S原:さあ、対決映画シリーズ、最後は「隠れた佳作」と言われているこれ!
Y木:「戦闘機対戦車」か。懐かしいな。昔、観たけど全く覚えてないわ。
(解説)
ドイツの敗色濃い北アフリカ戦線を舞台に、飛べなくなった戦闘機に乗った二人のアメリカ人兵士と、狂気に駆られた将軍の指揮する一台のパンツァー戦車の追撃を描く。少ない登場人物、序盤の戦闘シーンはライブ中心、背景は砂漠だけと低予算まるだしの作品だが、戦闘機と戦車の一騎討ちというプロットにそれぞれ飛行不可能、狂った指揮官というハンデを設けた事が効を奏し、極めてユニークな戦争アクションとなっている。低予算を逆手に取ってアイディアでカバーした好見本のTVムービー。
S原:この解説は上手く書かれています。本当にその通りやねん。
Y木:これ、昔サンテレビでよくやってたやろ?(S原とY木は関西生まれ・関西育ち)
S原:関東やったら、テレビ東京でよく放映されてたらしい。結構、オールド映画ファンがこの映画を取り上げています。
Y木:まあ、テレビにぴったりやな。
S原:うん、たぶん短い(75分)のも理由の一つやと思う。あらすじは超単純です。飛べなくなった飛行機(アメリカ軍)を、ドイツ軍の戦車が延々と追いかける。ほんまにそれだけやねん。
Y木:スピルバーグの「激突」(1971)と似てるよな。
S原:たしかに似てます。同じテレビムービーやし。ただ、やっぱり「激突」の方が面白い。こっちも悪くないけど、ドキドキハラハラはせえへんかったわ。
Y木:まあ、戦車もノロノロやし、飛行機も飛べなかったらノロノロやしな。
S原:うん。一応ストーリーを話すと、時代は第二次世界大戦の1942年。主人公のアメリカ軍のパイロットです。北アフリカ戦線を飛んでいましが、燃料補給のためにイギリス軍の補給基地に寄ります。そこで、ドイツ軍が設置した地雷の処理を命令されます。場所は砂漠です。主人公はあまり気乗りしませんが、イギリス人のパイロットとともに地雷処理(空から爆弾を落とす)に向かいます。砂漠にドイツ軍をみつけます。戦闘中にイギリス人が負傷し、飛行機も損傷をうけます。空を飛ぶことは出来ないけど、地上を走ることは出来る。無線で援軍を呼んでも来ない。そうこうしているうちに、ドイツ戦車が迫ってきて……という話です。
Y木:そこから延々と鬼ごっこが始まると。
S原:イエス。ドイツの将校がプッツン野郎でな。とにかく、延々と飛行機を追いかける。飛行機はのろのろと逃げる。たまに、崖をジャンプする(少しでけ飛べる)。またドイツ戦車はしつこく追い回す。
Y木:まさに「激突」やな。
S原:そうそう。テレビ放映時の吹き替えも収録されていて、マニアも喜ぶと思う。ぼくも吹き替えで観たけど、もう「あの頃」のまんまで懐かしかったわ。ただ、ちょっと不満もある。
Y木:どこ?
S原:すこしストレートすぎるのよな。なので途中でややダレるというか。単純明快なのはええけど、やっぱり観客が、途中で「おお!」と思わせる工夫が欲しい。要するに飽きるのよな。相手の裏を読む、とかもほとんどないし。
Y木:「眼科の敵」(1957)みたいな?
S原:そうそう。あそこまで上手く作るのは難しいと思うけど、いろいろ出来たはずやねん。砂漠で岩地もあるから、見えないように工夫してごまかすとか、大破したようにみせかけて逆襲するとか、そういうのがないのよなあ。そこが残念。
Y木:まあ、あれちゃうの? お酒でものみながらのんびり観る映画でしょ。
S原:あーまさに正月に観るのにピッタリ。正月用としては「フラッシュ・ゴードン」(1980)と双璧かもよ(笑)
Y木:最後は?
S原:ネタバレ全開になるけど、主人公たちは白いハンカチを振って降伏のサインをだす。でも狂ったようになったドイツ将校は「捕虜はいらないぞ!」と言って、主人公たちを殺そうとする。あまりの狂信ぶりに、ドイツ側の部下が将校を撃ち殺す。戦車が止まり、ドイツ軍人が下りてくる。追い詰められた主人公は殺されると思って覚悟するけど、ドイツ軍人はそっと水をさしだす。主人公は水を飲む。お互いに会話はない。
Y木:ええラストやん。
S原:なかなか味わいのあるラストやった。でもキャラクターに感情移入するほどではないから、水を差しだすところもグッとこなかったのが惜しい。
Y木:なるほどな。
S原:というわけで、みなさん。なんとも懐かしいテレビムービーですが、いまの映画とはまったく雰囲気が違います。そういうところも味わってください。傑作ではありませんが観て損はありません。意外に売っていないので、中古店で見つけたらマストバイですよ!
(VHSのデザインが良い味です)