あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

70年代のややカルト映画特集!「パワープレイ」(1978)の巻

パワープレイ [DVD]

Y木:おー、いかにも70年代って感じのジャケットがええ感じやなあ。

S原:パッケージデザインだけでなく、中身も骨太な映画を紹介しますよ。

(あらすじ)

テロの続く軍事政権下のヨーロッパ某国。ついに起きた経済大臣の誘拐殺害事件を機に、大統領はテロリスト一掃命令を下すが、秘密警察の方針は無関係の犠牲者も次々と出していた。政府の方針に危機感を抱くルソー教授は退役間近のナリマン大佐にクーデターを持ちかけるも危険すぎると判断されてしまう。だが、知人の娘が捕らえられ拷問の末に殺されたことを知ったナリマンは考えを改め、極秘裏に陸軍内から同志を集め始める。そしてゼラー大佐率いる戦車大隊が加わった事で戦力を得たナリマンたちは、ついにクーデターを決行するのだが…

 

S原:これは面白い!

Y木:へえ。

S原:昔に、映画紹介の本を読んでて「これは知られていないが、傑作だ」と書いてあって、ずっと気になってたけど、全然観るチャンスがなかった。どうも一度テレビ放送はしたらしい。

Y木:もうこういう古い映画はあまりテレビ放映されることは、ないやろうな。

S原:70年代の映画のややマイナーな映画なんかほとんどテレビでしないもんなあ。でも、これはええで。最近のどこにでもあるハリウッド製品よりも、おススメです。一部の人たちが「隠れた傑作」と評価したのも分かるわ。

Y木:前置きはそれくらいにして、どういう点がええの?

S原:演出は派手さはなくてドキュメントタッチで、淡々と進む感じやねん。とくに前半は地味と言ってもいいと思う。登場人物の関係をちゃんと把握できれば、後半は一気に加速して面白くなる。

Y木:クーデターの映画やな。本当にあった出来事を元にしてるの?

S原:ヨーロッパの架空の国という設定です。最初の場面は、閑静な住宅地(このロケがまた良い)で、ゆっくりと戦車が走るところからスタートします。軍隊が、反政府活動家を逮捕します。その活動家達は連行され、即座に銃殺刑にされます。これがオープニングです。

Y木:ほう。

S原:この国は独裁国家やねん。たぶん、軍部や秘密警察が力を持っている冷戦下の東欧国のイメージをして設定していると思う。あるとき、車で移動中の大臣が襲撃を受け、テロリストたちに誘拐されます。後日、遺体で発見されます。これをきっかけにして、独裁者である大統領は自分の意に沿わない人々をさらに厳しく取り締まっていきます。秘密警察により、反乱分子の一斉検挙が行われます。死傷者も大勢出ます。こういう混乱した状況を憂う人たちがいて、それが主人公グループ。複数の主人公がいるタイプの映画ですな。

Y木:なるほど。それでクーデターを計画するわけか。

S原:そうそう。学者(教授)のルソー博士は、優秀な軍人ナリマン大佐にクーデターの話を持ち掛けます。でも、ナリマンは退役間近で乗る気がしない。いろいろあって結局、説得に応じたナリマン大佐たちは綿密なクーデター計画を画策し始める。大学教授は、無血クーデータを計画し仲間を集めていきます。でも計画を進めてゆくと、トラブルが次々と発生する。

Y木:トラブルって?

S原:信頼できる軍人にクーデター決起の打診をすると、きっぱりと断られて、すぐに軍の野戦テントに戻り軍本部へ通信報告しようとします。仕方ないので、そのまま戦車でテントごと圧し潰します。しかも軍が調査に来ても、涼しい顔で誤魔化す(笑)

Y木:なんかすごいな。

S原:色々あって、最初は仲間に誘いたくなかったゼラー大佐を加えます。なんで、仲間にするのを躊躇したかというと、こいつが曲者やねん。自分の舞台の戦車を「私の戦車」と言い切るようなヤバい奴で、演じるのは、ピーター・オトゥール。この人は、なんといっても「アラビアのロレンス」(1962)が有名やけど、軍人としての高潔さとともに狂喜をはらんだ人物を演じるねんけど、いやービックリしたわ。この人、すごいで。

Y木:そうなんや。

S原:顔は笑っていても、本当に腹の底では何を考えているのかよくわからん不気味さがあるのよ。久々に「役者」に酔ったわ。

Y木:へえ、そんなにええんか。それで、話はどうなるの?

S原:クーデター計画は着々とすすんでいきます。一方で、政府の諜報部も怪しんで、いろいろと探っていきます。間一髪で、ついにクーデターが決行されます。大統領や秘密警察長官などの身柄を確保します。この場面がなあ。本当にドキュメントタッチでありながら、映画ならではの大仰さもあって、すごくしびれます。

Y木:クーデターを決起って、軍を動かすわけやろ。軍人たちにはどうやって説明するの?

S原:「大規模な訓練だ」「シリアスな訓練だから実弾を用意しろ」と嘘を言って、軍を動かすねん。とくにゼラー大佐が、軍人たちを鼓舞する場面は超カッコいいです。映画としては他にもいろんな小さなエピソードがあるねん。例えば、クーデターに参加する予定の将校が更迭されたり、秘密裡の会話を録音されていたり、空軍にどう対処するか(空から攻撃されると不利になる)等やな。それらが伏線になって収束するというよりも、放置されたまま話が進んでいきます。このへんの演出がリアルといえばリアルなんやけど、ちょっとわかりにくくてもったいないかも。

Y木:ラストはどうなるの?クーデターは成功するの?

S原:いやいや、こればっかりは言えません。知らないほうが楽しめます。これは本当におススメなので、ぜひ観てほしい。古くさい演出やけど、わけのわからないカットなんて一つもないし、いまのヤングでも映画好きなら十分に楽しめるはず。

Y木:これ、ストーリーはシンプルやな。

S原:そうそう。単純と言えば単純。前半はクーデターを準備し、後半でついにクーデターを決起する、それだけやから。ただ、ちょっと残念なのは、映像がザラザラやねん。そこもドキュメントっぽいといえばそうなんやけど、同じ年代のDVDでもキレイになっている映画もあるやん。そこが一番残念やった。

Y木:なるほど。今回は面白い映画の紹介やな。珍しく(笑)

S原:さあ、みなさま。ほとんどオッサンしかでてこない映画ですが、小細工なしに骨太でグイグイ押していく演出を堪能してください。今回は久々にハッキリと言います。マスト・バイでーす!