あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「女性」「性」がテーマの映画を観てみる!「牝猫たち」(2017)の巻

牝猫たち [DVD]

S原:今回はこれ、風俗嬢の映画です。なんと、あの「ロマンポルノ」ですよ!

Y木:ロマンポルノ!

(あらすじ)

池袋の風俗店「極楽若奥様」て働く3匹の“牝猫たち"。彼女たちは、互いを店の名前で呼び合うだけで本名も、ここで働く理由も知らない。ネットカフェ難民、シングルマザー、不妊症、それぞれの悩みを抱えた牝猫たちは、都会の中で孤独を感じながら、好きでもない客を前に素肌をさらす。いつまで続くかわからないその生活に、愛を探しながら、颯爽と逞しく生きていく女たち。夜街にさまよう女と男が体を重ね、また夜があける―。

 

S原:これは、日活ロマンポルノのリブート企画らしい。あなた、ロマンポルノ観たことあるやろ?

Y木:あるで。

S原:ぼくは観たことないねん。どんな感じ?面白い?

Y木:べつに面白くないよ。なんちゅうか、ちょっと変わったところがあるというか、そういうのがあるから観てたんやけどな。もう一回、観ようとは思わんな。

S原:そうなんや。印象に残っている作品とかある?

Y木:覚えてないなあ…(苦笑)

S原:AVとは違うねんな。

Y木:そりゃ違うよ。「映画」やもん。もちろん低予算やし、自主製作の延長みたいなもんやけど…どうなんかな。要するに、当時はロマンポルノの体裁があれば、なにをしてもOKという時代やったやろ。

S原:映画の本では、よく「その分、監督の個性とか作家性が発揮できた」と書かれてるよな。

Y木:そうそうそう。たぶん、そういう面白さがあったんやと思う。それに、昔はヌードとか濡れ場とかそういうのを見る機会が少ないから、やっぱりそういう目的で観にいってた人もおるんやろうけど、もうそういう時代ではないもんな。

S原:確かに。この映画の解説によると、『生誕45周年を迎える成人映画レーベル「日活ロマンポルノ」リブートプロジェクトの1本である』とのこと。ロマンポルノは『「10分に1回絡みのシーンを作る」「70~80分前後の上映時間」「全作品が同じ製作費」「撮影期間が1週間程度」という条件のもと、17年間に約1100作品が継続して公開された。条件を守れば比較的自由に作ることができたため、創意工夫に富む若手監督たちが新たな表現に挑み続けた結果、「最もセンセーショナルな作品レーベル」として国内外で高く評価されている』らしいわ。

Y木:まあ時代もあると思うけど、どうなんやろうか…ちょっと褒めすぎとちゃう?「低予算のわりに野心的でちょっと面白い」という映画やと思うけどな。

S原:でも上手く言えんけど、同じ低予算、B級といってもホラーやSFとは違うような気がするんやけどな。

Y木:そうかな?よくわからんな、そのへんは。というかどっちも興味がないし(笑)

S原:でも、こういうポルノをリブートする企画がでるってことは、やっぱりみんな思い入れがあるんとちゃうやろか。

Y木:しかし、この企画なあ…リブートかあ。こんなことをしてもしゃーないやろ、というのが本音やな。

S原:いまさらロマンポルノかよ、ってこと?

Y木:そうそう。

S原:実は、長々とロマンポルノの話をしたのは、この映画はロマンポルノありきで成立していると思うからやねん。演出もそうやし、オマージュなんかもあるような気がする。そういう企画と言えばその通りなんやけど、(ロマンポルノを)全然知らないぼくからすると、なんか居心地が悪いねんなあ。

Y木:狙ってるのが分かるってことやろ?あざといというか。

S原:あざとい、とまでは言わんけど…ストーリーは、娼婦3人の話やねん。

Y木:どんな話?

S原:裕福らしい引きこもりの若い男を常客としている娼婦、妻を亡くした老人に毎回指名されるが性行為をしない娼婦、子ども(保育園児くらい)をベビーシッターに預けて、仕事を続ける娼婦の3人のエピソードが主なんやけどな。

Y木:どれも湿っぽいな。そのへんがロマンポルノなんやろな。結局はどうやったの?

S原:うーん、まあまあ面白いねんけど… 上手く言えんけど、どっちつかずになったように思う。

Y木:エロなんか、ドラマなんか、どっちを見せたいねんってこと?

S原:そうやな。ドラマとしては、ちょっと面白い場面もあるし、飽きずに最後まで観れるねん。でも、肝心の濡れ場がストーリーを邪魔している、と感じたわ。正直に言って、ヌードとかないほうが良かったように思う。

Y木:それは、ロマンポルノとちゃうやん(苦笑)

S原:そうやねん。だから、すごく変な気分になる。それがこの映画の魅力でもあるんやけど…それにナイスボディの女優たちじゃないねん。胸が大きい女優なんて山ほどおるやろ?だから、これは「狙い」やろな。リアルと言うのかなんと言うのか…でも、主人公を演じた女優(井端珠里)は良い雰囲気でな。ベッドシーンよりも、黙って座っているときの表情とか、印象に残る。

Y木:それぞれの風俗嬢のエピソードが並列した感じ?

S原:うん。基本的には3人が娼婦として生きていく姿を描いています。ほかにも、違法な風俗を経営している店長とかのエピソードとかお笑い芸人の舞台がからんだりするけどな。こういう世界って、いわば人間の「裏側」やろ?もっとこう…深みと言うか哀しみというか、そういうのを期待したんやけど、意外とあっさりしてるねん。あと演出もコメディ風になったり、シリアスになったりする。これも狙いやろうけど、個人的にはあんまり成功してないように思う。

Y木:あーもっとちゃんとドラマが観たいってこと?でもそれは普通の映画に求めることであって、ロマンポルノに求めることとちゃうんちゃう?

S原:そうなんやろうな。だから、「ロマンポルノ」が好きな人にはこれくらいでちょうどええんかもしれん。とはいうものの、そういうマニアというか好事家が世の中にどれくらいいるのか……この企画が商売として成り立つのか?と言われると、ちょっと微妙かもな。

Y木:そやな。

S原:といいつつ、野心的な企画を実現したのは、やっぱり評価したいんやけどな。

Y木:ロマンポルノをリブートする企画を評価する…か。おまえの言いたいことはわかるけど、おれには、なんとも言えんな。

S原:さあ、みなさん。何度も出る濡れ場が意外とエロくない不思議な映画ですが、ジメジメとした雰囲気は楽しめます。突っ込みどころも多いですが、一見の価値はあるでしょう。むしろ女性の意見を聞いてみたいです。みなさん、ぜひチャレンジしてくださいませ!