S原:今回はこちらについて語ります!
Y木:くもまん?なにこれ?
(あらすじ)
中川学、29歳。長年のニート生活を経て、父のコネで教育現場の職を得る。初めて人生の歯車が合い始めた高揚感と抑えきれない性欲から、風俗店「オフィスっ娘❤倶楽部」へ繰り出した。そこで出会ったのはNo.1の風俗嬢ゆのあ。最高のサービスを受け、絶頂を迎えるはずが・・・・・・。まさにその瞬間、くも膜下出血を発症。
完治率わずか30%の病から生還するも、風俗店で倒れたことを家族、親戚にひた隠しにする中川。
笑わずにいられない! でも、決して他人事じゃない! 死の淵から生還した男の『人生で最も恥ずかしい実録物語』
Y木:うわー、いかにも低予算って感じがする。
S原:いやじつは、これ映画はちゃんとしてるねん。もちろん潤沢な製作費ではなかったやろうけど、低予算ということでもないと思う。病院や風俗店とかのロケ地やセットもしっかりと作ってるしな。
Y木:へえー、そうなんや。
S原:映画としても、雑なこともないし、役者の演技もちゃんとしてる。意味の分からないショットや場面もないし、ちゃんとした、といえばいいのか「まともな出来具合」やと思うで。
Y木:ほー。じゃあ面白かったの?
S原:うーん、そこがなあ。「面白かった!」とは言えないかな(苦笑)
Y木:やっぱり(笑)
S原:いや、決して悪くはないねんで。原作は中川学。自分自身が脳の病気(くも膜下出血)を経験したときにドタバタを描いたエッセイ漫画やねん。
Y木:あー、エッセイ漫画なー。あんなん、だれが読むんやろ?と前から不思議に思ってたんやけどな。あ、ワゴンコーナー映画を観てるよりは、有意義かも(笑)
S原:サンキューね。でもエッセイ漫画はたくさんでてるから、そういうファンも多いんやろうな。とはいうものの、1回読んだら十分というやつが多いから、喫茶店とか散髪屋でちょっと読むような漫画やと思うけど。
Y木:ゴルゴ13的な(笑)
S原:実は「ゴルゴ13」は寝る前に読むと、めちゃ面白いねんで(笑)この映画の話をすると、脳の血管が破裂するときのイメージ画像が、『大きなぬいぐるみ(着ぐるみ)のクマがバットで頭をフルスイングする』ところやねん。たぶん、原作者の実体験でそう感じたんやろうな。「くまモン」を凶暴にしたような着ぐるみやから、くまモンでなくて「くも曼」ってことかな。
Y木:ふーん。で、結局は闘病日記みたいな感じ?
S原:そうやねん。闘病(とくに手術後)のことと並行して、風俗店で倒れて救急車で運ばれたから、それを周囲にバレないようにごまかすていうエピソードが描かれる。はっきりいって、ストーリーはほとんどそれだけやねん。
Y木:地味やな。別にバレたってええやん。大人なんやし。
S原:まあな。でもやっぱり恥ずかしいやろ。
Y木:黙ってたらバレへんのとちゃうの?
S原:風俗店に、靴を置き忘れてしまうねん。それで主人公の母親が「靴がない」「新品の靴だったのに」「探してくる」と、失くした靴にこだわる。風俗店にいったことをバレたくない主人公は、適当なことを言ってごまかし続けるねん。あんまり母親が靴にこだわるから、親戚一同が集まって、靴の行方をミステリー小説みたいに推理合戦したりする。
Y木:あー、昔のフランス映画みたいなドタバタコメディやな。
S原:うーん、そこまでコメディに振り切っていないかな。やっぱりメインは病気の話やしな。人それぞれやと思うけど、主人公の姿を見て「どんくさいやっちゃなー」とカラッと笑う映画でないような気がする。あ。いま思ったけど、もしかしたら、そう思える人はこの映画を楽しめるんかもな。
Y木:病気とか関係なくコメディとして割り切るほうが、この映画を楽しめるってこと?
S原:そうそう。でも映画としてはコメディとして突き抜けてるっというよりも、あくまで(病気後の)エッセイ風にすすむから、人によって好みがでるやろうな。
Y木:どうせあれやろ?病室で寝ていたら、同じ病室の患者と仲良くなってその人が死ぬ、とかいうエピソードがあるんとちゃうの?
S原:正解。なんでわかるんや?(笑)
Y木:わかるわ。日本映画の定番やろ(笑)
S原:病室が同じやった患者(おっさん)は亡くなるけど、主人公が快復して病院にお礼のため訪問したときに、そのおっさんと「再会」する。少し会話して、ふと横を見るといつのまにかおっさんは消えている……ベタやけど、ここは意外とあっさりと撮っていて、良かったで。
Y木:さっきから聞いていると、映画はドライな感じなんか?
S原:そうやな。全体としては淡々としてる、どこか乾いているというか。肝心の風俗がらみの描写もいやらしくないし、人間関係もどこかふわっと優しい雰囲気があるしな。これは、監督の意図もあると思うけど、主演の脳みそ夫の影響も大きいんとちゃうかな。
Y木:脳みそ夫?
S原:変な名前やけど芸人らしい。ぼくもあなたも、あんまりテレビを観ないから、名の知れた芸人かどうかは知らんけど…脳みそ夫は、この映画ではかなり抑えて演技してる。ほんまにこんな人なんかもしれんけど(笑)まわりのキャストもよかったで。妹は途中で主人公が風俗に行ったことに気付くねんけど、それとなくフォローする。この妹役は、沖ちずる。一所懸命にくも膜下出血の後遺症について話す主治医(板橋俊谷)も良い存在感やった。あと、風俗嬢がわりとキレイやねん。いまどきはこんなきれいな人がおるんやなー、この人やったら行ってもええなー、と感心してたら、モデル出身の女優(柳英里沙)やった。ファンの人、すいません(笑)
Y木:なんやねん、きもいわ。
S原:『人生で最も恥ずかしい実録物語』というのがキャッチコピーやけど、観ていると「まあまあ、そんなに恥ずかしがらんでもええんとちゃう?病気なんやし」と思う人が大半とちゃうやろか。
Y木:うーん、今回はやっぱり地味すぎるで。
S原:さーみなさま。エッセイ漫画がお好きな人にはおススメです。ドラマチックな映画を観たい人はスルーしてください。そしてみなさんも、くも膜下出血には気をつけましょう!とくに高血圧の人、カロリーの高い食事をしている人、喫煙者のみなさんも気を付けて下さーい!
Y木:なんか高齢者向けの健康セミナーみたいやなあ…
S原:元気で長生きして、いっぱいワゴンセールにおいてある映画を発掘しましょー!
Y木:おまえ、老人になってもワゴンセールとか漁るつもりかいな…(ため息)