あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

スポーツ映画祭り!第5試合「綱引いちゃった !」(2012)の巻

綱引いちゃった [DVD]

S原:さあ、今回は綱引きです。

Y木:またマイナーなスポーツを題材にしたんやな。

(あらすじ)

お堅く真面目な大分市役所広報課・西川千晶(井上真央)は、市長(風間杜夫)から、あまりに知名度の低い大分市のPRをするため、女子綱引きチームを結成せよとの無理難題を課された。過去、大分コスモレディースという主婦たちからなる綱引きチームが世界チャンピオンに輝き、大分市のPRに寄与していた。
千晶はとりあえずメンバー集めを試みるのだが、マイナースポーツなだけに人は集まらず、困った事態に。
一方、千晶の母・容子(松坂慶子)の勤め先の給食センターが廃止の憂き目にあっていた。廃止の決定を覆すべく、仲間を引き連れ市役所に直談判をする容子。その様子を見ていた千晶は一計を案ずる。給食センターの職員を綱引きメンバーにし、全国大会出場まで勝ち抜いたら廃止を取り消すよう市長と取引をしたのだ。

 

S原:これは出来は悪くないです。でも猛烈に空しさを感じます……

Y木:意味わからんぞ。

S原:これ、登場人物の性格や行動もちゃんと理解できます。話も起承転結があります。演出も普通。でもなあ、なんというか「日本映画」的やねんなあ。

Y木:あーおれの嫌いな「日本映画」やな。

S原:そうやなあ。なんでこうなるんかなあ……テレビドラマと一緒というか、毒にも薬にもならないというか。

Y木:はあ、普通過ぎるんやろ。予定調和というか。

S原:そうやなあ。小学生をターゲットにするには、これで良いと思う。でもなあ……これおばさんチームが綱引きを頑張る話やで?小学生は観ないやん。井上真央は確かに魅力的やけど、例えば彼女の演技でもキャラでも「地上波のドラマとどう違うの?」と言われれば、だれも返答できないと思う。いつもの引き出しで勝負してるだけ。

Y木:期待しすぎ!単純に観て楽しい映画やったらそれでええねんって。どういうところが不満なん?

S原:フックがないねん。

Y木:フック?

S原:あまりに「引っ掛かり」がないのよ。水みたいにサラサラと流れる。全然感情移入もしないし、ドキドキもしない。綱引きをすることになる → 頑張る → ちょっとゴタゴタする → ひとつにまとまる(頑張る) → 試合に挑む。 それだけやで?

Y木:いや、それは話の骨格やろ。もっといろいろあるんやろって。

S原:ないねんって!ほんまに印象に残らないのよ……(ため息)登場人物たちに少し不幸も起きるけど、普通に生きてればみんな経験するような小粒なエピソードばかり。もっとヘビーなことが起きないとダメ。「綱引きで優勝したら、給食センターの廃止をやめさせる」という漫画チックな設定なんやから、もっともっとぶっ飛んだエピソードにしないとダメなのよ。もう家庭崩壊して綱引きに賭けるしかないとか、不倫相手の妻が相手チームにいるとか、綱引きで力をいれたら尿漏れする(年だから)とか、ドーピングして筋肉ムキムキになるとか。

Y木:なんやようわからん。というか、おまえの言う設定を追加しても面白くなると思えんぞ(苦笑)

S原:例えば、ですよ!例えば!

Y木:要するに、普通過ぎて面白くないと。

S原:その通り。「クールランニング」(1993)とかも同じ話やん。今まで興味のないスポーツに、個性的なメンバーが団結してチャレンジする。あああ、同じような話なのに、なんでこんなのになっちゃうんだよーー!

Y木:知らんわ。今回は愚痴が多いな。

S原:もう少し愚痴らせてちょうだい。もっと空しいことがあるねん。映画会社が、この作品を劇場公開して1800円とかの料金で観客を呼ぼうと真剣に思っているねんで?こんな映画、劇場で観ようと思う?となりの映画館では派手なハリウッド映画とか上映してるねんで?

Y木:それは好き好きやろうって。

S原:まあそうやけどな。せっかくの大分県が舞台やのに、登場人物が少し大分弁を話すくらい。これもなんだかなあ……同じような話でも「スマイル 聖夜の奇蹟」(2007)は最高級品ではないけど、それでも印象に残る場面は多いし主人公たちのキャラは面白いと思った。この映画では、あまりにみんなが普通すぎて、もうこれやったら友達の話を聞くほうが良いです。

Y木:今回は言い方がキツイな。ラストはスカッとするんやろ?努力のかいがあって優勝!みたいな。

S原:いや、試合の途中で終わります。

Y木:……え?

S原:小山ゆうの「スプリンター」かよ!

Y木:昔の漫画を引き合いにだすなって。ほとんどの人は分からへんねんから(苦笑)

S原:エンドロールで一応説明はあるねんけどな。「参加賞」みたいな写真が写ってたから、たぶんチームは優勝できてません。おそらく給食センターは廃止されています。

Y木:……なにそれ?それを映画本編でみせないで、それをエンドロールで説明?

S原:勝敗がハッキリせえへん演出もええねんけど、この映画に関しては上手くいっていない。「がんばっていきまっしょい」(1998)って映画があってな。ボートに賭ける女子高生の話なんやけど、あれも勝敗はわからないラストやねん。でも、全然OKやねん。登場人物たちがレースで燃え尽きた(勝敗を越えた何かに昇華している)のが理解できるから。でもこの映画は違う。なんで、こうなるんやろうなあ。センスかなあ…

Y木:まあまあ、こういう映画もあるって、って、なんでおれがフォローせなあかんねん(苦笑)

S原:さーみなさん。何気に豪華なキャストですが、ワクワクドキドキそしてスッキリ!を求めている人にはおススメできません。井上真央ファン、玉山鉄二ファンはありでしょうが、普通の人はパスしてもらって良いのではないでしょうか。というわけで、今回のイマイチでした!キャスト、スタッフのみなさん、申し訳ない!