S原:今回は解読します!
Y木:解読?
(あらすじ)
禁断の暗号に触れたハッカーたちが血塗られたゲームに巻き込まれていくサスペンススリラー。親友に誘われマルコム教授の部屋を訪れた女子大生のサラ。マルコムたちはバチカンのデータベースに侵入し、聖書の予言を盗むという計画を目論んでおり…。
S原:これは、トンデモ科学というか似非ノンフィクションのサスペンスというか、そういうのが好きな人は面白がると思う。
Y木:トンデモ科学?
S原:たとえば、ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」(ダン・ブラウン)とか「神々の指紋」(グラハム・ハンコック)とか流行ったやろ。参考文献とか歴史とか現象とか、虚実を上手くハイブリッドして面白くするみたいな。
Y木:そういう系な。わりと根強い人気があるんちゃうの?
S原:そう思う。ぼくも最初に読んだときには、すごく面白かったしな。「そうか、世界にはこんな隠された謎があったのか!」「くそー知らなかった!」みたいな。
Y木:おまえ、純粋やなあ(苦笑)
S原:まあネットで検索すると「あそこが間違ってる」「ここがおかしい」とか書かれてるから、すぐに分かるねんけどな。この映画は、そういう感じのサスペンスです。
Y木:聖書の予言を探っていくサスペンスなんやな。
S原:そうです。聖書を立体化(4次元化?)する映像とか、なかなか面白い。ただなあ、どうにも腰砕けやねん。
Y木:腰砕けか。根拠が弱いんやな。
S原:イエース。これって謎解きとか謎の核心へのアプローチするところを観たいわけやん。でも、そのへんがすごく雑で薄い。似非科学でもええから上手く嘘をついてほしかった。
Y木:なるほど。
S原:話は地味やねん。ほとんど部屋の中です。サラと言う女子大生が、友人(ゾーイ)と一緒に、ゾーイの恋人のペントハウスに行きます。そこでは、なんと癖のあるハッカーたちが、たくさんのPCをならべて怪しげな作業をしています。ハッカーたちはバチカンのデータベースにアクセスしようとしています。
Y木:なんで?
S原:聖書の原典とされる「創世記」(最古のモーセ五書?)の預言に秘められた暗号を解読するため(らしい)です。解読する方法は、聖書にある神の言葉を3次元データとして解析すること(らしい)です。そして人手が足りなくて、サラはなんとなくハッキングの手伝いをさせられます。
Y木:えー知らん人にいきなり手伝わせるの? 適当なハッカーたちやな。
S原:ハッキングは成功します。そのとたん、停電が起きて閉じ込められて、システムが暴走します。閉じ込められたサラたちは、暗号解読とともに、部屋からの脱出を試みる。こういう感じです。
Y木:確かにB級ぽいけどわりと面白そうやん。ただ、たしかに「枝葉」が大事なところかもな。
S原:そうそう。わりと話は面白いねん。専門と言うかそれっぽい言葉も使うねんけど、ちょっと説得力が薄いような……。
Y木:最後は謎を解いておしまい?
S原:いや、後半になると雰囲気が変わるねん。バチカンのコンピューターにアクセスしたあと、4次元や5次元、7次元の世界に入っていこうとするねんけど、このへんが分からなかった。そうしているうちに、超常現象が起きだします。
Y木:世界中で?
S原:いや部屋の中で。
Y木:スケールが小さいなあ。
S原:これ観てて思ったんやけど、製作者とか脚本家は途中で怖くなったんとちゃうかな?
Y木:なんで怖い?
S原:やっぱりトンデモ解釈で聖書を扱うと、冒涜してると非難される可能性があるやろ。
Y木:あー熱心な信者とかに怒られるとか?
S原:そうそう。そういうのにビビったとぼくは想像してるねんけどな(笑) どちらにせよ、リサーチ不足で薄味な上に、後半は超能力合戦みたいな変な展開になってた。あと、この映画の最大の問題点は……
Y木:最大の問題?
S原:ハッカー集団のなかに大学教授がおるねん。そいつは生徒に手をだしていて、その女子が「わたしとハッキングとどっちが大事っちゃー!?」って、怒りまくる。周りは嫌な顔をする(当たり前だ)。なので仕方なく外に一緒に行きます。教授から「君を愛しているに決まってるじゃないか」とか3流のホストみたいなことを言われて、女子はあっさりと機嫌が直ります。
Y木:単純やなあ……
S原:2人で仲良く買い物にいきます。行先はドラッグストア。それで「あーこれこれ、買わなくっちゃ♡」「きみも好きだなー♡」ってゲットしたのは避妊具♥
Y木:あのー……その場面、要る?
S原:それから部屋に戻って、チョメチョメのムードになります。「いけない! ルナ先生」みたいな展開です。あのですね。言っておきますが、隣の部屋ではバチカンにアクセスして5次元がどうとか、幽霊をみたとか大騒ぎしてるんですよ? でも女性は気にしません。自分の性欲を優先します。性欲と同じくらい仕事も大事にする島耕作を見習ってほしかったところです。
Y木:島耕作なんか見習わんでええわ。
S原:その女性はまた興奮して「いつものように抱いてほしいっちゃ、いますぐに~!」みたいな感じで、教授に迫りまくります。気分は漫画エロトピアです。
Y木:あー懐かしいな。汚らしいエロ本やったなあ……(苦笑) それはええけど、結局バチカンの解読はどうなったの?
S原:忘れました。
Y木:おまえなー。
S原:とにかく、性欲キャラがメインストーリーを邪魔して集中力をかき乱してました。というわけでみなさん。やりたいことは分かるのですが、どうも技術と覚悟が腰砕けになった感じのB級映画でした。ハリウッドで潤沢な製作費があったら印象が変わったかもしれませんが、なんにせよ教授と教え子とのチョメチョメエピソードは要らないです。これ系の映画が好きな人のみ、どうぞ~!