S原:今回は意外にイケます!
Y木:えー、これが……?
(あらすじ)
全米各地を巡業していた"ミイラ展"の目玉、4000年前のエジプトのミイラが何者かに強奪された。やがて、テキサス州郊外の医療老人ホームで老人の突然死が続発、それは蘇ったミイラ男"ババ・ホ・テップ"の仕業だった。そのホームには、かつてソックリさんと入れ替わり第二の人生を送っていた本物のエルヴィス・プレスリーが入居していた。プレスリーは、自分のことを暗殺から逃れたジョン・F・ケネディ元大統領と思い込んでいる黒人の老人ジャックと協力し、邪悪な"ババ・ホ・テップ"を退治すべく、老体に鞭を打って最後のロックン・ロールをブチかます!
S原:これ、ジャケットをみたらチープやと思うやろ?
Y木:うん。
S原:B級映画やと思うやろ?
Y木:うん。
S原:こんなDVD、買うやつの気が知れんわって思うやろ?
Y木:うん。
S原:こういう映画を観る奴なんか、世の中から抹殺されたらいいのに、と思うやろ?
Y木:いや、そこまで思わん。
S原:ビクッとするやろ?
Y木:べつにビクッとはせえへんけどな。
S原:実はこの映画は一味違う。確かにチープやけど、味のある「老人アクション映画」やねん。
Y木:老人アクションか。
S原:ストーリーは、上の通りでそれ以上でも以下でもないです。でも、主人公のエルビス・プレスリーが良い味やねん。ブルース・キャンベルが演じています。
Y木:あー「死霊のはらわた」の?
S原:そうそう。最近は、あんまり聞かなくなったけど、ウィキペディアをみると、ホラーとかSFとか、その手の映画に出続けてるみたい。
Y木:へえ。
S原:きっと性格のよい人なんやろうな。
Y木:いや、そういう映画のオファーしかないんちゃう?
S原:そういうことを言ってはいけません。みんながハッピーになればいいのですよ。
Y木:あ、そう。
S原:で、この映画は、老人になったプレスリーとジョン・F・ケネディが、田舎の老人ホームにいます。プレスリーは本物なんやけどな、昔そっくりさんと入れ替わって、そのまま本人がそっくりさんとして生きてるねん。だから「おれは本物のプレスリーだ」と言っても、ボケていると思われて相手にされません。
Y木:JFKは?
S原:黒人です。
Y木:おいおい。
S原:本人曰く「着色されたんだ」って(笑)
Y木:おいおい(笑)
S原:まあ、そういう映画なんやけどな。で、最初は変なゴキブリみたいなのが襲っていきます。プレスリーもJFKも頭はしっかりとしているから、なにか邪悪なものが襲ってきていると感じます。
Y木:それで?
S原:邪悪な存在はミイラ男なんやけどな。説明しても、周りは信じない(ボケていると思われる)から、「おれたちでやるしかねえ!」ってなります。で、ミイラ男と対決するところが、すごく良いねん。プレスリーは衣装に、JFKはスーツに着替えて、戦いに挑みます。ちなみにプレスリーは歩行器で、JFKは電動車いすです(笑)
Y木:なるほどな。
S原:でも、この場面はじーんとくるで。かつて、栄光つかんだ男たちがヨボヨボになっても、最後の力を振り絞って、誰も知らないような田舎でミイラ男と戦う。ミイラ男をやっつけても、誰も褒めてくれない……マーベルとかの派手な戦いとは真逆やけど、なんかいろいろと考えさせられるねん。こんな映画なのに(笑)
Y木:まあ、人間はだれでも年を取るからな。
S原:普通に観ても、わりと面白いと思う。でも、すこし深読みすると、これは人生というか人の生き様の哀愁が漂っています。
Y木:今回は褒めるなあ。
S原:まあ、観る前のハードルが低かったという説もあるけどな。これ、監督はドン・コスカレリね。
Y木:誰?
S原:「ファンタズム」(1979)の人。
Y木:あー、あれ……(苦笑)
S原:最高やったやろ?
Y木:最低やった。
S原:まあ、ほとんど「ファンタズム」シリーズしか撮ってない人なんやけどな(苦笑) でも、あんなバカみたいな映画(褒めてます)を撮ってる人が、こういう映画を作るんやと感心したわ。
Y木:まあ、今回はアタリってことやな。
S原:イエース! さあみなさま、これはおススメです。傑作ではありませんが、なかなか味のある映画です。基本的にはコメディ(やや下ネタあり)ですが、その裏にうっすらみえる人生がたまりません。ラストもプチ感動します。久しぶりに言いますよ。映画好きの皆さん、マストバイです~!