S原:今回はアクション!というよりもケンカ!
Y木:ケンカの映画なんや。
(あらすじ)
歌舞伎町でバーを経む吾郎はケンカ沙汰の絶えない日々を送っていた。ある日、彼につきまとう少女アヤが元ボクサー、龍平と出会ったことで大事件に巻き込まれる。龍平もまた吾郎と同じく、闘いに飢えた男だったのだ。
S原:これ、プロレスショップで見つけたんやけどな。
Y木:ええ年して、どこに行ってるねん。
S原:「この映画、面白かったですか?」って店長に聞いたら、「いやあ」って苦笑いしてた。
Y木:ふーん。で、実際に観てどうやったの?
S原:メチャクチャやった。
Y木:まあ、出来は悪いやろうな。
S原:いや作品としてはまあまあやと思う。この映画ではメチャクチャなのは、キャラクター。とにかく、すぐにケンカする。
Y木:そりゃ、そういう映画やん。ケンカの場面が見どころなんやから。
S原:限度があるって!(笑) 主人公は2人(魔裟斗と澤田謙也)。とにかく、この2人の格闘の場面を撮りたかったみたいで、ことあるごとにケンカになる。女性にからんだ男をやっつけるのはまだ分かるけど、繁華街でチンピラと遭遇するだけで顔面を殴り、自分の店(バー)の前で話しているだけのヤングたちを蹴り飛ばし、タバコをすてただけの中国人を追いかけて殴りまくる。それも普通のケンカじゃなくて、もう半殺しやんねん。たぶん何人か死んでると思う。
Y木:それは……(苦笑)
S原:もう狂犬やで、狂犬!(笑) 魔裟斗も澤田謙也も格闘シーンはさすがやけど、やっぱりそこに至る過程をみせてほしい。一応、映画なんやから。
Y木:なるほど。
S原:2人とも演技が上手いわけじゃないからセリフを減らして「沈黙」の場面を多くすればいいのになあ。立っているだけで異様な迫力はあるねん。なので「静かに動かない場面」をいれれば、もっと格闘の場面が生きるはず。
Y木:ずっとケンカしてるわけちゃうやろ。
S原:ずっとケンカしてるねんって!(笑) Vシネマでも、普通は我慢する⇒キレる⇒アクションシーン という流れやん? この映画の登場人物たちは、まったく我慢しない。
Y木:気が狂っているという設定なんちゃうの?
S原:あーそうかも。「我慢できない」「モラルがない」という設定かもな。でもなあ。だったら普通の人物をだして「おい、そこまで痛めつけるようなことじゃねえだろ」とか「なんでもかんでも、他人に嚙みつくなよ」とかセリフを言わせればええやん。
Y木:なんかダサいセリフやけど、まあええわ。で、話は?
S原:話は薄味です。舞台は新宿。魔裟斗は元格闘家。で、かつて喧嘩で相手を死なせ、刑務所に入っていたらしい。そういう男がふらりと現れて、意味なくケンカをはじめます。一方、澤田謙也は新宿で小さなバーを経営しています。これも、ことあるごとにケンカをしています。同時に、訳アリっぽいサラリーマン(近藤芳正)がフラフラしている様子がでてきます。家に帰ろうとしなかったり、ビクビクしたり。
Y木:あー、あとで主人公たちと絡むんやな。
S原:いや、最後まで関係なかった。
Y木:なんやねん、それ。
S原:ほんまになあ。なんの意味があったんやろ……(冬の海をみる)
S原:で、キャッチで小遣い稼ぎをしているヤングな女性(アヤ)と魔裟斗が出会う。暇なので、新宿をウロウロします。で、また適当にケンカします。ひょんなことから、中国マフィアが覚せい剤の取引する現場にでくわす。また、そこでも魔裟斗が訳も分からず大暴れします。その間に、アヤがなんとなく覚せい剤を盗んでしまって……という感じです。
Y木:あかんやろ、なんとなく覚せい剤を盗んだら(苦笑) 最後は2人がバトルしておしまい?
S原:一応、そうなるけど短かった。なので、2人の戦いが見たい人には物足りないんちゃうかな。ただ、それぞれの格闘の場面はさすがにすごい。そこだけみると面白いねんけどな。まあ、ちょっと残念やった。さっき言ったけど、こういう映画は、「静」と「動」を意識すれば、良くなるというのが、ぼくの持論やねん。あと、主人公2人の演技が下手すぎる(とくに魔裟斗)とか言っている人もおるけど、ぼくはそんなに気にならなかった。プロの役者でも変な奴はおるからな。もちろん、上手くないしセリフを言うのに精一杯なんやけど。
Y木:言わんとすることは分かる。ただ、このパッケージでは観る人を選ぶやろうな。
S原:さあ、みなさん。この映画は格闘場面さえ良ければOKという人にはおススメです。魔裟斗、澤田謙也の魅力も十分です。意外にVシネマっぽくもないので、あれ系を期待すると厳しいかも、です。ストレスの多い世の中ですが、この主人公たちみたいにすぐに喧嘩せずに映画でもみてリフレッシュしてくださいませ~!