S原:今回はいぶし銀、レッドフォード!
Y木:まだ映画に出てるんや。すごいな。
(あらすじ)
1980年代初頭、アメリカ。ポケットに入れた拳銃をチラリと見せるだけで、微笑みながら誰ひとり傷つけず、目的を遂げる銀行強盗がいた。彼の名は、フォレスト・タッカー(ロバート・レッドフォード)。
事件を担当するジョン・ハント刑事(ケイシー・アフレック)も、追いかければ追いかけるほどフォレストの生き方に魅了されていく。フォレストが堅気でないと感じながらも、心奪われてしまった恋人ジュエル(シシー・スペイセク)もいた。
そんな中、フォレストは“黄昏ギャング”と呼ばれる仲間と共に、金塊を狙った大仕事を計画するが——。
S原:レッドフォード、好きやねん。すごく品があるやろ?
Y木:そうやな。知的というか。
S原:でも、ユーモアも忘れてないところがまた良いのよ。この人の映画界への功績は大きい。監督作品も良質やし、サンダンス映画祭を作ったやろ。なんというか、映画の未来を意識した人やと思うねん。ハリウッドスターの中には「自分だけが大金持ちでハッピー」という人もおるけど、この人は一味違う。
Y木:そのへんは、出演する作品の選び方を観てもわかるよな。全部観てないけど。
S原:結構、たくさん映画に出てるからな。個人的には「大統領の陰謀」(1976)と「ナチュラル」(1984)が好きやな。
Y木:あーあの2本は良かったな。いま思うとちょっと変なんやけど(笑)この映画は遺作か?
S原:俳優引退宣言をした後にでた作品やな。ウィキペディアによると、そのあとにもちょっと出演しているみたいやけど、事実上の遺作やと思う。
Y木:最後の映画ってことか。で、どうやったの?
S原:ちょっと期待しすぎたかな(苦笑)
Y木:そうなんや。
S原:いや悪くないのよ。でも、面白いかと言われると……やな。あのハンサム男もさすがに年を取ったなあ、と思います。もちろん同年齢の人よりも若々しいけど、若いころを知っているだけに痛々しい。
Y木:でも、そういう映画やん。
S原:レッドフォードの役は「まだ現役で強盗をしつづける犯罪者」。でも銃を撃ったこともない紳士的な犯罪者で誰も傷つけない(実在の人を元にしているらしい)。その人物をレッドフォードは軽やかに演じていて、淡い恋愛エピソードもある。ギラギラしたところなんか全くなくて、「もうやりきった」「幸せな人生だった」というのが滲み出ています。
Y木:映画としてはどうなん?「さらば愛しきアウトロー」の出来は?
S原:普通かな。ちょっとソフトすぎるような気もするけど、たしかに、あなたが言うように「そういう映画」やから……
Y木:前にも言ったけど、こういう映画って観る人の年代によって感想が変わるやろ。おまえは若くはないけど、老人と呼ばれるほどでもない年代やから、そうなるんちゃうの?
S原:かもな。もっと枯れて、もうブログなんか書く気力もなくなったときは、レッドフォードに感情移入するんかもしれん。でもまあ、こういう人たちってやっぱり幸せやと思うわ。
Y木:なにが?
S原:だって、老人になってもこうやって、ちょっと懐古的に自分の生き様を反映したような映画を作ってくれるねんで。普通の人はそうもいかんやろ。
Y木:普通の人は最後に自分の姿を映像で残したいとは思わんのちゃう?
S原:そうなんかな。でも、ぼくらが死んだらこのブログはどうなるんやろ?
Y木:知らんわ。誰にも知られずひっそりとバーチャルな世界の片隅に残るんとちゃうの?
S原:それで、「あの伝説のブログ」とか「S原とY木はどんな人物だったのか?」とか、映画秘宝で追悼特集されたりしてな。
Y木:ない!絶対にない!
S原:というわけで、みなさま。完全に枯れた世界を描いていますが、最近のやたらとドッカンドッカンと爆発したり、変なコスチュームを着て跳びまわる映画につかれたあなたに、おススメします。親子で観るのも良いかも、ですよ。あ!いいこと思いついた!
Y木:なんやねん。
S原:これカップルで観たらええと思うねん。結婚する前に、これを一緒に観て「なあ」「なに?」「こんなに老人になっても介護してくれる?」ってプロポーズしたらどうやろ?
Y木:……フラれると思うで。