あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

たぶんマイナーな日本映画をまた10本発掘!「太陽からプランチャ」(2014)の巻

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S原:今回から、また知られていない日本映画を10本まとめて紹介しますよ!

Y木:あーあんまり評判の良くない企画なのに、またやるんやな……

(あらすじ)

夢を捨てた青年が女子プロレスラーを目指す女性たちとの出会いを経て自らを見つめ直す青春ドラマ。竜太は後輩から、夢を追うために仕事を辞めたいという話を聞く。そんな時、女子プロレスの現実を聞いて興味を持った竜太は、彼女たちを撮影することに・・・

 

S原:これは……

Y木:なんやねん。

S原:……(遠い目)

Y木:はよしゃべれ。

S原:普通やった。

Y木:なんやねん。間をおいて言うことか。

S原:いやーすごくわかりやすいねん。はじまって5分でテーマや結末まで全部想像がつく。そしてその通りになります。

Y木:あーそういう映画な。

S原:要するに、夢をあきらめかけたカメラマン(主人公)が、女子プロレスを撮影しているうちに、選手たちのひたむきさに心打たれて自分自身を見つめ直してやる気が出る…という話やねん。

Y木:うわ、なんてベタな話や。

S原:素朴・素直といえばそうなんやけど、なんかNHKの教育ドラマみたいやった。「夢をあきらめないで、ネ♡」みたいな。

Y木:なんか80年代風やな(苦笑)

S原:ちなみに舞台となった女子プロレスは、アイスリボンという団体。ここはなかなか良い団体やねん。でもこの映画では、どうも選手の撮り方がイマイチで魅力的にみえないねん。本物はもっと素晴らしいで。

Y木:おれはプロレスに興味がないから、言ってることが分からん。というか分かりたくもないけどな(笑)

S原:いやいや。プロレス選手じゃなくても、(出演者を)魅力的に撮ることは出来るやん。いつも言うけど、ふとした表情や顔の角度で印象が変わるんやから。それが演出の力ですよ、あなた。

Y木:それはそうやけど。

S原:というのは、じつはこの映画で出ている女子プロレスラーたちのなかで、すごく印象が変わる選手がおるねん。

Y木:え?

S原:世羅りささんと志田光さんというレスラーなんやけどな。(S原はプロレスラーを呼び捨てにしない主義)志田さんはいまはアメリカで大活躍してます。この2人は同じコスチュームでも、試合を観るたびにすごく印象が変わる。清楚にみえたり、ごっつい意地悪くみえたり。あるときは妖艶な魔女、あるときは無垢な天使…

Y木:そりゃキャラクターとか試合内容で変わるんやろ。

S原:いやいや、この2人は売店でも印象が変わります。あるときはツンツン、あるときはデレデレ。あの素敵な笑顔が見たくてついついグッズを買ってしまう。あーもう!小悪魔たちやで、まじで!

Y木:きもいわ!もうオッサンのくせに。

S原:あ。ちなみにプロレス会場はオッサンばかりです。この映画でも客席が映る場面があるけど、いつものプロレス会場そのまんまやった。オッサンだらけ(笑)

Y木:それはええとして、結局、映画としては普通の出来なんやな?

S原:そうやな、普通としか言いようがない。最後まで無難に観れるけど、せっかく女子プロレスとか地下アイドルを題材にしてるのに、もったいないわー。

Y木:もったいない?どこが?

S原:だって、プロレスも地下アイドルも、いろんな部分で本人たちは苦労しまくってるやん。それぞれはすごい人生を歩んでるはずやで。それはプロレスや地下アイドルに興味がなくても、わかるやろ?

Y木:それはわかる。この映画ではそういう部分がない、と?

S原:一応、Sareeという選手がケガをして、復帰するという話があるねんけど、薄味で弱すぎる。実際はもっと苦しむはずやし、そもそも戻れるかどうか不安だらけやん。また復帰しても同じところをケガするかもしれんし、下手したら普通の生活に差し障りがでるかもしれへんやろ?それでも復帰を目指す。そういう姿勢をもっと描ければ、主人公の心情の変化が自然やったはず。

Y木:なるほど。

S原:加藤園子というレスラーなんか5年間リハビリして復帰したんやで。そのときの気持ちが、あなたにわかるか?えー、コラ!

Y木:なんでキレてるねん。わからんでもええわ。誰やねん、加藤園子って。

S原:まあ、なんにせよ薄味やった。プロレスや地下アイドルでは食べていけないからバイトをするエピソードとかがあるけど、そんなん誰もがやってるやん。どうも表面的で全然深みがないのよ。深みがないと言えば、伏線もないからドラマにも奥行きがないねんなあ。一本調子といえばええのか。

Y木:こういう映画はそれでえんとちゃうの?単純な話でもええやん。

S原:そうなんかな。せっかくの「ドラマ」やのに、なんかもったいないわ。製作陣は、主人公の心情には興味があっても、選手やアイドルたちの心情には興味がないんかもな。でも主人公のカメラマンとしての、夢や挫折も大したことないねん。だから、やっぱりどこか軽々しいのよ。たとえば、一時期の「少年サンデー」みたいな。なんかもう、ふわふわと軽い漫画ばっかりでサラッと読んでおしまい、みたいな。

Y木:あー、サンデーなあ…(遠い目)いやサンデーの話はええねん。この映画の良いところはないの?

S原:あるで。最後に、プロレスの試合をしっかりとみせてくれる。音楽も効果音もなくそのままの音を生かしてて、ここは良い場面やと思う。リング上での撮影って難しかったと思うけど、ダイナミックさは伝わった。

Y木:じゃあそれでええやん。

S原:そうなんやけど…いやーやっぱり小さな不満が多くあるわ。例えば、主人公はカメラマンとして試合を撮り続ける。でも試合が終わってすぐにカメラを撮るのをやめるねん。これはおかしいねんって。プロレスは試合が終わっても、そのあとにストーリーがあることが多いし、選手同士のぶつかり合いもある。なによりも戦ったあとの選手がリングを降りるときの姿はすごく「絵」になるから、最高のシャッターチャンスのはずやねん。マニアとか関係なくて、カメラマンとしての姿勢としては疑問があるなあ。

Y木:なるほどな。

S原:さあ、みなさま。プロレスと聞くだけで敬遠する人も多いと思いますが、これは普通の出来です。でも、ものすごく面白いかと言われると返事に困ります。女子プロレスに興味がある人は楽しめるでしょう。逆に地下アイドルの描写は少ないので、物足りないと思います。でも、みんな!B級映画を観続ける夢をあきらめないで、ネ♡

Y木:……もう夢から覚めてもええ頃ちゃう?