S原:今回は、ジャケットが超カッコいいこれ!
Y木:かっこいい……か?
(あらすじ)
強盗に失敗した大富豪の娘と共犯であるボーイフレンドの壮絶な逃亡劇を描くアクション。現金強盗を実行したものの失敗し、警備員を銃殺したパトリシアとポーリーは、救急車をジャックし3人の人質と共に逃走するが…。
S原:このブログでB級映画をたくさん紹介したけど、内容とジャケットの差ではトップクラスかもしれない。
Y木:ほう。
S原:というか、誰なんですか?この人は。
Y木:俺に聞かれても知らんがな。
S原:もちろん、こんなかっちょいい銃を持つ場面はないし、主人公は長野県の田舎の女子大生みたいな小娘やった。
Y木:おまえ、長野県知事からビンタされるぞ。上のあらすじには「壮絶な逃亡劇を描くアクション」って書いてるけど、合ってるんか?
S原:そこは、かろうじて合ってます。「俺たちに明日はない」(1967)みたいな逃亡劇を狙ったような気もするし、そうでもないような気がする。
Y木:よくわからんぞ。
S原:それはこっちのセリフ!映画を観ても、何がしたいんかわからないの!
Y木:なんでキレてるねん。好きで観てるくせに。
S原:はあ……こんな映画を観ても心が満たされないのさ……
Y木:やかましいわ。はよ内容を話せよ。
S原:主人公は、大金持ちの娘(パトリシア)いつものように(遊ぶために)銀行で現金を引き出そうとする。しかし、銀行員に口座を凍結されていることを告げられます。父に確かめると「いつまでも遊んでるんじゃない」「ちゃんと仕事をしろ」「だから口座を止めたんだ」と言われます。
Y木:それで?
S原:そのまま、彼氏(?)と一緒に強盗します。
Y木:え?いきなり強盗?全然、理解できないねんけど。
S原:理解できへんよ、こんな映画。普通、①お金がない(困った、どうしよう) ⇒ ②それでもお金が要る(ギャングに脅されてるとか) ⇒ ③ 偶発的に強盗をしてしまう(ついでに人も殺してしまうとか) ⇒ ④ 怖くなって逃げる(どんどん悪い方へ転がってしまう) という展開やろ。
Y木:普通はな。その展開も、もう手垢についてるけど。
S原:この映画では、①お金がない、困った、どうしよう ⇒ ② 強盗する(人も殺す) という展開やねん。遊ぶ金欲しさに強盗するなんて、オツムが弱すぎるやろ。
Y木:若い奴らの無軌道さを描きたかったんちゃうの。ニューシネマとかそういう側面があるやん。
S原:いーえ、違います、この映画では、なんとなく強盗するだけ。説得力がないから、全然感情移入できない。タランティーノの映画でも、軽い感じで犯罪をするやん。でも、あれは描写が上手いから、オフビートな感じでコミックみたいに感じる。この映画では下手すぎて、ヤングたちがダラダラ犯罪しているだけという。
Y木:襲うのは銀行か?
S原:キャッシング店です。麻薬の売人に手伝ってもらって、銃をもって襲います。計画も何もないから、案の定警備員を殺してしまう。おまけに相棒の男も撃たれる。逃げるために、救急車を奪って……という感じです。
Y木:救急車か。そこが工夫なんかな。救急車やから警察にバレないみたいな。
S原:すぐにバレてたけどな。もう面倒やから省略するけど、一応警察の目をごまかしつつ救急車で逃亡する。(救急車には)医師が乗ってるわけじゃないから治療は出来ず、撃たれた男の容態はどんどん悪くなる。主人公は取り乱す。同乗している黒人の男性患者(怪我して救急車にのっている)が「おれはギャングで、違法な医者を知っている。そこへ行けば助かる」「そのまま逃げることができるぞ」と言われて、主人公は迷う、という展開になります。
Y木:そのへんは普通やん。
S原:結局、黒人の言うことを信じるけど騙されてしまう。最後は、映画のテーマパーク(西部劇のロケセット)みたいな場所で、パトカーに囲まれてしまう。
Y木:話をきいてると、スピルバーグの「続・激突/カー・ジャック」(1974)みたいなのを狙ったんちゃうの?
S原:そうなんかなあ。でも出来は全然違う。「続・激突/カー・ジャック」はとぼけた味わいと、頭が良くない登場人物のもの悲しさがあったやろ。この映画では、そういう要素はまったくないのよなー。
Y木:それは下手やからやろ。追いつめられる悲しさとか辛さはあるんやろ。
S原:追いつめられた最後の方は、シリアスなムードやねん。ところが主人公が泣きすぎて、化粧が落ちてパンダみたいになってるねん。おいおい、風呂上がりのハイヒールモモコかよ! 悲しませようとしてるか笑かすのか、どっちかにして欲しいです。
Y木:ハイヒールモモコ……で、結局、主人公たちは死んでしまうと。
S原:大丈夫やで。
Y木:ん?
S原:大丈夫やって。
Y木:なにが?
S原:だって、夢やもん。
Y木:えー……まさかの?
S原:はい、夢オチです。しかも、映画のほとんどが夢の中の出来事よ?要するに、他人のどうでもいい夢を80分くらい見せられたと。おいおい、奇面組かよ!
Y木:古いな、例えが。
S原:まあ、とにかくしょぼい映画やった。というわけで、みなさん。ワゴンコーナーでこれを見つけても、スルーしてください。とにかく薄味の味噌汁みたいな映画でした~!