~ レンタルビデオ店にて 次の日 ~
S原:先輩、おはようございます。
Y木:なんだ、おまえ。また来たのかよ。昨日、クビになったんじゃないのか。
S原:はい、店長に呼び出されまして。
Y木:そりゃそうだろ、怒られたんだろ。
S原:そのまま店長に誘われて一緒にサウナに行ったら、すべて許してくれました!
Y木:サウナって。微妙なことをするんじゃねえよ、おまえは。
S原:いやーまあ、そういうことで今日もよろしくお願いいたします。
Y木:あーまあいいけど。ちゃんと仕事してくれよ。
S原:はい。がんばります。あ、それ今日入荷の映画の販促グッズですね。
Y木:そうだよ。話題の新作DVDには宣材が、こうやって段ボール箱で送ってくるから。いまから、整理してディスプレイするから手伝ってくれよ。
S原:はい。じゃあ、まずこの箱を開けますね。あー、これ!
Y木:どうした?
S原:チャイルドプレイのチャッキー人形ですよ~!
Y木:あー今度また新作が入荷するからな。怖いけど、こういうのを、店に飾るとお客さんにはウケるんだよ。
S原:へえ。そうなんすか。あ、これはちゃんと動くんですね。
Y木:ほんとだ。
S原:すっごいリアルですねえ。
Y木:いまのオモチャはすごいな、たしかに。
S原:あ!
Y木:なんだよ。
S原:いま、チャッキーがぼくを見た~。
Y木:へえ。そういう機能もあるのか。
S原:うわ。こっちに歩いてくる。
Y木:リアルなんだな。
S原:あ~!いま、ナイフで刺された~!
Y木:え、本当に刺されたのかよ!
S原:痛ってええ。
Y木:痛ってえ、じゃねえよ。おい、大丈夫なのか。
S原:危ないっすよ、この人形は。もう、電池を抜きますね。
Y木:ああ。そうしてくれ。
S原:え……電池が入っていない。ということは、本物のチャッキー!
Y木:本物かよ!もう面倒くせえな。どっか箱にとじこめておけよ。
S原:はい。
Y木:ちょっと、そっちの箱を開けてみて。
S原:はい。あーこれはまたすごい。
Y木:なに?
S原:さっきのチャッキーの花嫁です。あ、これも本物だ~!
Y木:もういいわ!なんなんだよ、もう。全部捨てておけよ。迷惑なもん送ってきやがって。もうチャッキーはいいから、つぎの段ボールを開けてみてくれ。
S原:はい。あーこれはまた。
Y木:なに?
S原:スパイダーマンのグッズですよ~!すげえ、かっこいい。
Y木:あーいまでも人気あるからな。グッズはなに?
S原:レオパルドンです。
Y木:そっちのスパイダーマンかよ!昔、日本でテレビでやっていたときに出てくるロボットじゃねえか。あれ、本家の反応も微妙なんだからな。
S原:あーソードビッカーもついてる~!かっちょいい~。
Y木:もういいって。それも片付けろよ。
S原:えー片づけるんですか。せっかくなのに。
Y木:しょーがないだろ。日本製のスパイダーマンのDVDは置いてないんだから。こんなの、飾れねえよ。
S原:そうですか。つぎの箱は、どれどれ。あーこれはちょっと微妙だなあ……
Y木:また、ショボい販促グッズか。
S原:はい。これは人気がないヤツですよ。
Y木:なに?
S原:ターミネーターT-800の実寸大モデルです。
Y木:マジか、すげええええ!
S原:これも捨てておきますね。
Y木:なんでだよ!これは要るんだよ。店に飾ればお客さん喜ぶよ。
S原:そうすかね。
Y木:そうだよ。
S原:どうせなら、「エクスターミネーター」の実物大モデルのほうが良いのになあ。
Y木:どこがだよ!誰がロバート・ギンティの実物大モデルをみて喜ぶんだよ。そっくりさんの渋谷陽一を見てれば十分だろ。
S原:せめて「エリミネーターズ」のロボットのほうが……
Y木:うるせえよ!ショボい合体サイボーグじゃねえか。というか、あれを飾って一体何人が、「エリミネーターズ」って気づくんだよ。もういいから。T-800を組み立てるから、説明書を読んでくれ。
S原:はい。うーん。この説明書は読みにくいなあ。
Y木:あー字が小さいか?
S原:そうですね。最近、眼がわるいんすよねえ。
Y木:そうなのか。
S原:小さい字もそうなんすけど、まぶしいところがダメで。
Y木:不便だな、そりゃ。
S原:ちょっとサングラスかけてもいいすか?
Y木:ああ、いいよ。
S原:(サングラスをかけて)あー先輩!
Y木:なんだよ。
S原:先輩、じつはエイリアンだったんですねえ!
Y木:「ゼイリブ」か!
S原:あーお金に「神」って書いてある~!
Y木:「ゼイリブ」か!
S原:じゃ、先輩、このへんで意味なく殴り合いっこしましょう。
Y木:「ゼイリブ」か!
S原:(サングラスを外して)あーびっくりした。
Y木:びっくりしたじゃねえよ。おまえ、いつまでゼイリブネタをひっぱるんだよ。読者はとっくに飽きてるからな。
S原:そうなんすかね。あ、お客さんが来た~。
Y木:はい。いらっしゃいませ。
S原:いらっしゃいませ。
Y木:どうぞ、ごゆっくり。
S原:先輩、ちょっと、あのお客さんですけど。
Y木:うん?
S原:(サングラスをかけて)あー!
Y木:なんだよ。
S原:あれは、ジョン・カーペンターが人間のふりをしていますよ~!
Y木:うるせえよ。やっぱりお前はクビ!いいかげんにしろ!