あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ほぼ誰も知らない邦画 20連発!「くも漫。」(2017年)の巻

くも漫。 [DVD]

 

S原:今回はこちらについて語ります!

Y木:くもまん?なにこれ? 

 

(あらすじ)

中川学、29歳。長年のニート生活を経て、父のコネで教育現場の職を得る。初めて人生の歯車が合い始めた高揚感と抑えきれない性欲から、風俗店「オフィスっ娘❤倶楽部」へ繰り出した。そこで出会ったのはNo.1の風俗嬢ゆのあ。最高のサービスを受け、絶頂を迎えるはずが・・・・・・。まさにその瞬間、くも膜下出血を発症。
完治率わずか30%の病から生還するも、風俗店で倒れたことを家族、親戚にひた隠しにする中川。
笑わずにいられない! でも、決して他人事じゃない! 死の淵から生還した男の『人生で最も恥ずかしい実録物語』

 

Y木:うわー、いかにも低予算って感じがする。

S原:いやじつは、これ映画はちゃんとしてるねん。もちろん潤沢な製作費ではなかったやろうけど、低予算ということでもないと思う。病院や風俗店とかのロケ地やセットもしっかりと作ってるしな。

Y木:へえー、そうなんや。

S原:映画としても、雑なこともないし、役者の演技もちゃんとしてる。意味の分からないショットや場面もないし、ちゃんとした、といえばいいのか「まともな出来具合」やと思うで。

Y木:ほー。じゃあ面白かったの?

S原:うーん、そこがなあ。「面白かった!」とは言えないかな(苦笑)

Y木:やっぱり(笑)

S原:いや、決して悪くはないねんで。原作は中川学。自分自身が脳の病気(くも膜下出血)を経験したときにドタバタを描いたエッセイ漫画やねん。

Y木:あー、エッセイ漫画なー。あんなん、だれが読むんやろ?と前から不思議に思ってたんやけどな。あ、ワゴンコーナー映画を観てるよりは、有意義かも(笑)

S原:サンキューね。でもエッセイ漫画はたくさんでてるから、そういうファンも多いんやろうな。とはいうものの、1回読んだら十分というやつが多いから、喫茶店とか散髪屋でちょっと読むような漫画やと思うけど。

Y木:ゴルゴ13的な(笑)

S原:実は「ゴルゴ13」は寝る前に読むと、めちゃ面白いねんで(笑)この映画の話をすると、脳の血管が破裂するときのイメージ画像が、『大きなぬいぐるみ(着ぐるみ)のクマがバットで頭をフルスイングする』ところやねん。たぶん、原作者の実体験でそう感じたんやろうな。「くまモン」を凶暴にしたような着ぐるみやから、くまモンでなくて「くも曼」ってことかな。

Y木:ふーん。で、結局は闘病日記みたいな感じ?

S原:そうやねん。闘病(とくに手術後)のことと並行して、風俗店で倒れて救急車で運ばれたから、それを周囲にバレないようにごまかすていうエピソードが描かれる。はっきりいって、ストーリーはほとんどそれだけやねん。

Y木:地味やな。別にバレたってええやん。大人なんやし。

S原:まあな。でもやっぱり恥ずかしいやろ。

Y木:黙ってたらバレへんのとちゃうの?

S原:風俗店に、靴を置き忘れてしまうねん。それで主人公の母親が「靴がない」「新品の靴だったのに」「探してくる」と、失くした靴にこだわる。風俗店にいったことをバレたくない主人公は、適当なことを言ってごまかし続けるねん。あんまり母親が靴にこだわるから、親戚一同が集まって、靴の行方をミステリー小説みたいに推理合戦したりする。

Y木:あー、昔のフランス映画みたいなドタバタコメディやな。

S原:うーん、そこまでコメディに振り切っていないかな。やっぱりメインは病気の話やしな。人それぞれやと思うけど、主人公の姿を見て「どんくさいやっちゃなー」とカラッと笑う映画でないような気がする。あ。いま思ったけど、もしかしたら、そう思える人はこの映画を楽しめるんかもな。

Y木:病気とか関係なくコメディとして割り切るほうが、この映画を楽しめるってこと?

S原:そうそう。でも映画としてはコメディとして突き抜けてるっというよりも、あくまで(病気後の)エッセイ風にすすむから、人によって好みがでるやろうな。

Y木:どうせあれやろ?病室で寝ていたら、同じ病室の患者と仲良くなってその人が死ぬ、とかいうエピソードがあるんとちゃうの?

S原:正解。なんでわかるんや?(笑)

Y木:わかるわ。日本映画の定番やろ(笑)

S原:病室が同じやった患者(おっさん)は亡くなるけど、主人公が快復して病院にお礼のため訪問したときに、そのおっさんと「再会」する。少し会話して、ふと横を見るといつのまにかおっさんは消えている……ベタやけど、ここは意外とあっさりと撮っていて、良かったで。

Y木:さっきから聞いていると、映画はドライな感じなんか?

S原:そうやな。全体としては淡々としてる、どこか乾いているというか。肝心の風俗がらみの描写もいやらしくないし、人間関係もどこかふわっと優しい雰囲気があるしな。これは、監督の意図もあると思うけど、主演の脳みそ夫の影響も大きいんとちゃうかな。

Y木:脳みそ夫

S原:変な名前やけど芸人らしい。ぼくもあなたも、あんまりテレビを観ないから、名の知れた芸人かどうかは知らんけど…脳みそ夫は、この映画ではかなり抑えて演技してる。ほんまにこんな人なんかもしれんけど(笑)まわりのキャストもよかったで。妹は途中で主人公が風俗に行ったことに気付くねんけど、それとなくフォローする。この妹役は、沖ちずる。一所懸命にくも膜下出血の後遺症について話す主治医(板橋俊谷)も良い存在感やった。あと、風俗嬢がわりとキレイやねん。いまどきはこんなきれいな人がおるんやなー、この人やったら行ってもええなー、と感心してたら、モデル出身の女優(柳英里沙)やった。ファンの人、すいません(笑)

Y木:なんやねん、きもいわ。

S原:『人生で最も恥ずかしい実録物語』というのがキャッチコピーやけど、観ていると「まあまあ、そんなに恥ずかしがらんでもええんとちゃう?病気なんやし」と思う人が大半とちゃうやろか。

Y木:うーん、今回はやっぱり地味すぎるで。

S原:さーみなさま。エッセイ漫画がお好きな人にはおススメです。ドラマチックな映画を観たい人はスルーしてください。そしてみなさんも、くも膜下出血には気をつけましょう!とくに高血圧の人、カロリーの高い食事をしている人、喫煙者のみなさんも気を付けて下さーい!

Y木:なんか高齢者向けの健康セミナーみたいやなあ…

S原:元気で長生きして、いっぱいワゴンセールにおいてある映画を発掘しましょー!

Y木:おまえ、老人になってもワゴンセールとか漁るつもりかいな…(ため息)