あなたの知らないワゴンセールの世界

ほとんどの人が見向きもしない中古屋やレンタル落ちのワゴンの中…しかし、その小宇宙にはまだ知らない映画たちが眠っている(はず)!そんな映画を語るブログです(週末 更新予定) 娘曰く「字ばっかりで読むしない」「あと、関西弁がキモイ…」そういうブログです

70年代のややカルト映画特集!「ウディ・アレンのバナナ」(1971)の巻

Y木:おー、ウディ・アレンか!

S原:あのウディ・アレンの昔の映画を取り上げますよ。

(あらすじ)

フィールディング・メリッシュはしがない商品検査員。毎日の単純作業にウンザリしていた彼は、ある日平和運動の活動家ナンシーに一目ぼれ――。なんとかして彼女の気を引こうと、あろうことか紛争の真っ只中にあるバナナの国サンマルコ共和国の革命軍に身を投じる。ところが、運命のいたずらか、彼はたちまち革命軍のリーダーに祭りあげられ、何と大統領になってしまったからさあ大変! 

 

S原:いやあ、本当にバタ臭いというか荒削りというか。いまやアカデミー賞の常連で個性派作家として名声を得ているウディ・アレンも、初期作品はこんな感じやったんやなあ。

Y木:もともとは、コメディアンでしょ。

S原:うん。この映画も、メインストーリーはわりとどうでもよくて、各場面でのギャグが中心になっているつくりやねん。そのギャグもなんというか…あのー…(苦笑)

Y木:ベタなんやろ。

S原:そうやな。映画が始まってすぐに大統領の暗殺場面があるねんけどな。アナウンサーが、ノリノリでスポーツ中継のように実況する場面とか、新婚初夜の様子を、ボクシング中継風に実況したりする場面は、皮肉っぽくて面白いのよ。だけど大半はくだらないギャグの連続やった。

Y木:例えば?

S原:本屋でエロ本を買おうとレジに持っていきます。周りの女性たちにバレたくないから、タイム誌やニューズウイーク誌の間に挟んでレジに持っていくねん。すると、店員が「おい、オーガズムって本はいくらだっけ?」と他の店員に聞いて、ウディ・アレンが焦るとか、ベッドインしようとしたら、相手の女性に「暗いわ」とか「暑いわ」とか「窓を開けて」「やっぱり閉めて」とか注文されて、バタバタしてなかなか本番に至らないとか。

Y木:エロコントやん。志村けんに近いかもな。

S原:あーそうやな。あのナンセンスさは似てるかも。でも、ウディ・アレンって時々変な皮風刺のような自虐のような要素をいれるやろ。

Y木:あー、ユダヤジョークとか?

S原:そうそう。あのへんが面白く感じるかどうかやろうな。例えば、神父がタバコを吸う場面があるねんけど、そのタバコの名前は「新約聖書」。

Y木:おもろいやん。

S原:そうかー?(苦笑)サンマルコ共和国(というかキューバ)に行ってからも微妙な笑いの連続やった。ハンバーガー100個とかを大量に注文したら、店員が延々と一列になって山中に配達する(しかもお金は支払わない)とか、変なヒゲをつけて演説するとか。あと、これは有名なんやけど、売れない頃のスタローンがチンピラ役ででています。かなり前に、ウッディ・アレンの本を読んだことがあって、「スタローンは演技が下手すぎて、ウッディ・アレンにクビにされそうになったのを、必死でチンピラ風の服装に着替えて、なんとか映画出演した」というエピソードを知ってたから、どんなもんかな?と思って観てたけど、たしかにスタローンの演技はヒドかった。

Y木:「ロッキー」(1976)のときのスタローンもすごい演技やけどな。

S原:嫌味でもなんでもなく「ロッキー」は今観るとスゴイで。素人臭さ(下手な演技、ぎこちない演出)が奇跡のように昇華している稀有な作品やと思う。

Y木:それが「ロッキー4」(1985)になったら、アメリカ代表になってソ連をやっつける話になるんやもんなあ。

S原:みんな忘れてるけど「ロッキー5」(1990)は、違う意味でもっとすごいで。なんせロッキーが貧乏になってボクシングもしない話やから(笑)まあ、ロッキーはともかく、こんな下ネタ野郎がこの後に「アニーホール」(1977)とか「ハンナとその姉妹」(1986)とかで賞をとるようになるとはなー。

Y木:下ネタと言えば、なんかもめてるんやろ?

S原:あー「ウディ・アレンVSミア・ファロー」(2021)やろ?養女に対する性的疑惑について描いたドキュメンタリー映画やな。

Y木:ロリコンってことか。

S原:ファンには申し訳ないけど、たぶん性的虐待はしてるんとちゃうかな。この映画を観ても、ウディ・アレンはすごくコンプレックスがあって内面が複雑に屈折しているのはすぐに分かるから、こんな性愛になってもさもありなん、と思うわ。

Y木:どこかの記事で「ハリウッドでは大物やから、いろんな圧力で握りつぶした」と読んだことあるで。それでも、かなり昔の記事やけどな。

S原:これが最初に話題になったのは、かなり前のはず。でも、いまでも取り上げられるということは、やっぱり疑惑があるのと有名人のセンセーショナルなネタやからやろうな。あと#me too運動も関係しているみたい。それにしても、いまの若い人たちウディ・アレンの映画を観たらどう思うんやろな。

Y木:さあな。やっぱり「大御所」なんとちゃうの?

S原:本当はしょぼい男のくせに(笑)

Y木:いや、本人もそれを分かってるんやと思うで。自分自身のショボさを昇華させて、作家性のある作品にしたんやろうし。

S原:そういわれれば、偉い…かな?あまり肌に合わない監督やから、いまいちピンとこないのが本音やわ(苦笑)さあ、みなさん、最近のウェルメイドなウディ・アレン作品が好きな人は、かなりビックリすると思いますが、1970年代の泥くさいお笑いムードはそれなりに楽しいです。お笑いに興味のある人にはおススメです。洗練されたコメディ映画が好きな人はスルーしてください。それにしても、ウディよ、まじめに生きろよ!

Y木:おまえもな!