あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

1950年代の邦画を観てみる!「お役者文七捕物暦 蜘蛛の巣屋敷」(1959)の巻

お役者文七捕物暦 蜘蛛の巣屋敷 [DVD]

S原:今回は、なんと横溝正史原作!

Y木:へえ、珍しい。

(あらすじ)

横溝正史の原作をもとに、「一心太助」の名コンビ、主演・中村錦之助と監督・沢島忠が放つスリラー時代劇豪華大作。
名代役者・播磨屋歌六の息子・文七は、持ち前の気性から役者が嫌いで小屋を飛び出し、今やしがない遊び人暮らし。そんなある夜、文七は賭場からの帰り道に、謎の黒覆面の一団に襲われる。早速この一件を与力・池田大助に話す文七だったが、目撃者がいないことから狂言だと言われて怒り心頭。「それじゃ、あっしが証拠を掴んで見せやしょう」と大見得をきるが、謎は意外に深かった。実は文七が襲われた晩、勝田藩江戸藩邸で、老中への輿入れを間近に控えた長女・輝姫が、不気味な土蜘蛛の精に操を奪われる事件が起きていた。さらに父・歌六までも何者かに殺された文七は、役者仕込みの変装で事件捜査に乗り出す!

 

Y木:横溝正史か。ミステリー風の時代劇?

S原:一応、怪しい事件の裏には…という感じの捕物帳なんやけどな。軽い感じというか、ぼくには薄味に感じたわ。

Y木:こういうのって、気軽にみるようなタイプの映画やろ。プログラムピクチャーというか。

S原:たぶんそうなんやろうな。主役を演じる中村錦之助の魅力をみせる映画やと思う。

Y木:推理ものの要素はあるんやろ?

S原:一応あるけど、大したことないです。あらすじもわりと単純やねん。本来は役者でいまは遊び人になっている中村錦之助が主役です。ある日、暗い夜に覆面の武士たちに追われている女性(腰元)を助けようとして、ケガをします。その場面で、中村錦之助が覆面の武士たちに対して、お金をせびるんやけど、このエピソードはあまり効果的でないと思う。で、覆面の武士たちの存在を与力(奉行の部下)に報告するけど、信じてくれません。同じ夜、老中の娘(輝姫)が、嫁入り前に土蜘蛛の精に操を奪われるという事件が起きます。

Y木:土蜘蛛か。横溝正史っぽいな。

S原:この辺がもう少し怪談というか恐怖譚って感じを期待したんやけどな。全然、そういう雰囲気ではなかったわ。

Y木:いわゆる「横溝ホラー」な要素は少ないんやな。

S原:うん。金田一シリーズとまでは言わんけど、どうしても観客はそういうのを期待してしまうからな。で、話を戻すと、昔、土蜘蛛と称する一味の一揆があったという記録は残っているけど、一味は総て死刑に処されたはずだった。相談をうけた大岡越前守も困惑する。そうこうしているうちに、中村錦之助の父親が何者かに殺されます。ほかにも、ある役者が輝姫のそばで遺体で発見されるという事件も起きる。で、主人公は役者の経験(変装技術)を生かして事件の真相に迫っていく……こういう感じです。

Y木:なんというか……たいした話じゃないな(笑)

S原:その通り。地味やし、事件の真相も大したことない。さっきも言ったけど、こういう映画は、主役がカッコよければええんやろうな。

Y木:全体の雰囲気はどうなん?

S原:まあまあかな。捕物帳とかあまり観てないから、他と比べにくいけど映画としては普通やと思う。ただ、今の時代劇とも少しずつ違う部分があって、そこは面白い。

Y木:例えば?

S原:すごく演出がストレートやねん。それが、この時代劇にピッタリなのよ。あとは途中で、歌舞伎の場面をしっかりと映す。歌舞伎役者が大勢出ているから、そうなるんやけど、ぼくは歌舞伎は好きでないから退屈やった。ただし、舞台装置は豪華やった。

Y木:変装していく場面が、この映画の面白さなんとちゃうの?

S原:そうやな。でも、そんなには……(苦笑)まあ、当時のスター映画のひとつやったんやろうな。庶民が気軽に映画館に行くような時代の1本とでもいえばええんかな。

Y木:今回はあんまりやった?

S原:いや、悪くはないよ。でも、なんというか……やっぱり印象に残らない。このへんは個人の好き嫌いのレベルでしかないと思う。

Y木:なるほど。

S原:さあ、みなさん。中村錦之助のファン、当時の捕物帳が好物の人にはおススメです。ぼくには、テレビの「水戸黄門」「銭形平次」とかとあんまり差を感じませんでした。というわけで、よほどのマニアだけにおススメしまーす!