あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

70年代のややカルト映画特集!「仁義」(1970)の巻

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Y木:アラン・ドロン!懐かしいー!

S原:今回は、超クールな映画「仁義」ですよ。

(あらすじ)

フランス暗黒街映画の名匠が描く運命の輪で結ばれた男たちの悲劇。
決して会ってはならない5人の男。それが運命の糸にあやつられて、のっぴきならぬ対決へと追いこまれてゆく。友情をたて糸に、裏切りを横糸に、意地と仁義の男の世界が、息もつかせぬサスペンスのうちに、織りなされる……――劇場初公開のときに配給会社(東和)が映画の神髄をうたった見事な惹句と解説である。当時人気絶頂のアラン・ドロンと4人の名優をそろえたフランス暗黒街映画の名匠、ジャン=ピエール・メルヴィル監督の“男の世界”の集大成。

 

S原:実は、いままでメルヴィル監督の映画は観てなかった。なので今回が初体験です。

Y木:おれも、この映画は観てないなー。でもメルヴィルは知ってるで。同じフランスでもヌーベルバーグともまた作風が違って、結構ええやろ?

S原:かなり良いです。そして、とにかく面白い!最初は用事をしながらチラチラみたたんやけど、途中からジッと集中して観たわ。

Y木:これは、いわゆる犯罪ノワールものやな。「死刑台のエレベーター」(1958)とか「地下室のメロディ」(1963)みたいな感じ?

S原:ちょっと違うかな。「時代」の違いだけではないと思うけど……ストーリー自体は単純やねん。舞台はフランス。最初は夜行列車(寝台列車)に、刑事(マッティ警視)と犯罪者(ヴォーゲル)が乗り込みます。ヴォーゲルは巧妙に手錠を外して、列車からまんまと逃走します。同じ頃、刑務所には、受刑者コレー(アラン・ドロン)がいます。もちろん、アラン・ドロンが主人公ね。翌日出所した彼は、昔の仲間のリコ(アンドレ・エキナン)を訪ねます。リコには「貸し」があるので、返すように言いますが、ていよく断られます。主人公は強引にリコから大金と拳銃をせしめ、中古車を調達してパリへと向かいます。リコの手下たちは追いかけます。

Y木:ほう。それで?

S原:主人公がドライブインで食事をしているときに、列車から逃げてきたヴォーゲルがこっそりとコレ―の車のトランクに隠れます。検問をぎりぎりでやりすごして、トランクに隠れていたヴォーゲルを車から出します。ちょっとしたやりとりから、同行をさせるようにします。ところが、リコの手下たちが追いついてきて銃撃戦になります。手下たちはやっつけますが、札束は穴だらけ、血だらけで使い物になりません。無一文になってしまうわけ。

Y木:おお。それで、結局大きな「仕事」をするというわけやな。

S原:イエース。いろいろあって、宝石強盗の計画をたてます。凄腕の射撃手として元警官のジャンセン(イヴ・モンタン)を仲間に引き入れます。このイヴ・モンタンがすごく良い。たまたま役柄に合っただけかもしれんけど、久々に「役者」に酔ったわ。

Y木:アラン・ドロンは、どうやった?

S原:こっちもすっごく良い。この人はハンサムやけど、ちょっと陰影があるやろ。こういう役をしたらピッタリ。いやー合コンでもモテたやろうな。

Y木:合コンなんか行くか。それで、どうなるの?

S原:店の配置や警備状況を調べて、ついに宝石強盗を決行します。ここのイヴ・モンタンが超クールやねん。三脚に固定した銃で狙いを定めます。いよいよという時に、無表情なままサッと銃を三脚から外して、手で持って狙いをつける。一発で命中。説明や台詞はなし。短い場面やけど、しびれます!

Y木:宝石泥棒は上手くいくの?

S原:上手くいきます。宝石店に入ってから、主人公たちは淡々と行動をする。ほとんど会話も音楽もない。もうカラカラに乾いたタッチでな。こういう演出は、いまの映画でもうまく盗んでほしい。派手な爆発とか音楽はなくても、十分に緊張感のある場面は作れるんです。

Y木:たしかに。宝石を盗んでおしまい……ってわけじゃないやろ?

S原:宝石を売って現金にしようとしますが、すでに裏でリコが手を回していて、買い取ってもらえません。さあどうするか?最後は、軽いどんでん返しがあって、主人公たちはみんな死にます。その場面もすごくドライでな。もうなんというか、「分かってるじゃないの!メルヴィルの旦那!」って言いたくなるで。

Y木:確かメルヴィルって、かなり変人ちゃうかった?

S原:そうらしいねえ(苦笑)ネットで調べたら、いっぱいでてきてビックリしたわ。

Y木:まあ、ちょっと変人でないと面白い映画は撮れないんちゃう?

S原:かもな。映画監督って変な奴らが多いもんなあ。あと、この「仁義」ってタイトルはどうなんかなあ……どうしても日本人としては東映ヤクザ映画を思い出すやん。あの湿気の多い演出とは真逆の演出やから、余計に残念やわ

Y木:今回は、当たりやったみたいやな。

S原:うん。大当たり。フランス映画独特の雰囲気も堪能できたし、なんといっても、アラン・ドロンイブ・モンタンの佇まいが最高やった。いやあ。こういう俳優なら、いつまでも観れるわ。さあ、みなさん。いまや知る人ぞ知るという作品のようですが、このまま隅に置いておくにはあまりにももったいないです。寒風のように乾いた空気、極限まで削ったセリフ、陰のある男たちの生き様、あっさりとして単純な演出なのに、鑑賞後にどんよりとした空気の塊みたいなものが胸に残りますよ。これはおススメ、マスト・バイです!