S原:今回は、みんなが大好きなジョン・カーペンター、久々にカムバック!
Y木:久しぶりに撮ったと思ったら、こんな映画なんや…
(あらすじ)
クリステン(アンバー・ハード)は、放火の罪で特に異常のある者のみ収容する監禁病棟へと送られる。そこには同じような境遇の少女4人。自分だけは正常だと信じていたクリステンだったが、担当医のカウンセリングを受けた結果、ほとんどの記憶を失っていることに気づく。不安を抱えたまま迎えた夜、クリステンは病棟の廊下を歩くおぞましい顔をした少女の姿を目撃する。この病棟には看護師でもなく、患者でもない何か別の存在がいるー。そして一人ずつ消えていく少女たち。クリステンは必死の思いで病棟から脱出を試みるが、やがて彼女自身想像し得なかった恐ろしいまでの真実に直面する・・・。
S原:これは2010年の映画。ウィキペディアによると、この映画の前の監督作は「ゴースト・オブ・マーズ」(2001)やから9年ぶりやな。
Y木:「ゴースト・オブ・マーズ」か。あれは観てないねん。どうなん?
S原:カーペンター印の珍作やった(笑)で、今回はSFでなく、病院ものです。
Y木:精神病棟かー。やっぱり、こういうのが好きなんやろうな。
S原:もちろんホラータッチやけどな。結論から言うと、まあまあ面白い。でも、なんというカーペンターでなくても良かったかも…
Y木:あー「普通の映画」なんやな。
S原:そうそう。前に言ったかもしれんけど、カーペンターってあんまり映画と上手く作るタイプじゃないと思うねん。でも、どこか「歪み」があってそれが癖になる。普通の場面でもすごく不安感を煽ったり、逆に怖くなりそうな場面なのにアッサリと終わったり(笑)良くも悪くも個性的なんやけど、この映画ではちょっとその個性が薄まっています。
Y木:ストーリーで驚かすタイプの映画なんやろ。
S原:基本的にはそうやな。主人公が入院させられた精神病院の内部で恐ろしいことが起こる。その理由を主人公が探っていく…という感じです。
Y木:普通の展開やけどな。
S原:前半は結構ええよ。病院内部の不穏な雰囲気がよくでているし、主人公含め入院患者も病院スタッフもキャスティングがはまっている。主人公は10代の女やねん。名前はクリステン。映画の冒頭で、田舎にある家が火事になっているのを呆然と見つめています。たぶん、主人公が放火したんやろうな。そこへ警察官がやってきて主人公を保護します。どうもクリステンには記憶喪失らしくて、放火の記憶もありません。クリステンは、精神病院に入院させられます。ウォード(監禁病棟)で入院生活を送ることになります。その病棟には、同じ年頃の女性たち4人がいるのよ。フレンドリーだったり、絵を描くのが上手かったりの4人やねん。入院は個室やねんけど、主人公が寝ていると深夜に廊下を誰かが歩いているのを見たり、部屋の中に誰かがいるような気配を感じます。
Y木:ほう。それで?
S原:そのあとに、主人公が訳ありのアクセサリーのかけらを見つけたり、シャワー室でゾンビ(?)に襲われたりします。同じ病棟にいた女性が退院します。じつはその女性は退院ではなく、裏で拘束されて拷問、眼球をアイスピックで刺されます。こんな感じで映画はどんどんホラーになっていきます。
Y木:眼球をアイスピックって、それルチオ・フルチやん。
S原:一回やってみたかったんやろうな(笑) それで主人公が病院の裏側を探っていく…と展開していきます。これ以上言うとネタバレになるからやめておくけど、単純なホラーじゃなくて、精神疾患をテーマにしたホラータッチのミステリーって感じやったな。
Y木:なるほど。ちょっと地味な気がするけど。
S原:地味です。それでも、おお!と思う場面はあるし、入院個室の部屋を俯瞰で撮って不安感を煽るとか、ところどころは面白い。ただ、いまのヤングがみてもなんとも思わんやろうな。もっと過激な映画もあるし、凝った設定のあらすじも多いから……
Y木:まあカーペンターにしたら、そういう「いまの映画」と張り合うつもりはないでしょ。
S原:やろうな。楽しそうに撮っているのがよくわかるから、それで十分なんやと思う。昔の映画ファンが年をとって「お、カーペンターも頑張ってるなあ」「こういうのが好きなのねえ」って突っ込みながら観るんがベストやと思う。
Y木:どうなんやろ。カーペンターは、そういう見方を望んでないとちゃう?
S原:あ、たぶん何も考えてないんちゃうかな?しばらくしたら「クリスティーン2」とか撮りそうやろ?
Y木:「クリスティーン2」……ほんまに撮りそうなところが怖い(苦笑)
S原:まあ公開されたら、大ヒット間違いなしやけどな。もちろんDVDはマストバイやで~!
Y木:………