あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

女の子が大暴れ!「肉食系女子。」(2010)の巻

肉食系女子。 [DVD]

S原:今回は、加護亜依が暴れちゃうぞ!

Y木:昔のアイドルか。懐かしいな。

(あらすじ)

広告代理店勤務の狩子(加護亜依)は、しっかりと仕事もこなしつつ、自己流男性を手に入れるテクニックを駆使し、思うままに男性たちを操ってきた。ときには思いがけない修羅場が訪れることもあるが、彼女はまったく気にしない。そんな折り、彼女の部下として草食系男子の朋也(日和佑貴)が配属され、少しずつ狩子の調子が狂い始める。

 

Y木:この娘って(10代アイドルなのに)喫煙しているところを撮られた娘やろ。

S原:そうそう。ウィキペディアによると、2006年~2007年くらいに喫煙事件(?)が起きたみたいやから、この映画はその後に作られたんやな。

Y木:元売れっ子アイドルが、こんな映画にでるとは。諸行無常を感じるなあ。で、肝心の出来はどうなん?

S原:ズバリ失敗作です。

Y木:そうなんや。いやまあ、そうやろうな。

S原:企画は悪くない。男性に(いろんな意味で)積極的な女性という設定は面白いと思う。それを、あの加護ちゃんが演じるから、ちょっとは期待するしな。実際にもりもりと肉も食べる場面なんか良いんやで。

Y木:ふーん。

S原:加護ちゃんはじめ、俳優たちはわりと良かった。でも演出があまりにも稚拙です。

Y木:稚拙?

S原:というか幼稚かな。演出としては、エッセイ風というか、短いエピソードをつなぐ演出で、各エピソードごとにタイトルがでるねん。

Y木:タイトルって?

S原:「お持ち帰りする女」「女の武器をそろえる女」「何かと頼られる女」「意外と純情な女子」「たまには傷つく女」とか。

Y木:あー、なるほど。

S原:それがどうもな。話がぶつ切りになって全然リズムに乗れない。しかも、昔の女性雑誌で特集されてた「あるある」ネタばっかりやから、サプライズも何もない。

Y木:タイトルが入る演出は昔からあるやん。

S原:甘いです。この映画では、さらに解説がはいる。

Y木:解説?

S原:たとえば、女子同士で荷物を説明する場面があるねん。化粧品とか雑誌とかいざと言うときとか、いろいろなものがバッグにはいっているという「肉食系女子ネタ」やな。それは定番でええねんけど、そのやりとりのあとにわざわざ解説コメントがはいります、肉食系女子はいざという事態に備え、準備を怠らない」とか「草食系女子にはそれが理解しがたい」とか。要するに、場面の後にその場面がどういう意味があったのか説明してくれるねん。

Y木:なにそれ?

S原:例えば、自分に気のある男性から電話がきても、わざと電話をでない場面があるねん。それが何回か続く。もうそれだけで十分わかるやん? 

Y木:まあな。

S原:それでも、その場面の後に解説コメントがはいります。肉食系女子はいつも攻撃的な狩りをするとは限らない。急に音信不通になり相手の気を引くという古典的な罠もうまい使い方をすれば絶大な効力を発揮する」。

Y木:くどいなあ。

S原:観ている人に親切すぎて、げっぷがでます。肉食系女子がどんな生態なのか? 意外に純情な面があるのか? それをわざわざ2回ずつ繰り返す。観客のことをバカやと思ってるんやろうな。とにかく観ていて頭がクラクラします。

Y木:最初だけそういう演出ちゃうの?

S原:最後までこれが続きます。例えば、肉食系女子の行動には、すべて理由がある。親切を素直に受け入れると大きな見返りを要求されることもある。狩り子が同僚にご飯を奢るのは急なデートで残業を代わってほしいとき。狩り子が残業を代わってあげるのは、夜中のデートまで時間が開いてしまったからだ」。もう、このコメントを読むだけでどんな場面が想像がつくやろ?

Y木:まあな。

S原:演出が変でクドイのもそうなんやけど、作品全体としても不満がある。なんというんかな、これは話としては「マンガ」やん?

Y木:まあな。少女漫画とかエッセイ漫画にありそうやけど。

S原:こういうストーリーは、製作者も役者も本気で「バカ」にならないとあかんと思うねん。要するに「照れ」があったら絶対にダメ。作る側や演者が照れたら、観客も恥ずかしくなってしまう。宝塚歌劇の舞台やパンクバンドのライブで演者は恥ずかしそうにしてるか? 一部ではバカにする奴がいても「自分たちはこうなんだ!」って開き直ってるやん? この映画で言うと、観客が「すっげえな、ここまでやるか⁉」と呆れたり、「こいつ、マジでそういうヤツにみえるよな…」と感心させたり、「バカかよ! こんな恋愛ありえねーよ!」と笑いながら突っ込まれるくらいでないといけません。

Y木:中途半端ってことか?

S原:うん。一応、加護亜依の魅力をみせるのをメインにしてるっぽいけど、ストーリー展開、キャラクター、演技、演出、どれも中途半端すぎる。軽妙な語り口といえばそうなんやけど、エピソードが当たり前すぎて感情がまったく揺さぶられない。

Y木:もっと凝ったほうが良かった?

S原:いや反対に、もっと単純でよかった。凝らんでもええから、面白さのポイントを絞って、グイグイ物語をひっぱるように作ればいいのに……「肉食系」ときいてなんとなくイメージできる範囲の話をつなげているだけではな。「ちょっとヤバい奴」くらいのほうが面白いと思うけど。犯罪者一歩手前くらいの肉食系やけど、いつの間にか自分の都合の良いようになってるとか。

Y木:でた、おまえの得意な「後出しジャンケン」! 出来た作品にブツブツ言う。それは誰でも出来るんやで(笑)

S原:そうなんやけど、これはあかんって。というのは、この時点の加護亜依って大事な時期やろ?本人がこの作品に対して、どのくらい覚悟をもってたかは知らん。でも、喫煙事件以降、世間からもバッシングされたり、自分の周りから人がいなくなるような経験をしたはずやねん。もちろん自分が悪いんやけど、やっぱり辛かったと思うで。

Y木:まあな。

S原:この「肉食系女子。」は、小さな作品かもしれんけど、もっと本気で取り組めば面白くなったはずやし、これからの加護亜依の評価も変わるのになあ。こんなときに「軽い感じのやっつけ仕事」「元アイドルが肉食系を演じてみました」「あの加護ちゃんが男性に積極的になる」では、誰も相手にしないって。今や絶頂期のアイドルや俳優でも、映画の出来が良くなかったら、低評価をうける時代なのに。

Y木:いやいや、アイドルで育ってきた娘がそんな簡単に変わるわけがないって。よほどの覚悟がないと。

S原:よほどの覚悟をみせるときやろ! 周りの大人も、大事な時期やとちゃんと説明してやれよ。どう考えても、このままでは芸能界から消えていくやん。

Y木:なんで、おまえがそんなに力説するかわからんけど(苦笑) ま、加護亜依からすると「大きなお世話!」やろな。それはそうと肉食系女子という設定やろ。エッチな場面はあるの?

S原:ありません。そういう意味でも男性客の期待を裏切っています。

Y木:作品の出来が良くないのは分かった。けど、いま加護亜依は何してるの?

S原:ちょっと調べると、このあとも苦労したみたい(特に男性関係)。でも、いまは落ち着いて子育てをしてるっぽい。加護ちゃーん、ガンバ!

Y木:おまえに応援されてもうれしくないやろうな……