S原:みよ、このかっちょいいジャケットを!いや~購買欲をそそられますなあ。
Y木:そそられません。
(あらすじ)
巨大生物、ドラゴン、キング・コングが大バトルを繰り広げるモンスターパニック。アマゾンの奥地に1機の飛行機が墜落。生き残った乗客たちは探索を始めるが、彼らの目の前に広がるのは巨大生物が生息する有史以前の世界“ロスト・ワールド”だった。
S原:これは、正統派ダメ映画やった。
Y木:ダメ映画に正統派なんかあるんか。
S原:というのは。ちゃんと見せるべき場面を作ろうとしているねん。ただ、可哀そうなくらいセンスがないから、どうしようもない映画になったという(笑)
Y木:というか、この映画を「意外に面白いかも?」「特撮はイケるかも?」って考えて、レンタルしたり買ったりする奴っておるんか?
S原:え?ぼくは期待して買ったで。マジで。
Y木:……(絶句)
S原:まあ、今回は外れやったけどな。
Y木:毎回、外れやがな。で、この映画は面白くないと。どういうところがダメなん?
S原:全部やな。それ以上言いようがない。
Y木:身もふたもないな。
S原:ほんまにひどい映画やった……(遠い空をみる)試しに、ネットのレビューを読んでみ?100%酷評してるから。
Y木:わかったわかった。もうちょっと具体的に言ってくれ。
S原:映画が始めると、すぐに飛行機が墜落します。機体は真っ二つですが、大半の乗客は生きています。救援を待ちますが、その中の一人が、どこかに飛んで行った半分の機体(機首部分)を探しに行こう、と言います。そこに無線機がある(=助かる)と根拠のないことを言います。で、適当に話し合って何人かがそこへ向かいます。約1.5キロほどのピクニックがはじまります。
Y木:ピクニックって。
S原:ほんまに、そんなムードなんやって。ピクニックが始まって1人の女性が言います。「やっぱり私はさっきの場所に戻るわ」。
Y木:あー死亡フラグやな。自分一人で戻るときに、キングコングに襲われるという。
S原:いーえ。そのまま、その女性は2度とこの映画にでてきません。
Y木:……その場面、要る?
S原:で、ジャングルのピクニックの最中に、まず巨大クモが一瞬だけ登場して、あっという間に人間を繭にしてしまいます。
Y木:おー、さっそくか。まずは巨大クモに襲われて逃げたり戦ったり、やな。
S原:いーえ、そのまま巨大クモはどこかに行ってしまいます。ちなみにでてくるのはこのシーンだけです。
Y木:あー、そう…
S原:で、つぎは巨大サソリです。これも数秒出てきて、どこかに行ってしまいます。そして、人間の血を吸う植物も襲ってきます。でも、なんとなく逃げてセーフ!
Y木:あー…
S原:で、半分になった機体をみつけますが、それは以前に墜落した別の会社の機体でした。なぜなのか?という観客の疑問には答えずに、「仕方がない」「ここで一晩過ごそう」と話し合います。
Y木:…どういう展開やねん。
S原:面倒なので話を省略すると、傷を負った足にウジ虫をぬりつけたり(消毒するらしい)、伝説の翼の生えたドラゴンの死骸を見つけたりします。
Y木:なにかの伏線か?
S原:いーえ、まったく無関係です。ただ単に、各エピソードが並んでいるだけ。やがて、主人公たちは、原住民(昔の漫画の原始人)につかまります。意味なく女性がネチネチとイジメられる場面がありますが、ここがやたらと長いのでたぶん監督が撮りたかった場面なんでしょう。で、次の日(?)は晴天です。造成地みたいな広場にハリツケにされます。原始人が「おまえたちを生贄にするど~!」と叫ぶと、空を飛ぶ変な怪物がやってきます。原始人たちは自分で呼んでおいて「怪物たちよ~、さっさと立ち去れ~!」と逆切れします。
Y木:はー……(ため息)なんで、主人公たちは生贄にされるの?
S原:どうも、『キングコングを近寄せない為に遭難者をドラゴンへの生贄にする』という理由らしい。
Y木:いや、ドラゴンでも十分に危険やがな!
S原:そうこうしているうちに、別の場所で、原始人のひとり(女性)がカンフーをはじめます。トウ!とかヤア!と棒切れを振り回します。
Y木:うそつけ。
S原:ほんまやねんって!しかも、カンフー女子をみた男が「いま忙しいんだ。相手にしている暇はない」と言います。でも、そのあとちゃっかり棒を使ったカンフーが始まります。
Y木:もうシュールコメディやん。で、キングコングはいつでてくるの?
S原:最後にでています。こいつがスゴイです。超巨大で、圧倒的なパワーでなにもかもを壊します。しかも、破壊する場面が全然上手く演出できていないから、雑に暴れているだけという(笑)そして、キングコングが暴れだすと、なぜかアメリカ空軍(?)の戦闘機がやってくるねん。
Y木:あー、そういう戦闘機VSゴリラみたいなシーンはあるんや。
S原:いーえ、ありません。だって、戦闘機同士が(キングコングとは無関係に)衝突して、戦闘が始まる前に退場しますから。
Y木:……ギャグのつもり?
S原:いーえ、製作者たちは大真面目です。で、誰かが、なんの脈絡もなく角笛を吹きます。角笛の音は、往年のクイズ番組「三枝の国盗りゲーム」のオープニングにそっくりです。
Y木:知らんがな。
S原:いろいろあって、核爆弾を使うことになります。
Y木:核爆弾って、おいおい。
S原:かっちょ良く言い放ちます。「安心しろ。核は300m離れていれば、大丈夫なんだ」
Y木:日本人としては、許しがたい台詞やな。
S原:日本人の気持ちはおかまいなしに、ラストは核爆弾ドカーン。生き残った人たちは、これ以上ないほど爽快な顔をしています。ここで終わればいいのに、「わたしたち、ここで死ぬのね…?」と生き残った女性が言います。それを聞いた男性は「いや。死なないさ」と抱きしめます。
Y木:普通やん。ラストっぽくて。
S原:そのあとが、ひどい。「死なないさ。少なくとも今日はな……」
Y木:……全然希望がない台詞やん。
S原:ほんまにZ級やった。ひさびさに顔面パンチを喰らって、頭がクラクラした。
Y木:いわゆる「突っ込み映画」「地雷映画」としてはどうなん?
S原:それでもおススメできません。というのは、すごくダルいから(苦笑)展開が早くて出来事が盛りだくさんなのに、とにかくダルいという…
Y木:今回はダメ映画やな。
S原:さあ、みなさん。よほどの覚悟がある人のみチャレンジしてくださいませ。素晴らしいジャケットデザインに騙されてはいけませんよ~!
Y木:だから、素晴らしくないって!