S原:今回は、久しぶりにこんな感じの映画!
Y木:「宇宙で最も凶悪で孤独な侵略者」か。大仰なキャッチコピーやな。
(あらすじ)
宇宙で最も凶悪かつ、《美しき侵略者(パラサイト)》
街中で次々と姿を消す人間たち。彼らは消える直前、人の形をしたある“生き物"に接触していた。その正体は、人間ではなく自ら生きるために、命も記憶も全てを乗っ取る謎の“地球外生命体"だった。
“生き物"は一定時間を過ぎると体が腐り始めてしまうので、次々と人間を乗っ取り、使い捨てる。慈悲のかけらもない冷酷なモンスターだったが、ある男を乗っ取ったことで、その妻を愛し始める。
男の妻を愛する気持ちは“生き物"の中に残り続けているのだ。“生き物"は、彼女の周りの人間を乗っ取りながら、彼女に近づいていくが・・・。
S原:これ、上のあらすじは、実際に内容とちょっと違うねん。
Y木:また、あらすじ詐欺?
S原:詐欺とまでは言わんけど、かなり印象が違う。詐欺で言えば、ジャケットデザインのほうが詐欺かもしれん。
Y木:背中からビヨーンって、なんかが出てくるんやろ?
S原:いや、出てきません。というか、こういう場面自体ありませぬ。
Y木:えー、またそんな映画?
S原:「スピーシーズ」シリーズみたいなデザインにして、宣伝したかったんやろうけど、逆効果やと思うなあ。だって、この映画は地味と言うか、変わり種のSFサスペンスやもん。スピーシーズみたいに、美女系エイリアンが襲ってくるという話でないねん。そもそも、「宇宙で最も凶悪で孤独な侵略者」じゃないから(笑)なので、そういう映画を期待した人はガッカリするし、もともと変化球SFが好きな人は(ジャケットをみて)スルーしてしまうという。
Y木:どんな話?
S原:この映画にでてくるエイリアンは人間に擬態してるねん。そいつが、人間に触れるだけでその人間の命を奪って、姿形をコピーしてしまう。記憶もそのまま引き継ぐらしい。らしい、というのはこのへんは演出が上手くなくて、よくわからんかったから。で、ときにはオジサンになったり、女性になったりします。映画が始ってしばらくは、この繰り返しだけ。なのでちょっと退屈します。
Y木:さっき「変わり種SF」って言ってたのは、どういうところ?
S原:普通、エイリアンものって「襲われる側」が主役やろ?
Y木:そうやな。
S原:この映画では「襲う側」つまりエイリアンが主役やねん。なので、エイリアンがナレーションで、自分の心情を語ります。
Y木:「ああ、人間が食べたい」とか?(笑)
S原:もっとシリアスやねん。「体が腐敗してきた」「早く次の体を探さねば」とか。
Y木:あーそういうことか。
S原:だからといって、面白いかと言われれば返答に困るねんけどな。一応、監督の意図としては「異端者の哀しみ」とか「異生物として生きていく寂しさ」とかを意識してるみたい。
Y木:えー大真面目やん。
S原:マジやで。ダンプ松本は昔CMで「マジだぜ!」って言ってたけど、あれと一緒です。
Y木:なんやよくわからん。ダンプ松本なんかどうでもええから、映画の続きの話をしてくれ。
S原:このエイリアンは、ある女性(ジュリア)を好きになるねん。その女性は、よくバーのカウンターでお酒を飲んでいます。エイリアンは、時間が来たら体が腐敗していくから、別の人間を殺して擬態しないといけない。でも、ジュリアのことは好きやから、別の容姿になっても毎回ジュリアに口説きに行きます。
Y木:なんかコメディみたいやな。
S原:さっきも言ったけど、本当にシリアスな雰囲気です。見どころは、エイリアンが殺したあとに、体の成分(?)を抜き取ったみたいに皺だらけになった死体やな。このへんは、ちょっと80年代っぽくて良かった。
Y木:あー「スペースバンパイア」(1985)みたいな?
S原:そうそう。「バタリアン」(1985)とか。懐かしい感じやな。
Y木:最後はどうなるの?
S原:結局、ジュリアと相思相愛になることに成功する。でも、やっぱり体の腐敗は止められないから、ジュリアに正直に話します。で、このあとに軽くどんでん返しがあって、おしまい。
Y木:どんでん返しって?
S原:一応、伏せておきます。これは、好きは人はハマるはずやねん。なので内緒。
Y木:じゃあ、今回はおススメ?
S原:B級ホラーを観たい人はパスしてください。ちょっと暗めのSFスリラーが好きな人には、おススメです。
Y木:ただ、このジャケットではなあ。観る人が限定されてしまうと言うか。
S原:そこが残念。さあ、みなさん。「意外にイケる映画」に、あとちょっと届かない感じの出来ですが、雰囲気はなかなかのものです。こういう映画なら、日本でも作れそうなんですけど、どうでしょうか。というわけで、変化球SFが好きな人は、レンタルしてくださいませ~!