そんなにボロクソ言わずに、ワゴンコーナーで見つけたらゲットして下さーい!あっちゃんも可愛いよ~♪

Y木:キモイわ!