S原:今回はコロッケ主演です。
Y木:こんな映画があったんや……
(あらすじ)
ものまねタレントのコロッケが本名の滝川広志名義で葬儀社のベテラン社員を演じ、笑いやものまねを封印して挑んだヒューマンドラマ。原作は、新谷亜貴子の同名小説。
葬儀社のベテラン社員・水島は長年「死」と向き合う仕事を続ける中で、感情の起伏がなくなってしまった。水島が教育係を務めることとなった新入社員の高梨は、イマドキな外見で言葉づかいもひどいが、時には葬儀社のルールを破ってでも遺族の思いに寄り添おうとする、感受性豊かな心のやさしい青年だった。そんな高梨とともに亡き人々と遺族たちとの交流を続ける中で、水島の心にある変化が起きていく…
Y木:この映画、何人が観たんやろ…?
S原:さあな。でもちゃんとレビューしている人もおるで。
Y木:評判はどうなん?
S原:普通…かな。
Y木:で、おまえの感想は?
S原:普通…かな(笑)
Y木:やっぱりな。
S原:ほんまに普通やねん。昼間にやっているテレビドラマ風というか。なんていえばええんかな……要するに「普通」やねんって。
Y木:『あのコロッケ(この映画でのクレジットは、本名の滝川広志)が、まじめに演技する』というところが売りなんやろ?
S原:そうやろうな。でもそれだけで「へえ、面白そう。普段映画にでていない人が出演しているから、ちょっと観てみようか」って思う人は少ないと思う。
Y木:レンタル店では、意外に「へえ!こんな映画あるんや?」と思うんかもよ。すこしでも手にとってもらわんとあかんやん。
S原:そんなん言ったら、ここでも紹介した超薄味の映画「ダイアモンド」(2013)でも元プロ野球のギャオス内藤とか元木大介が出演してたやん。それが「売り」やったけど、誰も観てないやん?誰もレンタル店で手にとってないと思うで。
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Y木:よくわからん例えはやめろ。というか、おまえは喜んで観てたがな。
S原:いやー、あれはヒドイ演技だった…(遠い目)
Y木:それはどうでもええねん。この映画の話をしてくれ。
S原:さっきも言ったけど、普通に観れます。でも、やっぱりありきたりで地味すぎるのよ。
Y木:地味な映画でもええやん。
S原:葬儀の話やし地味でもええねんけどな。あらすじは上の通りなんやけど、心の機微というか、小さな揺れみたいなものを描いてるねん。ちゃんとコロッケは演じているし、他の役者も普通に演技している。でも、それが逆に良くない。
Y木:言ってることが矛盾してるぞ。
S原:なんというか、この話なら、それこそテレビの2時間ドラマでも十分やと思う。わざわざ映画で観なくても良いと思ってしまう。何度も言うけど、普通過ぎて印象に残らない。変な映画を作りやがって!という怒りもなければ、反対に感動もしない。
Y木:確かに話は地味やろうけど、それは演出の問題やろ。薄味すぎるというか。
S原:そうやなあ。メインの話は、コロッケの(妻を自殺で亡くした)傷心からの快復なんやけど、ほかのエピソードがいくつか出てきます。一番印象深いのは、自殺した女子中学生の葬儀を担当するエピソードやな。遺族は混乱しているし、マスコミも殺到する。担任教師も来るし、(おそらくイジメていた)クラスメイト達も来る。葬儀会社としてどう対応するか。
Y木:なるほどな。
S原:このへんは見応えはあるねんけど、エピソードとしてはやっぱり小粒かな。一番残念なのは、セリフや回想場面で説明してしまうことやねん。
Y木:あー、ザ・日本映画やな(笑)
S原:そうやねんなー。説明なんかせずに淡々と描いたら、もっと印象に残るのに……普通に日常を過ごしながらも、どうしようもなく哀しみが滲み出るという映画ってあるやん?妻が自殺して傷ついている場面が、説明的に何度もでてくるけど、そんなのはバッサリ省略してほしい。観客にはちゃんと伝わるはず。だって、みんな大事な人たちを亡くしてる経験してるやん?
Y木:まあな。
S原:誰もが抱えている悲しみを、葬儀会場で働いている主人公が見る。その主人公も傷ついている。それを『お涙頂戴』で作ってしまうところが、日本映画の限界なんかなあ。コロッケは確かに普通に演技しています。でも、こんな湿っぽい演出では、どこにでもあるドラマの一つにしかならない。だから「これ、別にコロッケじゃなくても良くね?」と突っ込んでしまうという…
Y木:まあ、そういうもんでしょ。いつも言うけど、おれは日本映画に対して全く期待していないからな。おまえの残念がる気持ちはよくわからん。
S原:そう言ってしまえば、おしまいなんやけどな……(苦笑)さあ、みなさん。これは、せっかくのコロッケ主演というアイデアと葬儀にまつわるエピソードがあまり嚙み合っていないような気がしますが、葬儀の世界に興味がある人は面白く感じると思います。上手く言えないのですが、ちょっと残念な映画でした!おしまい!