あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

ぼくはチープでレトロで、ちょっとカルト「残酷の沼」(1967)の巻

残酷の沼 [DVD]

S原:今回はオムニバスですよ。

Y木:デザインが良い味やな。昔のミステリー小説みたい。

(あらすじ)

遊園地のとある館に集まった、5人の男女。そこにディアボロと名乗る男が現れ、左手に糸を右手には運命のハサミをもっているのだと言う。こうして好奇心にかられた男女たちは、それぞれの糸が切られた時、邪悪に満ちた恐ろしい未来を見ることになるのだった・・・。

 

S原:これは面白かったで。原作はロバート・ブロックやねん。

Y木:へえ、あの「サイコ」の?

S原:そうそう。なので起承転結がしっかりとある。もちろん最近の映画とはかなり違うから、「あの頃の映画」で、懐かしさを楽しみながら観るんやけどな。いつも言うけど、ぼくはオムニバスが好きやから点数が甘くなる。これは、4つのエピソードがあるねん。遊園地(?)の見世物小屋に男女5人がはいります。そこには、いかにも怪しげなディアポロ博士がいます。うす暗い部屋に案内されると、そこにはハサミを持った人形がいます。そして、この人形が、その人間の心の奥底にあるもの(運命)をみせると言います。興味に惹かれて、一人ずつ人形の前に行くと……

Y木:それが、一人ずつの話になるんやな。

S原:そうです。これから起こる(かもしれない)各自の未来のエピソードやねん。

フレディ・フランシス監督(『恐怖の牝獣』『テラー博士の恐怖』『美女を喰う館 グール』など) | 81/2

 

S原:最初は、コーリンと言う若い男性。これが働く気のないダメ男でな。借金もあるねん。で、叔父さんの家を訪ねます。おじさんは重病でもう死にそうです。コーリンは、自分に財産を譲ってくれ、と頼みますが、叔父さんは「まじめに生きろ」と断ります。

Y木:そりゃそうやろうな。

S原:でもコーリンは財産目当てで、叔父さんが病気で苦しんでいるのに薬をわざと渡さずに、見殺しにします。死んだ後に、家中をあさってお金や金目のものを探します。やがて、地下室があることに気付いてそこに行ってみると、そこには古い金貨がある。こりゃ価値のあるものだ、と喜ぶコーリンだったが、そこには黒い猫がいてじっとコーリンを見つめていた……という話。

Y木:ほう。黒猫の呪いの話?

S原:呪いと言うか、じつは黒猫が人間をあやつっていたというオチやな。黒猫の雰囲気とか、コーリンのダメ人間ぶりが良かったわ。

残酷の沼 | ソニー・ピクチャーズ公式

 

S原:第二話は、ハリウッドスターを目指す話です。カーラという女性がいて、俳優になりたくて仕方がない。友人の衣装をわざとアイロンで焦がしたりして、自分が代わりにプロデューサーと会う。そこで自分を売り込む。

Y木:スターを目指す貪欲な女性の話か?

S原:前半はそうなんやけどな、後半でヒネリがはいります。だんだんと、カーラはテレビドラマの仕事をしたりして俳優として成功していく。ところが、ある日恐ろしい真実に気付いて……

Y木:真実ってなに?

S原:言えません。これはオチを知らずに観てほしいので。次は第三話。ドロシーと言う女性記者がいます。ある日、世界的なピアニストであるリオを訪ねインタビューをします。それをキッカケに、リオとドロシーは良い雰囲気になる。ところが、ドロシーと付き合ってから、リオはピアノが上手く弾けなくなる。ドロシーは心配になり、自分と付き合うのが不安なら言ってくれ、と頼むが、リオの態度は煮え切らない。やがてドロシーは、リオとピアノの関係が異常だと気付きます。

Y木:ピアノが嫉妬しているんか?

S原:その通り。この「エウテルペ」と言う名のピアノは、生命や感情を持ってるねん。ギリシアの女神の名前らしいけど、まさに嫉妬にもだえる女性そのものやねん。ついには、ピアノがドロシーを襲っていく。

Y木:へえ。ピアノが嫉妬して人を襲うか。なかなかすごいな。

S原:一歩間違えば、ロジャー・コーマンみたない失笑映画になるところやけど、うまく作ってます。その先に、裏読みできるオチもあって、ぼくはこれが一番好きやな。

残酷の沼 | ソニー・ピクチャーズ公式

Y木:次は?

S原:第四話は、ワイアットという男性がいて、エドガー・アラン・ポーの収集マニアやねん。ある日、ポーのコレクション会場を訪れます。その会場で珍書を展示していたカニングと知り合い、彼の自宅を訪れます。酒を飲んで話が盛り上がり、カニングは「地下室には、ポーのコレクションがまだある」「絶対に内緒にできるなら、そこを案内する」と言われる。もちろん、ワイアットは見せてくれ、と懇願する。そして、地下室に行くと……

Y木:うーん、それはオチが読めそうやな。

S原:うん。単純な話やけど、これはムード重視のエピソードやった。4人の未来が暗示されたあとで、短くもう一人の話がある。これもいかにもな感じで良かったわ。

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Y木:今回は、完全に古典というかノスタルジックのホラーみたいやな。

S原:イエースですよ、あなた。というわけでみなさん、あの頃の懐かしい雰囲気満載の映画ですが、テンポが良いのですぐに観れます。映画好きなヤングたちも楽しめるのではないか、と……ひとつ残念なのは、吹替がないこと。これは吹替の方がムードがさらにでたはず。でも、こういうDVDはどんどん廃盤になっていって、配信も望み薄なので、中古店で見つけたらぜひゲットしてくださいませ~!