S原:今回は木下恵介監督作品。たぶん、このブログで取り上げた中で最も古い映画かも、です。
Y木:1946年か。へえ。
(あらすじ)
田舎の家で女の赤ん坊が拾われた。年上の男の子とともに実の兄妹のように育てられ、娘は美しく育った。戦争から帰って来た兄・甚吾は、妹として遇してきた娘に恋をし、結婚したいと思うようになった。母にもその話をすると賛成してくれたので、妹には、ちょっと話があるから祭りの日に話すと言った。だが祭りの日、甚吾は妹が恋人らしい男と語らっているのを発見してしまう。果たして妹は、結婚したい男があると打ち明けるのだった・・・。
S原:1946年というと、太平洋戦争が終わった翌年ですよ、あなた。
Y木:それで、こういう映画をとるんか。さすが木下恵介やな。
S原:実は、いままで木下恵介の映画って観たことなかったのよ。
Y木:なんで?
S原:なんか、甘ったるいやろ。成瀬巳喜男や小津安二郎は観る気がしたけど、木下恵介だけはどうもな。自分でも偏見やと分かってるんやけど。
Y木:まあ、わかるけどな。
S原:今回が初体験。結論から言うと、なかなか上手く作ってると思ったわ。
Y木:そうなんや。作劇と言うか演出が上手い?
S原:普通に撮ってるだけなんやけど、登場人物の気持ちがよくわかるというか。
Y木:あらすじを読むと、甘い話やな。
S原:ほんまに甘いよ。昔の少女漫画みたいな感じかな。でも、嫌味ではなくて、戦後すぐにこういう映画を作るのは立派やと思う。あくまでネット情報やけど、はじめは少しストーリーが違うかったらしい。それをGHQが検閲して、変更したんだとか。
Y木:へえ、はじめはどんな話?
S原:浅間山を望む牧場で、捨子だった妹と仲良く育った男性がいます。5年の兵役から帰ると成長した娘に驚き、恋心を抱く。結婚を申し込もうとするが、すでに彼女は疎開して来た知識青年と愛し合う仲になる。まさに告白の寸前にそれを悟って身を引く・・・こういう話やったらしいわ。さっきも言ったけど、GHQは事前検閲で、この脚本を不合格とした。理由がすごいで。「家柄や学歴が上の相手から身を引くのは新しい時代の人間にふさわしくない」と。
Y木:うわー、時代やなあ。
S原:で、「男が脚が悪くて、女性の保護が必要である」という設定にしたら、パスしたらしい。男というのは、妹の恋人ね。
Y木:なるほどなあ。
S原:真偽は不明やけど、今の時代からみると、正直ってどうでもええけどな(笑)で、この映画本編の話やけど、全体的に淡い色調と言うか柔らかい感じの映像になってるねん。それが、この映画に合ってると思うけど、ここは好き嫌いが分かれるやろうな。
Y木:あらすじは?
S原:ある美しい牧場の夜明けに、捨て子(女の子)が拾われる。そこで、育てられた女の子は「美子」と名付けられる。その牧場一家の息子(実子)の甚吾とともに、美子は「兄妹」として育つ。年頃になって、やがて兄は血のつながらない妹を「女性」として恋心を抱く。
Y木:ほう。
S原:あだち充みたいやろ?ところが、さっきも言ったけど、兄の密かな思いとは裏腹に、妹には恋人がいることがわかって…という感じで話がすすみます。
Y木:まあ、なんというか小品やな。
S原:うん。微妙な心の揺れを表現する映画やな。だから心に響かない人もいると思う。
Y木:おまえはどうやったの?
S原:映画としては上手いショットもあるけど、音質が悪いのと時代を差し引いてもBGMが甘すぎるのが好きではない。でも、やっぱり戦後すぐの映画なんか観る機会がなかなか無いから貴重なんかな。登場人物たちも、現代とは違う文化というか生活背景で生きてるやん?
Y木:そりゃな。
S原:そういう点を楽しめるかどうかとちゃうかな。
Y木:で、木下恵介のほかの映画を観ようと思った?
S原:いやー……とくには。もうええかな(苦笑)なんというか、こういう映画に素直に感動するには、年をとりすぎたんやと思う。
Y木:なんか名言っぽいな。
S原:要するに、砂糖菓子ばっかり食べられへんやん?そういうことよ。
Y木:いっつもB級の毒まんじゅうみたいな映画ばっかり観てるくせに(笑)
S原:さあ、みなさま。昔の邦画や戦後すぐの文化・生活習慣に興味がある人は楽しめます。どことなく品のあって、そういうところが木下恵介テイストなのかもしれませんが、そうですねえ、ぼくは中古店でこの映画と一緒に「エイリアン〇〇」と並んでいると、やっぱり後者を手に取ってしまいますねえ。というわけで、なかなか面白かったでしたが、もう一度観たいとは思えない映画でした~!