あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「マンダウン 戦士の約束」(2016年)の巻

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S原:今回はこれです、が…

Y木:なんやねん。いきなり元気がないな。

 

(あらすじ)

海兵隊員ガブリエル・ドラマー(シャイア・ラブーフ)は、妻ナタリー(ケイト・マーラ)と息子ジョナサンを故郷に残し、アフガニスタンへと向かう。戦場での任務は過酷を極めたが、故郷で待つ妻と息子の存在がガブリエルを奮い立たせた。そして遂に、故郷アメリカへの帰還を果たす。
しかし、辿り着いた故郷の街は、建物や橋が崩壊し住人たちの姿も消えていた。まるで異世界に迷い込んだかの様に、懐かしき面影は失われていた。
この街に一体何が起こったのか?ガブリエルは、共に帰還したデビン(ジェイ・コートニー)と、荒廃した街でナタリーとジョナサンの行方を探すが―。

 

S原:いやー、この映画は参ったなあ…はー(ため息)

Y木:はずれってこと?

S原:うーん、外れと言うか何と言うか。ひたすら主人公が暗くてマジメやから、なんか観ているこっちも、気分が重くなるというか。ワゴンコーナーでDVDの裏のあらすじ(上記)を読んだら、サスペンス映画やと思うやろ?こういう映画は好物やから期待してゲットしたんやけど、そんな映画じゃないねん。それで、まずガッカリでな。

Y木:「荒廃した町の謎を探る」というミステリー系映画じゃないの?

S原:全然ちゃうねん。いきなりネタバレでごめんよ。要するに、主人公は海兵隊員でPTSDにかかってるねん。戦場で心に深い傷を負って帰宅する。街は普通通りなんやけど、主人公の眼には「荒廃した町」にみえてしまう。(救い出すつもりが、逆に)妻子も襲ってしまう…というわけやな。

Y木:うわー暗いなあ…戦地から帰ってきた男のトラウマの話か。

S原:雰囲気やテーマが重いのはええねん。そういう映画でも良作はいっぱいあるやろ。でも肝心の演出がイマイチでなー。時系列というか、回想シーンというかバラバラで編集してるねんけど、効果的でなくただ単に分かりにくいだけ…そのまま素直に撮ったほうがよほど印象深かったと思う(苦笑)監督は、ネタバレもしたくなかったし、撮り方も凝ったつもりで、こういう構成になったんやろうけどな。

Y木:ということは、銃撃戦とかもないのね?

S原:ほとんどない。そういう映画じゃなくて、トラウマを抱えたおっさんが、医師と面談したり、彷徨う姿をみせられるだけの映画。なんか茶化すのもやりにくいし、困った映画やわ。例えて言うなら、『近所にものすごい人の好いおっさんが経営している弁当屋さんがあって、そのおっさんのことは好きやけど、弁当はおいしくない。だから、その弁当屋さんでは買わない』、そんな感じかな。

Y木:おまえの例えって、例えになってないねん。

S原:べつに能天気な映画ばかりがええわけじゃないで。だって「悪夢の銀河鉄道」ばっかり観てたら、脳みそが溶けてしまうやろ?

Y木:溶けるやろな。

S原:監督はトラウマを描きたいんやろうけど、もうちょっと工夫しないと、これじゃ伝わらん…「ディアハンター」(1979)を見習え、とかは言わんけどな。

Y木:「ディアハンター」みたいな映画は、そうそう出来ないやろ。

S原:まあな。主人公と息子とのやり取りとか、最後まで妻が怖がったままとか、悪くないシーンもあるねんで。

Y木:あー、奥さんは辛いやろな。

S原:いや、奥さんはちゃっかり浮気してたんやけどな。

Y木:なんやねん。奥さんもあかんやないか。

S原:どちらにせよ兵隊の哀しみが伝わらないねん。その分、観ているとイライラするというか。なんかこの映画観てると、主人公に言いたくなるねん。「わかった、わかった、おまえがマジメなんはわかった。ちょっと休めって。ぼくのDVDを貸したるから。な?」って。

Y木:おまえにDVD借りたら、余計に疲れるわ。この映画の主人公の「悪夢」とか「不条理」のような感じでもないの?そういう映画もあるやん。

S原:ぼくは、感じなかったなー。いや、この映画で感動してる人もおるやろうから、それは申し訳ない。そういう人はごめん。そういえば昔「ジェイコブズ・ラダー」(1990)ってあったやろ?

Y木:あー、あったなー。エイドリアン・ライン監督の戦争トラウマ映画。

S原:あれも死ぬ瞬間に走馬灯のようにみる映像が、映画のストーリーになってたやろ。最後の最後に観客が「あ、主人公は死ぬところなんや。その瞬間にみた話やったんや」と分かる。どんでん返しというか。あっちのほうが上手やったな。

Y木:帰還兵の切なさが上手く表現出来てないのね?

S原:そうやねん。ほかの例で言うと、マイケル・ダグラスの「フォーリング・ダウン」(1993)ってあるやろ?

Y木:あったな。でも観たかなー、覚えてないなー。

S原:あれは戦争とは無関係やけど、ストレスで頭がプッツンした男が、街中で無茶苦茶する話やねん。でも妻子に会いたい気持ちだけは純粋でな。最後は妻子のところに(むりやりに)会いに行って、撃たれるねん。頭のおかしい奴やのに、その撃たれて死んでいく姿をみると、なんとも切ない気持ちになるねんなー。でもこの映画は、そういう気持ちにならなかった。残念。

Y木:まーそういう映画もあるでしょ。

S原:そうやね。ワゴンコーナーにはまだ見ぬ小宇宙がたくさんあるってことやな。

Y木:どうでもええ宇宙やけどな…

S原:さあみなさん!ひたすら窮屈で爽快感のない、でも切なさも感じない映画が観たい人、映画で描かれたトラウマが大好物の人、そして中途半端な出来で、つっこみにくくて、なんかお尻がムズムズしちゃう映画が好きな人は、マストバイですよ!

Y木:いや今回の紹介では、だれも買わんて…