S原:今回で最後ですよ。最後は変化球!
Y木:ゴリラが野球をする映画か。
(あらすじ)
弱小プロ野球チームがサーカスのゴリラをスカウトし、起死回生を図る姿を描いた韓国製スポーツコメディ。万年最下位の球団ベアーズは、資金難に陥ったサーカスのゴリラをスカウトするという奇想天外な策に全てを託し、ゴリラ使いの少女ウェイウェイとともに、野球好きなゴリラのリンリンを雇い入れる。世間を巻き込む大騒動の末、「ミスターGO」として初打席に立ったリンリンは、バックスクリーンを打ち砕く特大ホームランでチームを救う。勢いに乗ったベアーズは快進撃を続け、やがて噂を聞きつけた日本のプロ野球界も巻き込み、GOの争奪戦が勃発。そこへ突然、ライバルとなるゴリラ投手・ZEROSが現れて・・・
S原:こういうアイデア一発の映画って、すごく大事やと思うねん。
Y木:まあな。なんでも、たいていは「思いつき」で始まるからな。
S原:こういうアイデアを大真面目にエンターテイメントにするのがハリウッドは上手いやろ。もちろん外れもあるんやけどな。韓国もなかなか上手い。ハリウッドの良いとところを上手く真似ていると思う。とくにドラマでは、日本より人気があるのも分かります。で、この映画でも、すごく大真面目に作っています。
Y木:出来はどうやった?
S原:わりと面白いで。
Y木:しかし、ゴリラが野球かー。飲み屋で考えた企画みたいな感じやな。
S原:うん。でも、ゴリラのCGは本当に良く出来ている。たぶん、野球のボールとかもCGで処理していて、試合の見せ方も派手やねん。ゴリラだから、三振してもバットは外野席まで届くとか(笑)
S原:映画は、中国から始まります。中国の太陽サーカスでは、頭の良いゴリラが人気者です。あるとき、資金繰りが悪くなりサーカスを続けられなくなります。で、野球の得意なゴリラ(リンリン)が、調教師の少女ウェイウェイとともに韓国へ行きます。韓国野球界が大騒ぎしているなか、ついにゴリラが代打で登場します。あっさりとホームランを打ちます。
Y木:ほう。しかし、ホームランを打ってもベースを回られへんやろ。
S原:いや、ウェイウェイが、ムチを振ってた。ムチで言うことをきかせるねん。
Y木:……それ、無理矢理やん。
S原:まあ、ムチで言うことを聞かされてるゴリラはちょっと可哀そうやけどな。まあ、競馬でも最後の直線ではムチを入れられるし、あれと一緒ちゃう?
Y木:一緒……かな。よくわからんけど。
S原:そういうわけで、あっという間にゴリラは有名になってヒーローになります。球場にはファンがつめかけて、ゴリラのためにバナナ型の応援グッズで声援をおくります。
Y木:とんとん拍子やん。
S原:これで30分くらいかな。実はこの映画は、2時間以上あるねん。こういう「小噺」のような話のわりには、長いと思う。その分、いろいろとドラマを盛り込んでるけど、どうかな。もっと単純にマンガみたいな映画に知ればよかったと思うけど。
Y木:そうなんか。
S原:野球だけでなくて、人間模様とか会社間の駆け引きとかもある。コメディ部分もあるねんけどな。そこはどうやろ。そんなに上手くない、というか笑えんかった。
Y木:へえ、ゴリラはどうなるの?
S原:順調やけど、たまに暴れて球場の屋根に登ったりして、みんなを困らせます。
Y木:まあゴリラやからな。
S原:で、当然ゴリラを金儲けにしようとたくらむ連中もいます。一方で、サーカスの少女(主人公)もお金をもらって、はやくサーカスに戻りたい。そんな中、日本の球団(巨人と中日)がゴリラの獲得に興味を持っているという情報が入る。早速、高く売りつけようとするが、同時にゴリラの調子が悪くなっていく。検査すると靱帯断絶らしいとわかって……という展開になります。
Y木:なるほど。
S原:ゴリラをスカウトする中日ドラゴンズの関係者でオダギリジョーもでてます。変な髪形やけど、こういうのはあんまり笑えないです。よくわからんけど、韓国野球よりも日本の野球が上という考えがあるんかな。いっぽうで、契約のやりとりで日本人が土下座する場面もあるし、このへんは、韓国国内の事情が見え隠れして興味深いで。
Y木:へえ。最後は?
S原:一応、伏せておきます。かなりウエットな雰囲気になるけど、クライマックスはちゃんと決まってます。これ、ほとんど知られてない映画やけど、家族でも観れるからぜひレンタルしてほしいです。とくに野球とゴリラ好きな人は楽しめると思うで。
Y木:ちゃんと作ってるんやな。
S原:さあ、みなさま。ゴリラが野球をするというアイデアを受け止める人だけが、この映画を観ると思いますが、製作者たちはもっと真剣に作っています。韓国映画人の、そういうバカバカしい姿勢(ほめてます)を、日本の映画関係者たちも見習ってほしい~!