S原:今回は、「剣の拳」というダジャレのような副タイトルの映画です!
Y木:剣の拳……昔のジャンプの漫画みたい。
(あらすじ)
右手から鋭い剣を生やすという特殊能力を持つ青年サーシャは、いわれのない暴力にその力を使ってしまう。凶悪犯として追われることになった彼は、最愛の女性を守るため孤独な戦いに挑む。VFX満載のSFソード・アクション。
S原:これはロシア映画です。
Y木:ロシア産のSFアクションやな。
S原:SF…?アクション…?うーん。
Y木:なんやねん。
S原:どうも、この映画はスカッとしない。ジャンルもよくわからん。例えば、このDVDのパッケージをみてレンタルする人って、マーベルみたいなかっちょいいヒーロー映画やと思うやん?
Y木:そうやろうな。
S原:でも、違うのです。
Y木:こんな場面は、ないってこと?
S原:あります。でも、少しだけです。ソードハンドのタイトル通り、手から剣がビヨーンと伸びます。
Y木:ビヨーンって。なんか、かっこわるいなあ……
S原:アクション場面はまあまあやねんけど、それ以外の場面がとにかく長い。しかも、だいたい3種類の場面しかないねん。
Y木:3種類?
S原:主人公が苦しんでいる場面、主人公が悩んでいる場面、主人公と女性がイチャイチャしている場面。
Y木:なにそれ。
S原:ほんまやねんって!そういう映画やねんって!
Y木:わかったわかった。(主人公の)悩みは何やねん?
S原:手から剣がビヨーンってでてくることに悩んでいます。
Y木:えー、そんな映画の基本設定に対して悩むの?話が進まへんやん。映画としてはそこは省略せなあかんやろ。
S原:うん。インディ・ジョーンズが、冒険アクションもせずに「なんで、おれは秘宝がほしんだろ?」「そこまでして、宝物が必要か?」と悩む場面ばかりやったら、観客は発狂するで。あ、いま思い出したけど「幻魔大戦」小説版(平井和正)では、主人公(東丈)が幻魔と戦う場面は少ししかなくて、あとは延々と悩んでたな。しかも途中から、どこかにいなくなるし(笑)
Y木:平井和正か。懐かしいな。
S原:主人公は、とにかく深く悩みます。しかも、ゆったりとした雰囲気で悩みます。街で悩む、家の中で悩む、自然の中で悩む、もう「苦悩祭り」です!
Y木:いやな祭りやなー。
S原:さっきも言ったけど、普通の人は、これは娯楽作品と思って観るからな。「ソフィーの選択」(1983)とか「山の焚火」(1985)とかは、はじめから覚悟をして観るやん。「これは気楽に観ちゃダメな映画なんだ」と気持ちを整えるやん。
Y木:なんか、えらい映画を引き合いに出すなあ(苦笑)
S原:なんにせよ期待外れです。
Y木:苦悩する「ドラマ」として観ればええんとちゃうの?
S原:いーえ、それでも面白くありませんっ。
Y木:これって、話はどんな感じ?
S原:さっきも言ったけど、主人公(サーシャ)は右手から剣が突き出るという能力があります。そのせいなのか本人が暗いからなのか、幼い頃から孤独でした。みんなにいじめられたら嫌なので、内緒にしていました。主人公は大人になりました。ある日、主人公は、難癖をつけてきた男たちをぶちのめしてしまいます。その時から、彼は警察から追われる身となります。そんな時、彼は女性(カーチャ)と出会う。
Y木:ふーん、それで?
S原:主人公は、すぐに女性とチョメチョメします。
Y木:おいおい。
S原:ほんまやねんって。そして、彼女が元恋人に乱暴されそうになっているのを見て、主人公は怒ります。男を刺し殺してしまいます。
Y木:ふーん。それで?
S原:主人公は、また女性とチョメチョメします。
Y木:またかい。
S原:主人公はドスケベという設定らしくてな、とにかくチョメチョメしまくります。手から剣がビヨーンと伸びるみたいに、主人公の股間からビヨーンって。
Y木:下ネタかい。
S原:そこから愛の逃避行になります。いろいろあって、警察と軍から追われます。主人公はあまり手からビヨーンの剣を使いたくありません。
Y木:なんで?
S原:なんか、自分の性器をみられてるみたいで、恥ずかしいらしいわ。
Y木:勝手に作るな。怒られるぞ。
S原:逃亡したり戦ったりしている間にも、主人公は悩み、女性とチョメチョメし、また逃げて、手からビヨーンと剣がでて、また悩んで……まるでドストエフスキーの世界です!
Y木:全然ちゃうわ。
S原:セリフを少なくしている意図はわかるし、映像はキレイなんやけどな。とくにロシアの自然の風景は良いよ。でも、肝心のお話がこれじゃあな。
Y木:ラストはどうなるの?
S原:ヘリコプターに追いつめられます。森の中を女性(瀕死の状態)と一緒に逃げます。主人公は手から剣をだして、森の木を切ります。ついでにヘリコプターも切ります。ヘリは墜落します。女性も死にます。主人公はまた苦悩する表情を浮かべます。これ以上ないというくらいに悩んでいます。それがしばらく続いて、おしまい。
Y木:よくわからんぞ。
S原:まー、あれちゃう?監督のメッセージとして「そんなに悩まなくていいよ、また明日からガンバ!」ってことやろな。
Y木:絶対ちゃうやろ。
S原:いやー、でもほんまにどうしようもない映画やねんって。さあ、みなさん、これは間違ってもSFアクションと期待してはいけません。好きな女優が出ているからと言って、毎回シャワーシーンがあるわけではないですよね?あれと一緒ですよ。アクションもせず主人公がひたすら悩む(だけど、チョメチョメはする)映画が観たいあなたにおススメです。それ以外の人は、スルーしてくださませ~!