あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

80年代のスマッシュヒット映画 10番勝負!「第四の核」(1987)の巻

第四の核 [DVD]

S原:スマッシュヒット映画特集、最後はこれ!フォーサイス

Y木:おお。

(あらすじ)

 ソ連工作員が西側に潜入、NATOの米軍基地で原爆を爆発させ、NATOと米国の分断をはかる計画のため原爆を着実に組みたてる。事態に気付いた英国諜報員は、工作員を追うが…。マイケル・ケインピアース・ブロスナンジョアンナ・キャシディほか出演。

 

S原:この映画は、僕は初見です。あなたは知ってた?

Y木:タイトルだけやな。フレデリック・フォーサイスやろ。古本屋でたまにみかけるで。

S原:ぼくもタイトルだけ知ってた。で、今回が初見やねんけど…これは英国風スパイサスペンス映画ということになるんやろうな。原作はベストセラーらしい。ぼくにとってフォーサイス映像作品はなんと言っても「ジャッカルの日」(1971)やな。好きな場面は何度観たかわからないくらい。

Y木:あーあれは良かったなー。

S原:で、この映画やけど、結論から言うとなかなか面白い。アクションシーンがほとんどないスパイ映画やけど、普通の場面を積み重ねて緊迫したムードをだすことに成功していると思う。ただし、まっすぐな長距離な坂道を登っていくような緊迫感のある「ジャッカルの日」に比べると、ややもたつき気味なのが残念かな。

Y木:映画的に上手くないってこと?

S原:そうやな。マイケル・ケインピアース・ブロスナンは良いです。ともすればマンガになりそうな役を説得力があるように演じています。この2人は、やや暗めで陰影があるって、そこもまた良い。

Y木:ストーリーはどうなん?

S原:わりと単純で、冷戦時代(西側VS東側)を舞台にした工作員たちの情報戦や行動を淡々と描いています。タカ派KGB議長ゴボルシンは、非合法活動局所属のペトロフスキーに「オーロラ計画」の遂行を命じます。「オーロラ計画」とは、1967年に日米ソ3国間で締結された核拡散防止協定の第四議定書で禁じられている、小型・計量・組み立て可能な簡易核兵器を用いて、英国内のアメリカ軍基地を攻撃しようというプランのことです。英国内に潜んでいるソ連のエージェントやソ連シンパの知識人を動員し、来る総選挙で労働党政権(つまり親ソ政権)を樹立させ、欧米諸国の離間を狙っているのです。一方、英国(MI6)の諜報員であるプレストンは、日々ソ連スパイの摘発を行っています。度重なる上司との衝突の末に港湾担当という閑職に回されてしまいますが、ひょんなことからソ連側の秘密計画(オーロラ計画)の存在に気付きます。プレストンは、上司の制止もきかずに1人で行動していく…

Y木:あ、いい感じで80年代風かも。

S原:そうそう。とくにソ連側の工作員を演じたピアース・ブロスナンは007とは全く違い、ソ連に(洗脳されて)国家に殉じるような不気味さがあるねん。笑顔でも眼が笑っていないような表情で、やっぱり上手い。ブロスナンが仲間の女性と原爆を作る場面があって、ここはユニークで興味深いです。演出がすごく淡々としているのが、逆に不気味なのよ。

Y木:へえ。

S原:イギリス側のマイケルケインも良いねん。MI6内部の人間関係で左遷されても、どこまでも行動していくような偏屈なおじさんを演じています。おじさん俳優フェチは、2人を観るだけでも楽しいはず。

Y木:じゃあ、この映画はおススメってこと?

S原:うーん。ちょっと地味かなあ…残念なのは、映画としてハッとするような場面が少ないねん。アクションは地味でもええねんけど、もう少し工夫した場面は出来たと思う……例えば予告編で、「おお!」と思うような印象に残り場面が2~3あれば、この映画は「隠れた名作」として名を残したかも、という気がします。あとはDVDのパッケージがしょぼいやろ(笑)もう少しデザインを凝って欲しかった。これでは、レンタル店でみてもスルーするよなー。

Y木:ラストは?ハッピーエンド?

S原:観てのお楽しみにしてほしいので、ここでは書きません。変形のどんでん返しとでも言えばいいでしょうか、このオチもなかなか味があります。というわけで「やや古めの地味なスパイ映画」という前提で観れば、ヤングたちにも十分に楽しめる映画だと思いますね。傑作とは言いにくいですが、おススメです。今回で80年代スマッシュヒット特集はおしまい!

Y木:なかなか微妙な企画やったな…