あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

日本産オムニバス映画祭り!「心霊写真奇譚」(2006年)「パルコフィクション」(2002年)

心霊写真奇譚 [DVD]

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S原:さあ、お待ちかね。日本のオムニバス映画祭りのラストですよ!今回も、短編作品の特性を考えて、いつものおっさん2人のトークではなくS原のみが短くコメントをしていきます!

 

(心霊写真奇譚のあらすじ)

心霊関連でもっともポピュラーな“心霊写真”をテーマにしたジャパニーズ・ホラー「思い出のポラロイド」「届けられたモノ」「望遠男」「被写体のない写真」「見ている」5作品をオムニバス形式で収録。キャスト陣は三宅梢子仲村瑠璃亜松山まみ優木まおみ近野成美ほか。

 

「 心霊写真奇譚 」

 

①被写体のない写真(寺内幸太郎監督)

山道をドライブしていたカップルが、ふらふらと歩く若い女性(琴美)を見つける。琴美は無言で手には「タスケテ」というメモが握られている。じつは、琴美は、兄とその恋人とハイキングにきていたのだが、道に迷い首つり自殺者を見つけてしまっていた。あわてて逃げてきたが、自殺者の足元には「タスケテ」というメモと心霊写真(幽霊?顔?が写っている)があって…という話

→  このあと、もちろんカップルと逃げてきた女性は怖い目にあうことになります。リュックの中に頭部があったり、ポケットから心霊写真がでてきたり、携帯電話に「タスケテ、タスケテ」という声が入っていたり、というエピソードが続くものの、なんというかそれぞれのエピソードが噛み合ってなくてあまり怖くないです。惜しいのは、琴美が「遺体が可哀そうだから、戻って眼を閉じてあげようよ」と急に言い出すところ。いきなり琴美の行動が意味不明になってしまうシーン、ここは気味悪かった(しかも後になっても説明がない)。作品全体にこんな雰囲気がもっとでていれば、もっと怖い作品になったと思うが、ちょっと残念。

 

②見ている(山本清史監督)

主人公(女子高校生)が通っている高校の掲示板で「心霊写真」として貼りだされたものがある。それは、合唱コンクールのときに、クラス全員が主人公を見ているという気味の悪い写真だった。主人公はあわてて、壁からはがして写真を持って帰る。翌日、その写真を撮影した新聞委員が死亡していて…という話。

→  これもあまり怖くなかった。一番残念なのは、肝心の「クラス全員が主人公を見ている写真」があまり怖くないこと。次に残念なのは「クラス全員が主人公を見ている」意味が、後の物語にうまく絡まないこと。アイデアは良いのにもったいない。ラストは、窓に無数の手形がついているのを主人公は発見 → だけど主人公の住んでいる部屋(マンション)は3階なのに!…というオチがありますが、うーん。

③思い出のポラロイド(白石晃士監督)

男女の友達5~6人くらいがクリスマスパーティをしているところ、1人がポラロイドカメラを出してきて、このカメラは心霊写真がとれると言い出す。遅れてパーティにやってきた友人(男性)との関係がうまくいってないところもあって、ギクシャクした雰囲気になってしまう。気分転換に見たテレビが、すぐ近くの場所で殺人事件が報道していて…という話。

→  今回の中で一番ストーリーに起伏がある作品。友人関係(恋愛関係)はあまり上手く描けてないが、殺人事件の犯人がこのグループにいるかも…という流れは悪くない。一番のみどころは、殺された女子高校生の写真の眼がグルグルと動くところ。黒目と白眼のバランスが変で、ここはかなり気味悪い。凝った部分も多いので、楽しめる人もいるかも。

 

④望遠男(寺内幸太郎監督)

スイミングクラブのインストラクター美穂をストーカーしているカメラオタクが、(内緒で望遠で写した)美穂の写真に心霊が写っていることに気づく。危険を知らせたいが、ストーカー行為もバレたくない、はたしてどうするか…という話。

→  これが一番惜しかった。単純な話なのにわかりにくく、カメラオタクも陰湿なのか美穂を助けたいのかキャラクターがどっちつかずで、感情移入しにくい。結局、ストーカー男自身が、霊であることが示唆されて終わるが、それならいままでのストーカー男の行動に矛盾があるように思う。怖い描写やショッキングな場面を優先した結果、このような作品になったのかもしれないが…

 

⑤届けられたモノ(白石晃士監督)

住所だけ書かれていて、差出人の名の無い汚れた封筒を調べるために、主人公(OL)と友人の男性(霊感あり)が、山梨県白沢村へ行く。そこには気味の悪い一軒家があって、おそるおそる中に入っていくと…という話。

→  個人的には、これが一番ダメやった。田舎の不気味な家屋(お化け屋敷)という使い古された題材やけど、それは一向にかまわない。これは、物語でなく雰囲気を味わうタイプの作品やと思うので。でも、いままで使い古された演出まで真似ることはないでしょ、というのが本音。ありきたりすぎて怖くないです。短い話なのに呑み込みにくいことや、ラストに(違うところに?)封筒が郵送されるというオチも弱い。集落の人の存在ももっと気味悪くできたはず。残念なとこだらけ。

 

(全体として)

正直に言って、どれも怖くなかったです。自分が大人になってしまったから、かもしれませんが、やっぱり短い作品はもっとテーマを絞ったほうが良いと思う。どの作品も、雰囲気もストーリーも登場人物も恐怖の演出もすべて凝ったものにしよう欲張ったのかもしれないけど、結局中途半端に終わってしまったと思う。

でも、一方で違う感想もあります。つまり、作り手側がそういう(作品をよくしようという)意気込みやチャレンジ精神はあって当然だし、そこは評価したいなあ…ということです。

なんにせよ、スタッフもキャストも色々と苦労したはずなので、勝手に印象だけで論評しているような自分の立場はお気楽なもんだと思った次第です……(笑)

 

「 パルコフィクション 」

 

(パルコフィクションのあらすじ)

『ウォーター・ボーイズ』の矢口史靖鈴木卓爾がコンビを組み、渋谷のパルコをテーマに撮ったオムニバスフィクション映画。『パルコ誕生』『入社試験』『バーゲン』『はるこ』『見上げてごらん』の5編構成。田中要次を始め豪華キャストが出演。

  

①『パルコ誕生』(矢口史靖監督)

ゴミからはじまって、「風が吹けば桶屋が儲かる」方式に、つぎつぎにナンセンスのつながり、最後は胸部レントゲン写真を重なたら「PARCO」という文字になる…という話。

→  骨の画像を重ね合わせて「PARCO」という文字が出来たからと言って、一体なんなんだろうか。あまりにくだらなすぎる…ツッコミも酷評も、どんなコメントも出来ないレベルです。

 

②『入社試験』(矢口史靖監督)

パルコの面接試験に臨んだ花子は、帰り際、面接官に一通の封筒を渡される。「この封筒を最後まで開けなかったら、合格ですよ」。果たして…という話。

→ そのあと花子は、結局封筒をあけずにパルコの職員に採用 → ある日、(封筒の存在を思い出して)を開封してみる → 手紙には〇〇へ行け、××へ行け、ということが書いてある → 主人公が、手紙の通りに行動すると、最後はパルコの看板に顔を突き出しておしまい。まあ、なんというか…最後にクスッと笑ってもらうタイプの作品なのかもしれないが、ぼくは失笑さえも起きなかったです。この主人公(女優)は飄々とした雰囲気でなかなか良いが、褒めることが出来るのはここだけ。

 

③『はるこ』(鈴木卓爾監督)

テレビでパルコのCMが流れる度に自分が呼ばれていると勘違いする祖母・はるこがいる。孫娘はパルコに名前を変えてくれるかCMを中止してもらうために、男友達と一緒にパルコまで行く、という話。

→  途中で、理由なくおばあさんが何故か子供になったりするシーンがあって、そこはコメディと気味悪さが半々でなかなか凝っているともいえる。でもなあ、この作品でそんな凝り方って必要やったんやろうか?ラストは、男友達が看板にぶつかってPARCOはPIRCOとなって、おしまい。みなさんに聞きたいんやけど、PARCOがPIRCOに名前が変わって面白い…?別にどうでもよくない…?

 

④『バーゲン』(矢口史靖監督)

今日からパルコはグランバザール。しかし、店員の鈴子は目をつけていたワンピースが次々と売れていくのが気懸かりでならない。そこで彼女は人目を盗んでそれを隠し、夜中、こっそり取りに戻るのだが、警備員から逃れようとしてビルの隙間に挟まってしまって…という話。

→  パルコの売り場、バックヤード等の店内や店外をロケで利用した作品で、この中では一番「パルコフィクション」というテーマに合ったものと言えるかもしれない。とはいうものの、これも観ていて疑問だらけ。とくにビルの隙間に主人公が挟まった後の主人公の行動は、不自然すぎる(当然やるべきことをしない)。最後は、くしゃみの勢いで脱出するが、観ていて「だから何なんだ?」とつぶやくこと必至。

 

⑤『見上げてごらん』(鈴木卓爾監督)

上を見るとクラッとしてしまう、世にも稀なスカイ・スクレーパー症候群に悩まされるパルコの店員・美都子。クラっとするたびに警備員の大須が助けてくれる。ある日、大須から食事に誘われるが…という話。

→ これは主演の女優の雰囲気が良い。良いのはそこだけ。話自体は大したストーリーではない。それはいいんやけど、どうでもいい話をどうでもいい演出で見せられても感想はナッシングです。この設定なら、もっと主人公2人には色々なドラマ(感情)が生まれるはず。そもそも作り手側は、そんなものどうでも良かったのかもしれませんが…(ため息)

 

『ポップコーンサンバ』(鈴木卓爾監督)

シネクイントの劇場スタッフが、リズムを取り踊るエンディング。

→ 80年代のダサい音楽グループのMVみたい。これを観た99%の人は、20分後には忘れてると思う。

 

(全体として)

結論から言うと「パルコフィクション」は、今回の紹介シリーズのなかでぶっちぎりの最下位ですね。鑑賞中に頭に浮かんだのは「なぜ?」「どうして?」というクエスチョンマークだらけ。

パルコから依頼のあった広告代理店が、こんな企画をしたのだろうか?パルコを舞台にした物語なら、なんでもよかったのだろうか?

映画の撮影前にだれか(企画、脚本などを)チェックしなかったのだろうか?それとも、お偉いさんの意向で、映画の出来や内容自体はスルーだったのだろうか?単純に、これは宣伝やからええねん、と割り切ったのだろうか?

2人の監督の作風がどうとか、自由にパルコという題材で遊んだ映像集とかいうレビューをどこかでみたが、そもそもそんなレベルで語るような作品だろうか?

そしてなによりも、、、これを観て『パルコに行きたい!』と思う人がいるのだろうか?

 

 さいごに(S原より)

すでに書いた通りですが、「パルコフィクション」がひどすぎて2本を並べて話すことも出来ません。このブログは、一応ワゴンコーナーにありそうな映画(とくにマイナーな映画やB級映画)をとりあげる趣旨なので、面白く可笑しく作品を斬るか、意外と良いところを語りたいと思っていますが「パルコフィクション」だけは、ギブアップです。

ハッキリ言って「心霊写真奇譚」もお世辞にも良い出来ではないです。でも、観客を怖がらせよう、ゾクッとさせてやろうという意図はわかる。結果として失敗しているかもしれないが、チャレンジはしている。その意気は買いたい。

「パルコフィクション」は、宣伝のために予算計上して、適当に俳優をあつめて、作り手側が覇気もなく作ってる…そんな映画が面白いわけがない。本気で作ってこれなら、失礼ながら映画製作は向いてないんじゃないですか?と言うしかない。

「パルコフィクション」を好きな人には、今回は辛辣な紹介になってしまったかもしれませんが、自分にウソはつけないので、あしからずご了承ください。

それにしても…いやあー、しょもなかったなあああー!!(笑)

これにて、オムニバス映画特集はおしまい!