あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

「レディ・トランスボーダー」(2006)の巻

レディ・トランスボーダー [DVD]

S原:今回は、ジャケットが超カッコいいこれ!

Y木:かっこいい……か?

(あらすじ)

強盗に失敗した大富豪の娘と共犯であるボーイフレンドの壮絶な逃亡劇を描くアクション。現金強盗を実行したものの失敗し、警備員を銃殺したパトリシアとポーリーは、救急車をジャックし3人の人質と共に逃走するが…。

 

S原:このブログでB級映画をたくさん紹介したけど、内容とジャケットの差ではトップクラスかもしれない。

Y木:ほう。

S原:というか、誰なんですか?この人は。

Y木:俺に聞かれても知らんがな。

S原:もちろん、こんなかっちょいい銃を持つ場面はないし、主人公は長野県の田舎の女子大生みたいな小娘やった。

Y木:おまえ、長野県知事からビンタされるぞ。上のあらすじには「壮絶な逃亡劇を描くアクション」って書いてるけど、合ってるんか?

S原:そこは、かろうじて合ってます。「俺たちに明日はない」(1967)みたいな逃亡劇を狙ったような気もするし、そうでもないような気がする。

Y木:よくわからんぞ。

S原:それはこっちのセリフ!映画を観ても、何がしたいんかわからないの!

Y木:なんでキレてるねん。好きで観てるくせに。

S原:はあ……こんな映画を観ても心が満たされないのさ……

Y木:やかましいわ。はよ内容を話せよ。

S原:主人公は、大金持ちの娘(パトリシア)いつものように(遊ぶために)銀行で現金を引き出そうとする。しかし、銀行員に口座を凍結されていることを告げられます。父に確かめると「いつまでも遊んでるんじゃない」「ちゃんと仕事をしろ」「だから口座を止めたんだ」と言われます。

Y木:それで?

S原:そのまま、彼氏(?)と一緒に強盗します。

Y木:え?いきなり強盗?全然、理解できないねんけど。

S原:理解できへんよ、こんな映画。普通、①お金がない(困った、どうしよう) ⇒ ②それでもお金が要る(ギャングに脅されてるとか) ⇒ ③ 偶発的に強盗をしてしまう(ついでに人も殺してしまうとか) ⇒ ④ 怖くなって逃げる(どんどん悪い方へ転がってしまう) という展開やろ。

Y木:普通はな。その展開も、もう手垢についてるけど。

S原:この映画では、①お金がない、困った、どうしよう ⇒ ② 強盗する(人も殺す) という展開やねん。遊ぶ金欲しさに強盗するなんて、オツムが弱すぎるやろ。

Y木:若い奴らの無軌道さを描きたかったんちゃうの。ニューシネマとかそういう側面があるやん。

S原:いーえ、違います、この映画では、なんとなく強盗するだけ。説得力がないから、全然感情移入できない。タランティーノの映画でも、軽い感じで犯罪をするやん。でも、あれは描写が上手いから、オフビートな感じでコミックみたいに感じる。この映画では下手すぎて、ヤングたちがダラダラ犯罪しているだけという。

Y木:襲うのは銀行か?

S原:キャッシング店です。麻薬の売人に手伝ってもらって、銃をもって襲います。計画も何もないから、案の定警備員を殺してしまう。おまけに相棒の男も撃たれる。逃げるために、救急車を奪って……という感じです。

Y木:救急車か。そこが工夫なんかな。救急車やから警察にバレないみたいな。

S原:すぐにバレてたけどな。もう面倒やから省略するけど、一応警察の目をごまかしつつ救急車で逃亡する。(救急車には)医師が乗ってるわけじゃないから治療は出来ず、撃たれた男の容態はどんどん悪くなる。主人公は取り乱す。同乗している黒人の男性患者(怪我して救急車にのっている)が「おれはギャングで、違法な医者を知っている。そこへ行けば助かる」「そのまま逃げることができるぞ」と言われて、主人公は迷う、という展開になります。

Y木:そのへんは普通やん。

S原:結局、黒人の言うことを信じるけど騙されてしまう。最後は、映画のテーマパーク(西部劇のロケセット)みたいな場所で、パトカーに囲まれてしまう。

Y木:話をきいてると、スピルバーグの「続・激突/カー・ジャック」(1974)みたいなのを狙ったんちゃうの?

S原:そうなんかなあ。でも出来は全然違う。「続・激突/カー・ジャック」はとぼけた味わいと、頭が良くない登場人物のもの悲しさがあったやろ。この映画では、そういう要素はまったくないのよなー。

Y木:それは下手やからやろ。追いつめられる悲しさとか辛さはあるんやろ。

S原:追いつめられた最後の方は、シリアスなムードやねん。ところが主人公が泣きすぎて、化粧が落ちてパンダみたいになってるねん。おいおい、風呂上がりのハイヒールモモコかよ! 悲しませようとしてるか笑かすのか、どっちかにして欲しいです。

Y木:ハイヒールモモコ……で、結局、主人公たちは死んでしまうと。

S原:大丈夫やで。

Y木:ん?

S原:大丈夫やって。

Y木:なにが?

S原:だって、夢やもん。

Y木:えー……まさかの?

S原:はい、夢オチです。しかも、映画のほとんどが夢の中の出来事よ?要するに、他人のどうでもいい夢を80分くらい見せられたと。おいおい、奇面組かよ!

Y木:古いな、例えが。

S原:まあ、とにかくしょぼい映画やった。というわけで、みなさん。ワゴンコーナーでこれを見つけても、スルーしてください。とにかく薄味の味噌汁みたいな映画でした~!